矢島と幻流が対峙するなか、

チャンスと思い攻撃した美咲だったのだが、

実は二刀流の使い手で、

新たに出現させた左手の刀で防がれてしまった。

刀の名は双線刀。

黒く光るその刃からは禍々しい影力が感じられた。

戦いにおいての遠距離攻撃なんて、
所詮その程度ってことさ。

くそっ。

光一さんがあせってる?
私もなんとかしなきゃ。

光の弓と影の刀はお互いを喰らい合うかのように、

激しくぶつかり合っている。

このままでは力負けしてしまうと感じた美咲は、

両手のひらを右手を上に左手を下に、

上下に重ね合わせながら胸の前で構え、

手のひらを15cm程離した。

巻羽(まきばね)。

たくさんの光の羽が小さな竜巻のようになって、

矢島と幻流の周りを素早く回り始めた。

敵も味方もありゃあしねぇな。

幻流の言うとおり、

矢島たちを中心に回り続けている竜巻からは、

無数の小さな光の羽が飛んできては、

二人の体を傷つけている。

お前にやられるくらいなら、
二人で心中もいいだろう。

何が心中だ。
この俺の刀から逃れることもできないくせに。
結局女に助けられてるってわけか。

右手の刀の力を抜かずに矢島のことを嘲笑った。

矢島の表情は今だ険しい。

お前たちはなぜ人間をさらっている?

なぜ?
そりゃあ必要だからに決まってんだろ。
バカか、お前?

そうか。
やっぱり失踪事件に関与してたのはお前たちで間違いなかったんだな。

てめぇ……。
それを聞くために引っかけたな。

君がバカでよかったよ。

殺す!!

キレた幻流は右手の刀で弓を大きく払い、

両方の刀を逆手持ちにした。

双十線(そうじゅうせん)!!

くるか……。

矢島は再び弓で受けようと左手を構えた。

防戦一方の矢島を見て、笑いがこみ上げる幻流。

飛び掛りながら腕を交差させ、

大きく高笑いする。

ひゃっはっはっ。
死ねーーーーーー!!!

ぐふっ!!

矢島の弓に刀が触れるギリギリの瞬間で、

幻流の背中に鋭い衝撃が走った。

慌てて振り返ると、

回る竜巻の50m先から美咲が天羽を放っていた。

ふふ。

くそ女がぁーーーー!!!

怒りに身を任せ、

そのまま美咲のいる方向に向き直した瞬間。

うぐっ!!

美咲に向かっていこうとする隙を突いて、

矢島が大量の光の矢を打ち込んだ。

幻流は二本の刀を落とし、

その場にうつ伏せで倒れこんだ。

戦いに意識が集中してないのが敗因だ。
遠距離攻撃も案外悪くないだろ。

光一さん、やったね!!

倒れている幻流に声をかけていると、

離れていた美咲が矢島の傍に駆け寄ってきた。

そして、幻流を捕らえるために矢島が弓を放つ。

円の矢。

放たれた光の矢が、

倒れている幻流を円で囲むように打ち込まれる。

みんなに連絡するね。

美咲がスマホを取り出し、

敬介たちにメッセージを送る。

その最中、

頭上にある橋の上から怪しい人物が飛び降りてきた。

そいつを返してもらうぜ。

こいつの仲間か!?

うそ……。

第2章---三幻僧編---(44話)-弓と翼②-

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