秋野実神社での集まりも終わり、

翌日は快晴の中、

それぞれ分担して調査を行うことになった。

美咲と矢島ペアは、

東茜町の中を流れている川沿いを歩きながら、

別行動をしている敬介たちの話をしていた。

形山君と大宮君は大丈夫かな?

たしかに心配かも。
でも、二人とも息ぴったりな気がするんだよね。
仲良くしてくれるといいんだけど。

そうですね。
あっ、そろそろ例の事件現場じゃないでしょうか?

美咲たちは、

この付近でも起きていた謎の失踪事件現場を調査する

ことにしていた。

現場からは何も見つからずに警察が引き上げた後で、

辺りの河川敷とは大差ない、

ごく普通の景色となっている。

この辺りか。
さっそく、痕跡を探してみよう。

一方の敬介と大宮ペアは、

東茜駅の駅前辺りをウロウロしていた。

そういえばさ、シャドーって夜に出ることが多いんだろ。
なんで幻重は夕方から動けたんだろうな。

さぁな。
そんなことより、
無駄口叩かずにお前も探せ。

人が歩み寄ろうとしてんのにその態度かよ。

人ごみの中で喧嘩するわけにもいかずに、

敬介も黙々と辺りを探し始めた。

この駅前で失踪した女性は、

終電近くとはいえ、

まだ大勢の人がいる中で姿を消したのだという。

その状況は、まるで神隠しだと目撃者達は証言していた。

調査を始めて1時間程経った頃。

川を横切るように建っている橋の下の河川敷辺りで、

50メートル程上の方から声が聞こえてきた。

あのー!!
何か探してるのなら手伝いましょうかー?

いや、大丈夫ですよー。
そんなにたいしたものじゃないんでー。

いえいえー、
気にしないでくださーい。
俺、探し物得意なんでー。

そういって、

高校生くらいの男の子が橋から土手へと渡り、

矢島たちのいる河川敷まで駆け下りてくる。

光一さん、どうしよう?

あの子には悪いけど、
少しだけ一緒に探したら帰ることにしよう。

二人が話を合わせ終わった頃、

その男の子は二人の下へと着いた。

わざわざごめんね。

大丈夫ですよ。
で、何を探してるんですか?

コンタクトレンズを落としちゃってね。
もしかして、剣道とかやってる?

やってますよ。
では、さっそく。

男の子はそういって、

肩にかけていた竹刀袋を背中を向けて見せ、

ニコニコしながらコンタクトレンズを探し始めた。

その様子を見て一呼吸置いた後、

矢島と美咲も再び探し始めた。

また少し時間が経った頃、

辺りには夕日が差し始めていた。

あった!!
光一さんに知らせないと。

ようやく発見した美咲は矢島に歩み寄った。

それに気づかずに男の子は黙々と探し続けている。

よしっ、そしたら帰ろうか。

はい。

二人は小声で話し、

矢島は美咲から発見したものを受け取ると、

ジャケットの内ポケットに仕舞った。

もう見つかったから探さなくて大丈夫だよ。
手伝ってくれてありがとう。

そうですか。
それは良かった。

じゃあね。

ありがとう。

二人は男の子に手を振り、

敬介たちと合流するために、

駅前の方向に向かって歩き出した。

そうだ!!
良かったら俺も一緒に帰っていいですか?

男の子は突然大きな声で叫んだ。

矢島と美咲はすぐさま振り返る。

この後二人で寄る所があるんだ。
ごめんね。

矢島が断り、

背を向け歩き出すと、

男の子は肩に背負った竹刀袋に手をかけた。

そっかぁ。
それは残念だ。

袋からは竹刀ではなく一本の刀が出てきた。

男の子に黒いモヤが纏われていく。

それと同時に、矢島と美咲はまたも振り返る。

しかし、今度は穏やかな表情ではなかった。

まさか!!

ああ。
シャドーだ。

一緒に行ったらダメなんだろ。
なら、しかたねぇえな。

黒いモヤが消えると、

フードを被った者に変化していた。

そいつはフードを脱ぎ捨て、

左手に握る刀を抜き取り、

矢島に刃先を向けた。

なら、その影石を置いていけ。

第2章---三幻僧編---(42話)-親切な子-

facebook twitter
pagetop