僕はカレンやクロード、エルムと一緒に
商人ギルドへやってきた。

ここなら副都へ行く船も見つかると思う。


……もしダメだったら、
船をチャーターするしかないだろうなぁ。 
 
 

クロード

こんにちは。
私の組合員証を
ご確認ください。

商人

よし、
組合員証を持ってるな。
通っていいぞ。

 
 
入口では先頭を歩いていたクロードが
組合員証を提示した。
受付の商人さんはそれを確認すると
僕たちを中へ通してくれる。



――こういう時のクロードって
すごく頼りになるんだよね。
安心感があるっていうか……。

さすが大商人であるマイルさんの
秘書をしているだけのことはある。
 
 

クロード

お訊ねしたいのですが
交易船について詳しい方は
どなたでしょうか?

商人

交易船?
それならマスターだな。
港はギルドの責任で
管理しているからな。

クロード

教えていただき
ありがとうございます。

 
 
クロードは商人さんに頭を下げ、
コッソリとその人にチップを渡した。

こうして手がかりを得た僕たちは
ギルドの一番奥にある
マスターの部屋へ向かって歩いていく。


そしてマスターの部屋の前に辿り着くと
そこにはカウンターがあって、
秘書さんみたいな人が立っていた。
 
 

秘書

どちら様でしょうか?

クロード

私はサンドパーク所属の
クロードと申します。
交易船についてマスターに
お訊ねしたいことが
ありまして。

秘書

それでしたら
私が対応いたします。
マスターは多忙ですので。

クロード

ではお訊ねしますが、
副都へ行く船は
ありませんか?
副都へ行きたいのです。

秘書

副都ですか。
副都でしたら毎日三便ほど
運航されています。
運賃をいただければ手配を
させていただきます。

トーヤ

やったぁ!

エルム

これでひと安心ですね。

カレン

あの……
少しよろしいですか?

 
 
喜ぶ僕とエルムを尻目に
カレンだけは浮かない顔をしていた。

何か気になることでもあるのかな?
 
 

カレン

毎日三便って
なぜそんなに高頻度で
運航されているんですか?

トーヤ

あ……確かに……。

 
 
カレンの疑問はもっともだ。
だってここから副都までは
かなり距離が離れているし
そこまで貿易が活発なのも不思議だ。

つまり一日一便だと間に合わないくらい
何かを運んでいるということだもんね。



するとクロードは僕たちの方を向いて
表情を歪める。
 
 

クロード

カレン様、
商売には守秘義務があって
そういうのは訊かないのが
暗黙のルールなのです。

カレン

そうなのっ?

秘書

……いえ、構いませんよ。
主に運び出しているのは
アンカーで採掘された
ミスリルです。

秘書

アンカーの主要産出物は
ミスリルや一部の金属。
隠そうとしたところで
勘のいい方は
ピンときますしね。

カレン

う……。

エルム

こういう場合は、
なぜそんなにミスリルが
副都へ運ばれているか
ということの方が
気になりますよね……。

 
 
エルムのその言葉を聞いて
秘書さんの眉がピクリと動いた。

それはわずかな変化だったから
普通の人は気付かないかもしれない。
でも僕にはハッキリ分かった。


つまりエルムの質問には
反応せざるを得ない重大な何かを
指摘したということなんだろうな……。
 
 

秘書

商売は需要と供給の
バランスで
成り立っています。

エルム

つまり誰かがミスリルを
大量に欲しがっている
ということですね?

秘書

……申し上げられません。
ま、私の反応を見れば
肯定しているも同じですが。

トーヤ

てはは……
それは言っちゃうんですね。

秘書

不躾ながら申し上げます。
その詮索はなさらない方が
よろしいと思います。

秘書

私たちはあくまで商人。
財を売買して儲けるのみ。
深入りすると
身を滅ぼすだけですので。

エルム

なるほど……。
僕も心に留めておきます。

トーヤ

…………。

 
 
――これには裏がありそうだ。

だって以前にクロードから聞いていた話と
状況が少し違うから。


確か最近はミスリルの流通量が
減っているってことだったよね?

クロードはマイルさんから
それを調べるように言われているって
ことだったし。


つまりほかの地域での流通量が減ったのは
採掘量が減ったからじゃないんだ。
秘密裏に副都へ
大量に出荷されていたからだったんだ。


……あとでクロードと話をしてみよう。

彼は今、素知らぬ振りをしているけど、
そのことに気付いていないはずないもん。
 
 

クロード

では、明日の第一便に
乗せていただけますか?
人数は7名です。

秘書

かしこまりました。
ではそのように
手配をしておきます。
運賃は一名につき
1000ルバーとなります。

トーヤ

はい、お願いします。

秘書

運賃は乗船時に
船長へお支払いください。
代表者のお名前を
教えていただけますか?

トーヤ

えっと、クロ――

クロード

トーヤですっ♪

トーヤ

っ!?

カレン

ふふっ♪

エルム

兄ちゃんは
リーダーだもんねっ!

秘書

トーヤ様ですね。
では出航時間に
港へお越しください。
今、ギルド発行の証書と
案内書をご用意します。
しばらくお待ちください。

 
 
そう言うと秘書さんは席を立ち、
奥へ引っ込んでしまった。
きっと書類を取りにいったのだろう。


――とりあえず
副都行きの船が見つかってよかった。

今までの旅では苦労の連続だったから、
それを思えば驚くほどスムーズで
怖いくらい。

もちろん、
気になることは色々とあるけどね。



何事もなく副都へ着ければいいな……。 
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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