施療院に戻った僕たちが知らされたのは、
ニーレさんがすでに
亡くなっていたということ。
僕は頭の中が真っ白。
全身から力が抜け、
その場にへたり込んでしまう。
病室へ行くと、
ベッドでは冷たくなったまま動かない
ニーレさんが静かに横たわっていた。
施療院に戻った僕たちが知らされたのは、
ニーレさんがすでに
亡くなっていたということ。
僕は頭の中が真っ白。
全身から力が抜け、
その場にへたり込んでしまう。
病室へ行くと、
ベッドでは冷たくなったまま動かない
ニーレさんが静かに横たわっていた。
うわぁああああぁーんっ!
…………。
エルムは病室に入ってからずっと
ニーレさんにしがみついて号泣を続けていた。
ロンメル以外の全員が、
その様子を痛ましそうな顔で見ている。
僕も自然に涙が湧き出してきて、
目の周りを服の袖で拭う。
トーヤ、
この姿をよく見ておけ。
えっ?
薬草師は様々な薬で
患者の命を
救うことが出来る。
だが、必ず助けられるとは
限らん。
どうあっても
救えぬ場合もある。
神ではないからな。
自分の無力さを忘れるな。
そして薬を過信するな。
……はいっ!
僕はしっかりこの姿を目に焼き付けた。
リムさんが言ったように、
患者さんを薬で救えない場合もある。
間に合わないことだってある。
だからこそ、
生きている時間を大切にしなければならない。
不死であるロンメルの目には
この姿がどう映っているのだろうか?
その日の夜、僕は遺跡で起きたことを
カレンたちに説明した。
それでようやくロンメルが何者なのか、
みんなは理解したようだった。
ちなみに宿にはリムさんもやってきている。
どうやら僕たちに話があるらしい。
っっっっっ!
フッ……。
カレンは頭から湯気を立て、
ロンメルに敵意の眼差しを向けていた。
僕の血を啜るというのが気に食わないみたい。
僕やクロードが必死になだめたけど、
まだ納得していない様子だ。
目を離したら本気で戦いを仕掛けかねない。
カレン様、
どうか落ち着いて。
でもトーヤさんなら
いいご主人様に
なれますよ。
ですねぇ。
使い魔の私から見ても
そう思いますっ!
さて、トーヤよ。
お前には先生から習った
麻酔薬の製法を教える。
麻酔薬ですか……。
取扱いが難しいが、
お前なら
身につけられるだろう。
しっかり学べよ。
それを習得したら
副都へ向かえ。
そこにティアナという
薬草師がいる。
そこが最後だ。
最後とは?
シンディ、ガイネ、
私、ティアナ。
私たちは試験官なのだよ。
先生へ弟子入り
するためのな。
えぇっ!?
私はなんとなく
そんな気がしてた。
カレンは気付いてたのっ?
さすがにね。
リムさんで3人目だもん。
そうだったんだ。
クロードやライカさんも頷いているから、
分かっていたみたい。
僕は全然気が付かなかったよ……。
老師が弟子を取らないのは
皆さんに認められた者が
出ないからというのが
真実だったのですね?
それもある。だが、
先生は身柄を狙われる
立場にいるからな。
信用ならないヤツを
近付けさせないよう
すぐに辿り着けないように
している意味合いもある。
すごい技術の
持ち主ですものね。
……詳しくはティアナが
話してくれるだろう。
先生が
狙われている理由を。
ギーマ老師の身柄を狙うヤツって
何者なんだろう?
目的はやっぱり色々な薬を作れるからかな?
そういえばギーマ老師は
世間から隠れるように暮らしていた。
こんなにも厳重に警戒するってことは、
それだけの何かがあるんだろうな。
ガイネさんも自動人形を作っていたことで
クロウのご主人様とやらに狙われていた。
高い技術は悪用すると大変なことになるって
ガイネさんやセーラさんは
よく理解していたし、
僕もそれをあの時に再認識した。
今まで以上に用心しないといけないな……。
さて、
これからのことだけど、
エルムはどうする?
兄ちゃんと
一緒に行きます。
僕は使い魔ですし、
ここにいると姉ちゃんを
思い出しますから。
そっか……。
うん、一緒に行こう!
はいっ!
それから一週間くらい施療院で
リムさんの手伝いをしながら
薬の製法を習った。
実はそれと平行してこっそり魔法の練習も
本格的に始めたんだよね。
少しでもみんなの力になりたいから。
次の目的地は副都。
確かカレンの生まれ故郷なんだよね。
どんな町なんだろうなぁ……。
次回へ続く!