僕はロンメルに召喚の仕方を教わり、
狭間の羽を使って遺跡を脱出した。


目の前には遺跡の外観。
大きく深呼吸をすると新鮮な空気が
体の中に染みこんでくる。

なんだか遺跡に入ってから数十年は
経ったんじゃないかってくらいに
懐かしい気がする。
 
 

トーヤ

おっと、ボーッとしている
場合じゃなかった。

 
 
僕はフォーチュンの先端を使って
地面に魔方陣を描いた。

これを間違えると
思いがけない魔物を呼び出してしまったり、
災難が降りかかったりすることがあるから
慎重に描いていく。
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

トーヤ

よし、準備はできた。
最後にもう一度
チェックして……と……。

トーヤ

――うん、大丈夫。

 
 
僕は魔方陣の形と数字や魔文字の配列を
メモと照らし合わせながら指差し確認。
これで間違いがないはずだ。

魔方陣を使うなんて初めての経験だから
緊張してくる。
 
 
 
 
 

トーヤ

我が名において命ずる。
使い魔エルム、
契約者ロンメル。
我が前に集え!

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕が力ある言葉を放つと、
魔方陣から煙のようなものが吹き出した。
それは魔方陣の中で
徐々に渦を描きながら膨らんでいく。

時折、煙の中でフラッシュするのは
火山雷でも見ているかのような感じ。


火山雷は噴出物同士の摩擦によるものだけど、
こちらは異空間に満ちる魔法力そのものが
発光しているようだ。

それは肌に伝わってくる魔法力の強さで
直感的に分かる。
 
 
 
 

エルム

兄ちゃんっ!

ロンメル

ふっ……。

トーヤ

やったぁっ! 成功だっ!

 
 
やがて煙が収まると、
そこにはエルムとロンメルの姿があった。
視線が合った瞬間、
エルムはベソをかきながら駆け寄ってくる。

ほんの数分離れていただけだけど、
遺跡の中に取り残されて
不安だったんだろうな。



でもこの姿を見ると、
エルムが狭間の羽を落としたって
打ち明けてくれた時に
ひとりにしなくてよかったって思う。

だって絶望の涙を流しながら
モンスターの餌食に
なっていたかもしれないから。


そんなの……
僕だって胸が張り裂けちゃうよ……。



その後、僕たちは施療院へ急いだ。
一刻も早くシロタイヨウゴケを
届けなければならないから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 

 
 
 
 
 
 
 
 

トーヤ

お待たせしましたっ!

 
 
僕たちが施療院に入ると
その場にいた全員の視線がこちらに向いた。

そこにはクロードやライカさんの姿もある。
やっぱり狭間の羽を使って戻っていたんだ。
もちろん、カレンやサララもいる。
 
 

クロード

トーヤっ!

ライカ

トーヤさんっ!

サララ

トーヤくんっ!
無事だったんですねぇっ!

カレン

トーヤのバカっ!
心配かけてんじゃ
ないわよっ!

トーヤ

ゴメンね、カレン。
詳しいことは
あとで説明する。

トーヤ

リムさん、
シロタイヨウゴケを
持ってきました。
早くニーレさんに!

リム

……っ……。

 
 
僕はシロタイヨウゴケで
パンパンに膨らんだ袋を
リムさんの前に差し出した。


でもリムさんは表情を曇らせたまま
それを受け取らずに佇んでいる。

そして瞳ににじむ悲しげな色……。
 
 

リム

……すまない。
それはもうニーレには
必要ないのだ。

トーヤ

えっ?

リム

ニーレはお前たちが
出ていった直後に
容態が急変してな。
……亡くなった。

 
 
 
 
 

トーヤ

な……。

 
 
衝撃の言葉――

リムさんは僕から視線を逸らし、
唇を震わせている。



瞬時に僕の頭の中は真っ白になった。
シロタイヨウゴケの入った袋を
落としてしまい、床に中身が零れる。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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