考えがまとまらないまま、数分が経とうとしていた。相変わらず、六十部は考え事をしている。これに、痺れを切らした小斗が話し出した。
考えがまとまらないまま、数分が経とうとしていた。相変わらず、六十部は考え事をしている。これに、痺れを切らした小斗が話し出した。
みんな、もう一度、ここを調べない?
……良いの?
ううん、もう遠くに行ってるだろうし、それに調べないと出れないしね!
ごめんなさい
小斗は顔を横に振った。小斗は譲ろうとしている。友達を探したい気持ちを押し殺しているんだろう。
ユキちゃん、本当に良いのか、まだ探せば見つかるかもよ
昔の俺も本当の気持ちを抑えつけて、あんな事になってしまった。その事を思い出した俺は心配になっていた。
ううん、良いの
淳くんだって、気になってるんでしょ! さっきの噂
さっきのって、高須さんが言ったのか
小斗は頷く。まさか小斗ちゃんから、振ってくるなんて思わなかった。
その件については野沢心に会ってから考えましょう
そうですね
六十部は小斗にゆっくり近づいて、話しかけた。
雪音さん、ありがとう。私のわがままを聞いてくれて
良いんだよ、紗良ちゃん。私もここから出る方法知りたいもん
雪音さんは優しいのね
もう、褒めても何も出ないよ
ああ、こうやって、友情が深くなっていくんですな……ただし俺は除くってか! 俺だって六十部さんともっと仲良くなりてぇ、本当、男女の友情の差はどうやって埋まるんだ?
そんなことを考えていた鮫野木に六十部は追い打ちをかける。
あら、鮫野木くん。どうしたの? こっちの方を見つめて
な、何でも、無いですよ
そう? てっきり……フフ
てっきり、てっきり何ですか?
さて、野沢心に会いに行きましょう。時間がもったいないわ
行きましょう、雪音さん
う、うん
小斗は笑いを堪え、六十部とカゴメ中学に入っていった。
えっ、待って! てっきりの続きは?
鮫野木は二人を追いかけ、再びカゴメ中学校に入る。
道の真ん中で大学生ぐらいの女性一人と三人の若い学生が立ち止まって、話している。三人組の一人が大学生ぐらいの女性に質問をした。
それじゃ、あそこに野沢心が居るんだな!
大学生ぐらいの女性は微笑み、答える。
本当さ、カゴメ中学校に行けば野沢心は居るよ
落ち着いた雰囲気で話す彼女はなんだか気味が悪い。
やっぱ、何か隠してたか。あのセンコー
あの場所で会った子がこの世界を作った張本人なんて、信じられないよ
信じないのは勝手さ、帰りたくなければな。フフッ
……
彼女は不敵な笑みを浮かべて、何処かへ歩き出した。
待て! 何処行くんだ!
君達が知る必要は無いさ
お前は何者なんだ?
……
彼女は答えることは無く、歩き続けた。
オイ!
聞き耳を持たない彼女に藤松は追いかけようとした。しかし久賀が追いかけるのを止めた。
フッジー、駄目だよ
どうして?
なんか、嫌な予感がする
アイツ、普通じゃ無い
……
気づいたら、女性の姿は居なくなっていた。隠れるところは無い、一本道のはず。だが、彼女は音も無く消えた
な、何だよ、これ
背中に妙な寒気を感じる。後ろ姿から恐怖を感じた。何だか分からないが彼女は人ではない、そう思ってしまう。何故なら、藤松は見てしまった。目の前で彼女が消える瞬間を……。
……ハァ
消えた……
ハッ、マジか
普通ではあり得ないことに三人は動揺して、動けないでいる。沈黙がしばし続いて、藤松が最初に口を開いた。
行くしか、なさそうだな
だな! なんだかスッキリしないし、嫌なんだよな
凪佐、お前はどうする?
僕は……みんなに着いていくよ
うし、じゃ決まりだな
三人はカゴメ中学校に向って、歩き出した。そこに野沢心が居る事、野沢心が全ての元凶だと知って、行動に出た。彼女の情報があっているか分からないまま。