カゴメ中学校を出て、六十部から野沢心について話した。六十部によると野沢心は二年C組に居るらしい。

鮫野木淳

早速、行きましょう

六十部紗良

待って、鮫野木くん


 鮫野木がもう一度、カゴメ中学校に入ろうとしたとき、六十部が呼び止めた。

鮫野木淳

どうしてですか?

六十部紗良

確か、野村先生と話していたときに、三人組がどうこう言ってなかった?

鮫野木淳

はい、どうやら、俺の友達がここに居てたらしくて、誰かと行動しているらしいです

六十部紗良

もしかしたら、私の友達かもしれないわ

小斗雪音

それなら、探そうよ。まだ近く居るかも

六十部紗良

それは……出来ない

小斗雪音

どうして?

六十部紗良

……それは

 六十部は真剣な表情をしている。
 どうして、六十部は友達が近くに居る可能性があるのに探そうとしないんだ。

小斗雪音

どうして、紗良ちゃん。友達かもしれないんでしょ?

六十部紗良

ええ、でも今は脱出するための手掛かりが、すぐそこに居るの。調べないといけないのよ

小斗雪音

で、でも


 小斗は藤松、凪佐、そして六十部の友達も探したい。六十部は目の前の目的を遂行しようとしている。どちらも間違っていない。どちらに協力すべきか?

鮫野木淳

あの、ちょと――

???

アンタ達、そこで何やってるのさ


 鮫野木が話すのと同時に大学生ぐらいの女性が話しかけてきた。

???

あっもしかして、アンタ達もあの噂を聞いて、来たのかい?

鮫野木淳

あの、噂って?

高須紫崎

ん? なんだ、ここの生徒が消えた事、知らないのかい?

鮫野木淳

へぇ?


 彼女が言う噂はこの中学校で人が死んだ事なのか? それに彼女はNPCか、それとも?

六十部紗良

ちょとあなた、誰?

高須紫崎

私? 高須紫崎だけどさ?

六十部紗良

……そう、高須さん。あなたはこの世界の住民?

高須紫崎

はぁ? 何言ってるの? 私は生まれも育ちも、ここだからさ


 高須は呆れた様子で地面を人差し指で指した。

六十部紗良

あら、ごめんなさい。私は六十部紗良、こっちらの男子が鮫野木淳くん。もう一人が小斗雪音さん

六十部紗良

それで、生徒が消えたって言ってたけど、本当なの?

高須紫崎

そうそう。あくまで噂なんだけど、ここの生徒数人が突然、消えたらしいんだってさ、怖くない!

小斗雪音

消えたんですか?

高須紫崎

そう、学校も急に生徒が消えたから、警察に捜索願を出したらしいんだけどさ、未だに見つかってないらしいよ

高須紫崎

で、私が聞いた話だと、幽霊があの世に引き込んだらしいってさ

六十部紗良

幽霊ね

六十部紗良

…………


 六十部は静かに呟いた後、黙り込んでしまう。

高須紫崎

何々、アンタ達、怖くて声出ない感じ?

鮫野木淳

嫌、そうじゃないと思います


 六十部は考え事をしているらしく、声が耳に入ってきてないようだ。

高須紫崎

あっ、やべ。そろそろ会社に行かないと遅れるわ。じゃ、夜、眠れなかったらごめんな!

鮫野木淳

えっ、ちょと


 声をかける余裕も無く、高須は颯爽と立ち去った。

小斗雪音

行っちゃね、高須さん

鮫野木淳

だな


高須が居なくなった後も六十部は黙々と考えている。話しかけたいが雰囲気が邪魔をする。

六十部紗良

…………

鮫野木淳

これからどうしよう

 頭を抱え、これからのことを考える。まだ近くに居るで、あろう藤松、凪佐、そして六十部の友達を探すか、野沢心に合うべきか。
 それとも噂について調べるべきか。

エピソード13 カドメ中学校の噂(3)

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