廊下は授業中で静かだった。耳を澄ませば授業の内容が聞こえてくる。二年C組に向かう、鮫野木に六十部は話しかけた。

六十部紗良

鮫野木くん、あなたに聞きたい事があるわ

鮫野木淳

何です?


 何だろう? 真剣だな。でも、さっきの事もあるからな。
 六十部の顔をうかがう。

六十部紗良

どうしたの? 私の顔に何か付いてる?

鮫野木淳

いえいえ、何でも。それで?


 六十部は静かに話し出した。

六十部紗良

実は鮫野木くんとは学校で会って話したことがあるの? 覚えてる?

鮫野木淳

え! そうなんですか


 アレ? それなら、覚えてそうなのにな。こんなに綺麗な人、覚えていないはずが無いのに。

六十部紗良

ええ、一度だけね

鮫野木淳

えーと、いつですか?

六十部紗良

……やっぱり、覚えてないか


 六十分は小さなため息をついた。

六十部紗良

これだから鮫野木くんは私なんかに敬語を使うのよ

六十部紗良

まったく

鮫野木淳

それって、どうゆう?

六十部紗良

ふふ、聞きたい


 嬉しそうに微笑む六十分を見て察した。あっこのパターン、また馬鹿にされる奴だ。

鮫野木淳

はい

六十部紗良

鮫野木くんは私のこと年上だと思ってるけど、まだ16なの

鮫野木淳

へぇ~そうなんですか

鮫野木淳

16ねぇ、同い年か……

鮫野木淳

……

鮫野木淳

えっ

六十部紗良

ふふ、やっぱり鮫野木くんは面白い


 本当、六十部さんが楽しそうでなりよりです。

鮫野木淳

最初に言ってくださいよ

六十部紗良

あら、ごめんなさい

六十部紗良

でも、雪音さんは気が付いてたわ

鮫野木淳

そうなのか、ユキちゃん

小斗雪音

まぁ、なんとなく?

鮫野木淳

なんとなくって……

小斗雪音

ハハッ、本当はここに入る前、こっそり教えてもらったんだ


 小斗は鮫野木の肩を叩いた。

鮫野木淳

なんか、いろいろ損した気分だ

六十部紗良

そう?

鮫野木淳

ああ、もう敬語なんて使わないからな。六十部……さん

六十部紗良

あら? 六十部って呼び捨ててくれないの

鮫野木淳

嫌、あの……


 俺がもたもたしてるうちに六十部が話す。

六十部紗良

まぁ好きに呼びなさい。鮫野木くん

鮫野木淳

あ、はい


 俺の中じゃ、あんたはもう、六十部さんなんだよなぁ。

六十部紗良

それはそうと、ここね。二年C組、野沢心が居る教室は


 教室の前まで立ち止まる。二年C組と書かれたネームプレートが目に入った。間違いなく、ここが二年C組の教室だ。

小斗雪音

あっ! ほら、あそこ。後ろから三番目に!


 小斗が指を指した所を良く見ると、こちらから見て四列目、後ろから三番目に野沢心が座って授業を受けていた。

野沢心

……

鮫野木淳

……あの時の僕っ子


 窓を等して野沢心が目に入る。教室に入れば手が届く場所に彼女が居る。鮫野木は扉に手をかけた。

エピソード15 カゴメ中学校の噂(5)

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