僕はロンメルに血を吸われてしまった。
だからもうすぐ
ヴァンパイアになってしまうという。
そうなればロンメルに逆らうことが出来ず、
しかも永遠に血を吸われ続けることになる。
……でもヴァンパイアになれば魔力は上がるし、
たくさんの特殊能力も身につく。
僕にとってはむしろ好都合なのかも。
僕はロンメルに血を吸われてしまった。
だからもうすぐ
ヴァンパイアになってしまうという。
そうなればロンメルに逆らうことが出来ず、
しかも永遠に血を吸われ続けることになる。
……でもヴァンパイアになれば魔力は上がるし、
たくさんの特殊能力も身につく。
僕にとってはむしろ好都合なのかも。
うくっ……体が……熱い……。
兄ちゃん!
エルム……。
そうだ、ヴァンパイアになったら
大切な人たちの血を求めてしまうかもしれない。
まずは身近にいるエルム、
そして遺跡を出ることが出来たとしたら
カレンやクロード、ライカさん、サララ。
それにアレスくんだって……。
そんなの……そんなの絶対に嫌だっ!
ヴァンパイアになんか……
なってたまるか……。
さすが魔族だな。
人間と比べてヴァンパイア化に
時間がかかっているようだ。
だが、無駄なあがきだ。
う……ぁ……。
風邪をひいて熱が出たみたいになって、
頭がフラフラする。
まるで全身の血液が沸騰しているかのようだ。
回復薬のおかげで体力は戻ってきているのに
思うように体が動かせない。
……よくも……よくもっ!
……ガキに興味はない。下がれ。
逃げて構わんぞ。
見逃してやるんだ、
ありがたく思え。
俺はこの娘の血が気に入った。
お前のようなガキの血など
吸う気など失せたわ。
運が良かったな。
……え? 今、ロンメルは
変なことを言ったような……。
うるさいっ!
僕はヴァンパイアの弱点を
知っているんだ!
倒してやるっ!
あーっはっはっ!
面白い、やってみるがいい。
特別に棒立ちしててやろう。
……その油断が命取りになるんだ。
…………。
っ!? こ、これは……まさかっ!
エルムが魔法をっ!?
おかしい。エルムは僕と同じ下民のはず。
下民のほとんどは魔法が使えない。
もちろん、エルムから魔力を感じなかった。
つまりもし魔力があったとしても、
僕と同じように微々たる程度。
どういうことなんだ、これはっ?
神魔光滅陣!
えっ!?
この魔法はライカさんが得意とする魔法。
しかもこれは光系の攻撃魔法の中でも
高位に位置するもののはず。
そもそも魔族で光系の魔法を操れる者は少ない。
なのになぜ……?
食らえっ!
ぎゃおおおぉあぁああぁっ!
魔法はロンメルに直撃し、光の中に包まれた。
ヴァンパイアは太陽の光に弱いって
聞いたことがある。
当然、攻撃魔法の中では光系が最も効果がある。
兄ちゃん、この隙に逃げようっ!
走れる?
う、うん……なんとか……。
でもこれはいったい……?
説明はあとでします。
今は早くここから逃げましょうっ!
そ、そうだね……。
……逃がさんぞ。
なっ!?
えっ?
走って逃げようとした直後、
収まりつつある光の中からロンメルが現れた。
でも確実に大ダメージを受けているようで、
足はフラフラ。
表情も苦痛に歪んでいて余裕がない。
まさか……光系の魔法を使うとは
思わなかったぞ……。
しかもあのような
高位の魔法を……。
バ、バカな……。
エルムは真っ青になり、
足をガクガクと震わせていた。
でもその気持ちは分かる。
だってエルムが使った魔法は紛れもなく
光系の高位魔法。
光が弱点のヴァンパイアがそれを食らって
まだ立っていられるなんて信じられないもん。
真祖のヴァンパイアってここまで強いのか……。
ロンメルは不機嫌そうな顔になって
エルムを睨んでいる。
冷静を装ってはいるけど、
内心は穏やかじゃないだろうな。
殺意が膨れあがって、全身から溢れているもん。
……気が変わった。ガキは殺す。
大人しく逃げていれば
命までは取らなかったものを。
ひっ……。
……そうだ、
面白いことを思いついたぞ。
ガキはそいつに始末させよう。
僕っ!?
またもロンメルは僕を指差した。
だからそういうご指名は
全然嬉しくないんだって……。
よっぽどロンメルに気に入られたのか、
それともこうなる運命なのか。
もう完全に
我が眷属になっている頃だろう。
俺の命令には決して逆らえぬ。
う……。
慕う相手から殺されるのだ。
これほどの苦悩と絶望は
なかろうて……。
僕が……兄ちゃんに……。
主として命ずる!
そのガキを殺せ!
っ!?
勝ち誇ったような笑みを浮かべ、
ロンメルは僕に命令を下してきた。
体の中がうずく。
まるで何か別のイキモノが住み着いて、
動き回っているような感覚。
だけど僕は……命令に従いたくない!
次回へ続く!