僕は握りしめた拳の中に銀の弾を隠し持った。
銀はこうして肌と直に接しているだけでも
気分が悪いし、
力を吸い取られているような感覚もある。
でも表情に出したらダメだ。
力のない僕がこの事態を打開するには
ロンメルの不意を衝くしかない。
……そうだ、やっぱり倒すことよりも
隙を見て逃げ出すことを優先した方がいい。
攻撃はそのための布石と考えるんだ!
転移ポイントさえ通過してしまえば
追いつかれる可能性はほぼゼロ。
遺跡の特性には苦労させられているけど、
今の僕たちにとってはそれが不幸中の幸いだ。
僕は握りしめた拳の中に銀の弾を隠し持った。
銀はこうして肌と直に接しているだけでも
気分が悪いし、
力を吸い取られているような感覚もある。
でも表情に出したらダメだ。
力のない僕がこの事態を打開するには
ロンメルの不意を衝くしかない。
……そうだ、やっぱり倒すことよりも
隙を見て逃げ出すことを優先した方がいい。
攻撃はそのための布石と考えるんだ!
転移ポイントさえ通過してしまえば
追いつかれる可能性はほぼゼロ。
遺跡の特性には苦労させられているけど、
今の僕たちにとってはそれが不幸中の幸いだ。
エルム、いつでも走れるように
身構えていてね?
は、はい……。
万が一の時はロープを切って
エルムだけで逃げてね。
それは……。
お兄ちゃんの言うことは
黙って聞かなきゃ、ね?
……わ、分かりました。
僕たちはロンメルに気付かれないよう、
視線はヤツに向けたままヒソヒソ声で会話した。
あとはタイミングを逃さないように
攻撃を仕掛けるだけ。
ヴァンパイアめ、来るなら来いっ!
では、血をいただくとするか
今だっ!
僕はロンメルがこちらへ足を踏み出した瞬間、
すばやくフォーチュンを手にとって
銀の弾を装填した。
そして間髪を入れずにそれを放つ。
やぁあああああぁーっ!
やったぁっ!
電光石火の攻撃はロンメルの胴体へ命中!
不意を衝いた一撃だったからか、
避ける間もなかったらしい。
銀の弾はロンメルの肉体を抉り、
血が滴り落ちている。
エルム、逃げるよ!
は、はいっ!
僕たちの後ろには岩があって逃げ道はない。
だから逃げるためには
ダメージを食らって動けないロンメルの横を
すり抜けるしかない。
それが出来るのは、
不意を衝いた攻撃が命中した今だけ。
まさに千載一遇のチャンス――。
――逃がすわけがないだろう。
なっ!?
駆け出そうとした瞬間、
なんとロンメルは怪しい笑みを浮かべて
行く手を塞いだ。
あの位置に立ってこちらを牽制されたら
もはや逃げることは不可能。
僕たちはほぼ元の位置で釘付けにされてしまう。
でも……なんで動けるんだ……?
大ダメージを与えたはずなのに……。
兄ちゃん! ロンメルの傷が!
えっ?
見るとロンメルの血は止まり、
傷口が再生を始めていた。
こ、これはトロルが持っていたものと同じ
自己治癒能力っ!!!
しかもトロル以上に回復のスピードが早い!
表情に余裕があるということは、
ダメージもあまり受けていないのかも……。
まさか魔族から銀で
攻撃されるとは思わなかったぞ。
だが、それも悪あがき。
並のヴァンパイアならともかく
尊き血統の俺には通用しない。
そんな……。
泣け、喚け、恐怖しろ!
その絶望した瞳こそ
最高の調味料となるのだ!
さぁ、我が糧となれ!
ロンメルは満面に笑みを浮かべ、
目にも留まらぬ速さで上下左右に
ステップしながら
こちらに向かって突進してきた。
通路の壁や天井も蹴りつつ、
立体的に動くので姿を捉えきれない。
ヤツはどこへ……!?
っ!?
背後から冷たくて邪悪な気配がした。
全身がゾクッと震え、
僕は慌てて振り向こうとする。
でも次の瞬間――
あ……あぁ……。
…………。
兄ちゃ~んッ!
エルムの悲痛な叫びが耳に響く。
いつの間に移動したのか、
ロンメルは左斜め後ろに立っていた。
そして僕の首に鋭い牙を突き刺している。
全身から力が……抜けていく……。
でもなんか変だ……。
最初は痛かったのに
だんだん気持ちよくなってくる。
頭がボーッとしてきて全身がゾクゾクする。
なんだ……これ……。
やがて首からロンメルが口を離した。
僕は立っていることが出来ず、
その場へ倒れ込んでしまう。
やばい……体に力が入らない……。
ぷはぁ! 美味だったぞ。
なんと不思議な味だ。
今までに味わったことのない
独特の風味がある。
兄ちゃん! 兄ちゃん!
エルムは僕に回復薬を飲ませてくれた。
これは遺跡に入る前、
僕がみんなに配布しておいたものだ。
おかげで少しずつ体力が回復してくるけど、
体が熱くて変な気分なのは治らない。
う……く……。
ふふふ、気に入ったぞ。
お前は我が眷属にしてやろう。
そして永遠に血を啜ってやる。
その美味なる血は誰にも渡さん。
そ、そんなの……お断りだ……。
いつまでその強がりが続くかな?
血を吸われた時点で
お前はヴァンパイア化が
進行しているのだ。
もうすぐ完全に我が眷属となり
俺の命令に逆らえなくなる。
ふふふ……あーっはっはっ!
そんな……。
兄ちゃんっ……っ……。
ロンメルの勝ち誇ったような笑い声が
遺跡内に響き渡っていた。
あぁ、僕はもうすぐヴァンパイアに……。
次回へ続く!
いつも楽しく拝読させて頂いてます!
ま、まずい!
このままでは「僕は駆け出しヴァンパイア」になってしまう!!
眷属になってしまうのか、それとも尊き血統の血を継いだトーヤ君は新たな力を得るのか!?
乞うご期待!ですね!!!(° ꈊ °)✧˖°オホッ!
ご覧いただきありがとうございますっ! おっしゃる通り『僕は駆け出しヴァンパイア』ですね~っ。番外編で書くのも面白そうですっ!! トーヤくんがどうなるのかは、次回をご覧くださいませっ!
僕は駆け出しヴァンパイアは笑ったwww
ヴァンパイアトーヤ。
ヴァンパイアになって
血が欲しくてカレンに
相談するが優しいカレンは
血を吸うことを許可し
そしてトーヤの口は
カレンの首元へ__
…実にいい!
今回結果どちらでもいい!
むしろそうなって欲しい!
そうしてくれぇぇ!
ご覧いただきありがとうございますっ! トーヤくんが血を求めてカレンちゃんたちに迫る――という展開は頭の隅にあったのですがっ、このお話は全年齢版なのでボツにしましたっ♪