地獄の鬼達が、泣いた。


 友の元へ行くと、誓った魂の想いに。




 そこまで、想われていた。


 この魂の、前世。




飛騨零璽

・・・っ






 また、みっともなく泣き出してしまいそうだった。

 荒くれて暴れる感情を、抑えられるわけも無く、こらえようも無く、泣く泣く、泣いていた。




記憶が削り取られても、

生爪をはぐ様なそれ以上の
凄惨たる拷問が続いても、




自分が誰か忘れても、

ただただ友だけを
想い続けたその魂は、

無慈悲な鬼の心をへし折った。







もう、自分に拷問は無理だと
言わせるほどに、



拷問を得手と自負し、



その魂の罪を浄化し、来世へと送る




誉れ高い仕事と誇っている



彼らの職人のごとき魂を砕いた。







赤石賢誠

そしてレインフォードさんの魂は、この国の地獄に出入り禁止になりました。

レインフォードさんの魂がやってきたら、追い出す役目を負っているのが小笠原さんのようなんです

 

 言葉が出なくて、俯くしかなかった。


 言葉が出なくて、喉の奥に詰まったまま。






 ただただ、前世の友人に会いたいと思っていただけだった。


 ただただ、どんな友人だったのか聞きたいと思っていただけだった。


 来世でも会おうと誓う人は、どんな人なのか。


 そして、どうしたら死の間際でも笑っていられたのか知りたかっただけだった。






 それなのに。














それなのに





飛騨零璽

馬鹿なのか……あの人は……!







 死んでまで、自分なんか助けに来て。


 危ないと分かっているのに、暢気に死んでられるかなんて。




 気のせいだろうか。


 前世より、馬鹿がつくほど諦めが悪くっているように思えた。




 きっと、地獄の拷問が続きすぎたせいで馬鹿になったのだ。



 辛すぎて苦しすぎて忘れたけど、何となく地獄で嫌なことがあったことを魂のどこかで覚えていて、地獄に行きたくないと思ってるんじゃないだろうか。









百年も地獄の拷問に


苦しみ続けるぐらいなら。




忘れてくれれば良かった




また会いたいなど、
思ってくれなくて良かった。






そこまで強く
想ってくれなくて良かった。






そんなに苦しんでまで
想ってほしくなかった。





そんなに苦しめられるぐらいなら
忘れてほしかった。






そこまで想われても、



想いが重過ぎる。




自分など。




そこまで想われるほどの
人間だったなんて、思えない。


思えるわけがない。



赤石賢誠

重たいですねぇ……

飛騨零璽

…………重たすぎる






受け取りたいのに、



自分ごときでは
彼から貰える想いが重すぎて
抱えられない。


抱え上げられない。







あんまりにも岩石のように
大きな意思だから


引きずって持っていくのも、無理だ





赤石賢誠

でも、それだけじゃないようなのですよ。

レインフォードさんの前世、渡辺さんらしいですが、彼が置いて行った心は飛騨さんの前世にだけじゃないようです


 黙って、聞くしかなかった。

赤石賢誠

あのですね。地獄の住人達も、元は生きていた『人間』なのですよ

飛騨零璽

……生まれてから鬼じゃないのか?

赤石賢誠

はい。普通の鬼もちゃんと輪廻転生の対象になります。

彼らも体質が普通の人間と違い、魔族の鬼であれど、魂を持っている者なのでちゃんと死神さんにあの世へ案内してもらえる立場なのです。

今回、汐野に現れた吸血鬼もそうなんですよ

飛騨零璽



地獄の鬼も、もとは人間だろう?

今、そう言ってた

赤石賢誠

そうですよ。

でも、彼らは『堕ちて鬼になった』人間なんです

飛騨零璽

おちて、鬼になった?

赤石賢誠

ほら、魔法の属性は悪さをすると薄汚れて黒くなりますよね?

飛騨零璽

そうなのか?

 知らないんですね、とサトミは語りだす。



 魔力のこと。

 それには属性があること。

 サトミは土属性であること。

 人の心持ち次第で魔力は明るくなり、暗くなる。


 悪逆非道を重ねることにより、本来ならば明るくなるべきその魂を逆に黒に染めていった、心に闇を宿し者。



 彼らの魔力は目視で分かる。


 魔力が、黒く染まっている。



赤石賢誠

魔力が、黒いんです。でも、闇属性と言うのはどの魂も内包しているもので、闇に染まりながらも属性魔法が使用できるんですよ。

たしか、小笠原さんは聞いた限りでは佐藤さん達を『黒い炎』で包みましたよね?





 そうだ。レインフォードの記憶では、佐藤達は黒き炎に巻かれてしまっていた。


 あのあと、別に黒こげになっている訳ではなかったが、そこは調節できるそうだ。




 闇に落ちれば強くなる。



 そうサトミは言う。



 通常の修行では得られないほどに強大な力だ。


 しかし、それには代償がある。



赤石賢誠

黒く染まった魂が肉体さえも変質させてしまうんです。

その代表がこの国では『鬼』と呼ばれ、異国では『悪魔』と呼ばれる者達です。

吸血鬼もそれに入ります。彼らもまた『鬼』ですから

 
 あるいは、力を得るための対価。

赤石賢誠

でも大半がすごい悪さをして殺されます。

そして殺された彼らが地獄の住人として拷問の仕事を負わされるんです

飛騨零璽

!? それ、不味くないか!?

赤石賢誠

いえ、それが案外大丈夫なんです。

死んだ鬼達は喜んでやるんですけど、拷問に『飽きる』んですよ

飛騨零璽

飽きる? 拷問に飽きるって……

赤石賢誠

えぇ。ほら、罪人の身体って元に戻るでしょう。

それが毎日延々と続けられる。

最初のうちは面白がるんですが、次第に毎日の繰り返しでつまらないと飽きるそうです






 拷問を飽きると言うのは零璽には納得いかない感覚だ。



 人をいたぶり続けることに、心が慣れてしまったと言うことではないのか。



 それは、人として……ーーあぁ、彼らは鬼だった。悪いことをして鬼に堕ちて、殺されて拷問する立場になった。


 そんな鬼達が喜びそうな拷問を、飽きるとはどういうことか、些か理解に苦しむ。



赤石賢誠

大概、人を殺めることで快楽を覚えるのは、生きていたころに心地があったからですよ。

死ぬことで自分達も生きている心地が沸いたとか、そんなところだとは思うんですけど






 でも、それはあくまでも彼らにとって殺すことが楽しいだけで。


 痛みに呻いて生きている人間の命を踏みにじるのが楽しいだけで。



 いざ、何度でも蘇っては呻いている人間を見ていると……次第に、つまらなくなるのだ。






 こいつ、また明日には身体が完全回復して自分の拷問を受けることになる。毎日見飽きていれば、やることが同じであれば、それが記憶が潰れるまで繰り返していれば、時の感覚が堕ちた鬼達の『快楽』を消し潰す。




 そうやって、彼らは冷酷無慈悲になる。




 目の前で泣き叫んで痛みを訴えている人間達に快楽も哀れも向かなくなる。




 情が無くなり、非情になる。


 心が石像になったように、固まって感情がなくなる。





すべてがただの作業になる。


すべてが自分には無意味な繰り返しになる。

赤石賢誠

永遠に

飛騨零璽

永遠に?

赤石賢誠

どうやら全ての人間に平等な神々もそんな彼らだけには優しくしない。

永遠に、拷問させ続けるんです。

鬼に堕ち、悪逆非道を重ねて死んだ彼らに永久に地獄にいることが刑罰。

鬼に堕ちた彼らには……――小笠原さんには、輪廻転生が許されていないんですよ

 体質を変質させるぐらいにその身とその御霊を落とした彼らは、転生させてもまた同じ悪さをするだろう。


 だから彼らは、地獄に永遠に幽閉する。



飛騨零璽

でも、それだと増えすぎないですか?

いっぱいいても、足りないんですか?

赤石賢誠

命の価値を決めるのは、いつだって自分なんですよ、飛騨さん

飛騨零璽





 それは、この前も言っていたことだ。



 レインフォードの記憶をまるごと自分の中にコピーして、目覚めたあの日……間違いなく、零璽に向けて話してくれた、あの言葉。



 こんな重たくて最悪な話をしているというのに……彼女は、笑ってこう言った。



赤石賢誠

地獄の住人は死にたくなったら自殺できるんです。

『自分から魂を消滅させることを願う』と言って正解です。



魔に堕ちた彼らは『死んでも許されない』んですよ、その罪を。


その魂は永遠に地獄で縛られて、未来永劫こき使われるんです






 その中で、もちろん脱落者はいる。


 こんな無益なことを繰り返して、なんの意味がある。



飛騨零璽

あ……――

赤石賢誠

拷問を繰り返しているうちに、自分の存在意義を思考するようになる。

その中で、自分の今までを考えます。

自分はどんな風に生きていたっけ。

永遠に地獄にいるわけですから、自分が犯した罪と冷静に向き合う時間が生まれます。

そうして、そうやって思考する鬼の中にはこう考える者が現れます






























 言葉に、できない。

赤石賢誠

彼らは自らの意思で、とても簡単に、いとも容易く自殺を選ぶんです。

地獄の住人には転生する価値の無い者……――『それは生きている価値のない者』と同意義なんです。

地獄とは、そんな人間から外れた者達の収容所


その中で、一番楽に地獄の生活を送れるのは

赤石賢誠

『この仕事は誉れ高い仕事』と使命を持って仕事に当たれるようになることです。

人間の世界では、これを『洗脳』っていうんですよ。

他人の思想を真っ白にして、自分の手前勝手な思想に塗り替えて、自分の手足のように思うがままに使い潰す。

人によっては、それを『駒』と揶揄し、生物の生きる権利を人為的・故意的に剥奪した存在……――


『奴隷』にするんです

 彼女は、このおぞましいような、言い様のないえげつなさを持っている話にそぐわないほど零璽を見て笑んでいた。


 それでもそれは彼女が害意や悪意を内包させている訳ではない。それは分かる。


赤石賢誠

ここまで聞いて、飛騨さん。お尋ねします。

飛騨さんが死んだら、地獄の住人やっていけそうですか?




 この状況で、これを聞いてくる。


 きっと、分かりきって聞いてるんだろう。



 この人は本当に、いろんなことを考えてるから。



飛騨零璽

きっと、三十分持つ自信もない

赤石賢誠

あぁ、よかった。ルームフェルみたいに重度だったらどうしようかと思いました!

 サトミは安心したように笑う。

赤石賢誠

飛騨さんを地獄の住人にするほど冥界の神もバカじゃない。

仮に地獄に落とされたとしても、住人になるのではなく拷問を受ける立場だと思いますよ。


それは、冥界の神から『お前には生きている価値がある』と言われている証明。

輪廻転生は、『生きる価値のある者にしか与えられない特権』ですから





 それは、とても遠く回っても、この話をしたかったのだろう。



 それは、零璽に『生きている価値』があるのだと分かってほしいがための、回り道。




 急がば回れ。そんな言葉を、今、思い出した。




 急いで知ってほしかったら、遠回しでも分かって貰えるように話をする。




赤石賢誠

でも飛騨さん。あなたはそれだけじゃない……――あなたはレインフォードさんと出会うべくした縁があるんです。

その重要人が、小笠原さんです


 覚えていますか、とサトミは呟く。

赤石賢誠

レインフォードさんの前世が置いて行った心は飛騨さんの前世にだけじゃない。

それが小笠原さんです

飛騨零璽

あの死神に、ですか?

赤石賢誠

たぶん、マスターも小笠原さんが今回『私情』を挟んで動いていると踏んでます

飛騨零璽

私情?

 つい、目を二度ほど瞬かせた。


 サトミは、嬉しそうに微笑している。



赤石賢誠

マスターが『自分はこれほどまでに想われたことがあっただろうか』なんて青臭い感情に人間だった頃の感情が呼び起こされて苦悶している純情乙女な鬼神が仕事をリストラされてでもレインフォードさんに会いたくて死神という下級職に妄着している小笠原さんについて詳しく話すなら、必ず飛騨さんは口が固い方か確認しろと言われましたが

飛騨零璽

え、と……そこまで言ってましたか?



 ていうか、『りすとら』ってなんだろう。


『栗鼠』と『虎』のことか?




 尋ねることはせず、饒舌に語る彼女の話に耳を傾ける。

赤石賢誠

そう言いたかったのを怒った小笠原さんに止められました。

で、マスターがその想いを嘲笑うかのごとく防御魔法で防ぎました




 サトミは、窓の外を眺める。


 窓の外は汐乃から、いつでも見える二層の青が描く壮大な風景。


 海と空、違う青が決して混ざり合うことはなく地平線に区切られて上下に存在する。



赤石賢誠

多分ですね。小笠原さんがレインフォードさんの前世……あぁ、渡辺さんですね。

渡辺さんの拷問を担当していたんだと思います。

で、本当に拷問するの嫌になっちゃったんです。

本当に、泣いて嫌がったんです




 おそらく、他の鬼も渡辺の拷問を嫌がったのは事実。


 だけど、何で担当以外の彼らまで『嫌がった』のか。



 きっと、小笠原は『その点をあえて隠した』。



赤石賢誠

いえ、言いたくなかったんです。
たぶん……




地獄で生き飽きた、
生きる価値なき罪人達は




渡辺の魂から
その友人の記憶を
消せるか面白がってやった





誰がこの男から
友の存在を消せるような
拷問をしてやれるか




恐らく競争になった


飛騨零璽

…………





競争になって、
一○年、二○年やって、



暇な彼らは、代わる代わる
渡辺の魂を玩具のように
遊んで拷問にかけた





それを他の鬼達も
止めなかっただろう




記憶を消すのは、我らの仕事





でも、結局


赤石賢誠

全員が消せなかった

 あくまでも想像だけど、とサトミは続ける。





それから三○、四○、五○年。



拷問を続けていって、


それでも消えない友への想い。



赤石賢誠

『人』の心に触れてしまった鬼達は、次第に人間だった頃の感情を呼び起こされてしまった。

でも、ただ呼び起こされたんじゃなくて、きっと『変質』して感情が戻ってきてしまったんです

なお友の名だけを
呟き繰り返す彼の心に

『自分の存在価値』を
徹底的に砕かれた





自分は果たして、
ここまで誰かに想われたことが
あるだろうか




ここまで誰かを想ったことが
あっただろうか





『仕事はなんだ?』




そう聞く度に、


十年後必ず、
友の名を呟いた。



まるで、その友の傍にいることが
仕事であると思っているかのように


屍に成り果ててもなお
友の名を呼ぶ彼に








まず、
担当だった
小笠原が脱落した。




そして彼は仕事を降格されて死神になった。





赤石賢誠

おそらく、飛騨さんの前世を探しに飛び回ったんです。

あんな友達を持てる人間とはどんな奴なのか、気になったんでしょう。


飛騨さんのことを『桜塚』……――桜の墓標に例えて呼んでました。

小笠原さんは、きっと何回も飛騨さんの魂を回収してると思います。きっと桜の木の下で死を繰り返したんだと思います





まるで
渡辺の後を追いかけるように





でも、地獄の住人達である獄卒達も
人間だった頃の感情が
呼び起こされてしまった。





そんな時に、二○年も記憶を残す
人間を前にすると、


自分達が拷問しても
その記憶が消えなかった渡辺を思い出した。


赤石賢誠

きっと、暇な時間に存在意義を問うより、渡辺という人間を前に存在意義を問いただした時、痛みが伴った

自分に、
生きる価値はあったか。




自分はあの時、
本当に生きてて良かったのか。





問い詰めるように、


問いかけて。


問いただして。








たった一つの答えにしか
辿り着かない


残酷で冷酷無慈悲な

一問一答。



その答えは




存在価値なんて、ない




赤石賢誠

仕事が滞った理由。

恐らく、彼らの『自殺が異常発生したから』です。

渡辺さんを見ていると、自分達に生きている価値が無かったと実感した。

実感したから、次々仕事を放棄して自殺していって、大幅な人材不足になった

 




 地獄の最下層。


 その場所の仕事ができる非人道的な鬼は少ない。





 そうでなければ、渡辺を玩具のように拷問するという発想にすら至らない。




赤石賢誠

彼の魂を畏れて怯えた、という表現は小笠原さんの嘘ですね

地獄出禁にした最大の理由は、この異常極まるほど自殺していったために深刻な『人材不足』が発生したことです。

こんなにたくさんの鬼達に自殺されると思わなくって、お仕事が本当に滞ってしまった

だから今後の仕事のためにも、レインフォードさんの魂だけは地獄に入れないことにした

赤石賢誠

小笠原さんは多分、渡辺さんのことが大好きなんですよ。

魂がやって来ると感知して、汐乃に到着三時間前の空挺まで飛んできたんです

飛騨零璽

いや、でも。
スッゴク嫌いそうだし、確か宣告もしに来てたって聞いたけど……

赤石賢誠

ツンデレですよ、多分。

会いたくて顔見に来ちゃったんです。

マスターが言ってました。

魂回収対象に死の宣告をしに来る死神はいない……――多分、レインフォードさんはここで死ぬ予定は本当に無かった

でもあそこに、見えるボクがいて、とっさに嘘吐いちゃったんだと思います


 そして彼は、最大の私情でカロンの元へ訪れた。

赤石賢誠

このままでは、渡辺さんと飛騨さんがすれ違う可能性の方が高い。

小笠原さんは、それを見過ごすことができなくて、私情を挟んで飛騨さんにレインフォードさんの記憶を植え付けたと言いますか。

小笠原さん、飛騨さんの人具の『特質』を知ってるみたいでしたからね。

飛騨がレインフォードさんの前世からの友達だったことは把握済みだから、レインフォードが見つけられなくても飛騨さんの方を抑えておいたんでしょう







いずれ、あの男が来る


友を求めて、必ずやって来る




赤石賢誠

飛騨さんとレインフォードさんの出会いは、彼に願われて叶った。
この世界で、前世の人間と合える確率ほぼほぼ無い。

でも、それでも巡り合えることがあれば、それは『何者も味方につける』という運。

あるいは誰からの協力を得られるという運。

その人に会えるように状況が作り出されて、その人に会えるように誰かが手助けしてくれる





それがまず、彼の貿易会社。

異国で未踏の地ということで、剣の才有るあるレインフォードを抜擢した。





そして、その人に会えるように誰かが手助けしてくれた。

それはきっと、小笠原という地獄の住人。




飛騨零璽

でも、フィリアさんにもし前世の記憶が見えなかったら……?

俺に、見えてなかったら……

赤石賢誠

ふふんっ。
飛騨さん、舐めちゃいけません。

それもまた『運』ですよ。


レインフォードさんがこの地に近づいた時に前世の記憶が見えたのも、また『都合の良い運』なのです。

これさえも味方に出来ない人間が、前世の友人に『会えるわけない』のです




















運命さえも
肩を持つように荷担して


輪廻を越えた再会には


極上の依怙贔屓を

『時間』

『誰かの想い』

『運』




全てから

再会を祝福された二つの魂





















赤石賢誠

ボク達、たぶん明後日には出ることになります

飛騨零璽

!?

赤石賢誠

飛騨さん。ボクはあえてこう言います。

どうしたいか早急に決断した方が良い。

また彼が来てくれるかもなんて待ってたらダメです。

運命なんて気まぐれなので、この再会は一回だけしか許してくれていないかもしれません

飛騨零璽

そんなっ……

 サトミは微笑む。

赤石賢誠

貴方の魂に、聞いてみてください。

飛騨さんがどうしたいか、答えが決まったら教えてください。



ボクらはあくまでも第三者。

だから、飛騨の気持ちが決まっていなければ手伝うことはできないです。

心が決まっていない人に無理強いすることはできませ……――




 唐突に部屋の扉を開けられた。

 盛大に開かれて、ドアはあんぐりと口を開ける。



 そこから現れた人物は、零璽達を見据えるなりこう言った。


カロン・レンドモード

サトミ。
すぐ支度を整えなさい。

おそらく、三時間以内には出発します

赤石賢誠

へ?

赤石賢誠

え!? 何でですか!?

カロン・レンドモード

何で? バカですか?
Mr.フィリアが帰ると言うからですよ

飛騨零璽

え……




 急すぎるでしょ!? と慌てるサトミの隣で、零璽の頭は真っ白に染まる。




 何で、そんな急に?


 だって、サトミは明後日だって言ってたのに。























幾星霜の時を越え


輪廻を潜り抜けて転生し


運命からも
確約されたその邂逅は




絶対を保障される



















カロン・レンドモード

急で申し訳ありませんが、私達と来ませんか? Mr.レイジ。

貴方が望むなら、我らのギルド『アメノミナカヌシ』のメンバーズとしてお迎えしますよ

飛騨零璽

え……

エピローグ 生まれ変わっても

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