あぁ、泣くな。





泣かないでくれ、友よ。






俺は、
お前の笑っている顔が
好きなんだ。




どうか、笑っておくれ。















あぁ


また、あの夢















──……男が、今にも泣き出しそうなほど瞳を潤ませて見下ろしていた。




その黒髪は血濡れでヌラヌラと艶めいているが、その様が烏の濡れ羽色のように思えて何とも形容しがたい美しさを纏っていた。




色男が女のようにさえ見せる。その中性的な顔は一層、彼の性別を狂わしいほど勘違いさせた。




見知らぬ着物だ。胸元がはだけ、腹の辺りで巻いてある布で押さえつけているだけだ。





そんなに乱れた着方では、風邪を引いてしまう。整えなさい……──そうは思うが、今は時間がなかった。














違う。


いつも見る、夢じゃない





















  







 俺は天を煽り見るように倒れている。腹の辺りが猛烈な痛みでどんな怪我を負ったのか忘れた。





 ただ、どうしたらお前が俺が亡き後も、前を向いて生きてくれるのか考えるのに精一杯だった。暗い天を覆うように、薄紅の雲が伸びている。









 桜……――。




 幾人もの人間の心に穏やかでありながら陽気な光を灯す。その花を見るだけで、まるで魔法にかけられたように色を失い萎れた心さえ彩り鮮やかな世界へと誘う。





 桜の纏う可憐さが、人の魂にさえもパッとその花を咲かすかのごとく。




 空は星空という帳が降りているというのに、その木の根本で燃え盛る炎が、木に咲き誇る花を神秘的な美しさを演出するように照らしていた。
















同じ場所だ。


だけど、違う。




視点が、違う。


























俺が迎える死に、後悔は微塵もない。





ただ、お前には敵が多いから、
最後まで守ってやれず先へ逝くことが心残りだ。





ずっと守ってやると、
その誓いを自ら立てておきながら、
その約束を果たせなかった。








それが、




ただそれだけが、心残りだ。





だから、俺はお前に誓おう……──。











俺はすぐに生まれ変わって、
お前の元へ行くよ。





だから、どうかそれまで
お前は死ぬな。





ヨボヨボのお爺さんに
なっても、
ぽっくり逝くな。







































そして、
今度こそお前を守り抜く。





だから、
その悲しそうな顔は
やめてくれ。





どうか、笑ってほしい。




俺は、お前の笑った顔が
好きなんだ。






笑っておくれ。



我が、友よ……──。











飛騨零璽

っ……!?





 何だ、今の夢。


 いつも見ている夢と、ほとんど同じなのに、見えている人が違った。




 いつもは、腹部が大きく切り裂かれ、全身が切り刻まれた血塗れの男の人だ。


 少し怖い顔をした、身の毛もよだつ様な大怪我をしていても、それでも穏やかに笑ってくれる人だ。





 でも、今のは……――。





 

飛騨零璽

いや、違う……。

今のは、この東国に近づいた時に俺が見た前世の記憶――

サトミがそう言って……













飛騨零璽

っ!?





















猛烈な痛み。




頭が割れそうなほどの、
強い衝撃。





誰かが、

ぐちゃぐちゃと

脳を引っ掻いているような。

































飛騨零璽

あ……ぐっ……!




 頭を抱えて、再び布団に倒れこむ。


 割れそうなどと、生易しい表現では足りない。


 このまま割れる。




 










頭が、壊れる







































ああ
ああああ
ああああああああ
あああああああああああああ
ああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

   !   !!

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


























零璽!
おい、大丈夫か!?

飛騨零璽

!?




 息を切らせて、目を開く。


 登りかけた朝日を浴びて、その黄金色の髪が神々しく輝いる。


 それと、


綺麗な、空色の瞳

レインフォード

おい、大丈夫か!?
しっかりしろ!!

























そうだ。


これは、俺の記憶……




















いや、彼の……――。
























































どうか笑ってくれ。



我が友よ……――。


































飛騨零璽

あ……――










今になって、


何もかもが合致する。






大丈夫ですか、零璽?
何か、嫌な夢でも……――

飛騨零璽

っ!!

!?









 彼に、しがみつく。





飛騨零璽

うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

レインフォード

え!?
あ、えぇ!?

















おい、零璽!?
何があった!?





































ようやく、会えた。


あの人だ。





この人が、

夢の中の、あの人だ……――!










































怖いことがあった時はあぁいう風に叫ぶことがあったんです。

今は落ち着いていたんですが、きっと先の吸血鬼に襲われたから……

ライト・ネスター

そうでしたか……すみません。

外傷的ストレスかとは思いますが、精神学は俺の分野外でお力になれそうにありません

レインフォード

それは、心配だな――

私もそろそろ帰らなくてはいけないというのに……























飛騨零璽

フィリアさんが帰る……!








 今朝の割れるような頭痛の後、『自分』が戻ってきた。

 おぼろげにレインフォードの記憶は残っているものの、今までは『レインフォード』という存在の自覚が薄らいだ。




 そこで、知った。




 彼の記憶と、自分の夢が、同じ場所と同じ状況であることに。

 合致した台詞が、その裏付け。





 ようやく、かの夢の人と会えたのに。





 でも、元の国に戻るのは当たり前と言だ。

 彼は、前世こそこの国の人間でも、現実はこの国の人間じゃない。




 零璽は今更、そんなことを思い出した。







飛騨零璽

…………







この国に残ってくれなんて、


言えるはずも無い。





飛騨零璽

……







そうだ。


いえるはずもない。








本当なら、彼は今回の事件にだって

巻き込まれる筋合いは無かった。





本当なら、すぐ帰って良かった。




それでも残ってくれたのは……――。










近藤が、前世からの友人だと


勘違いしてるから。




飛騨零璽

きっと、また来てくれるだろうし
大丈夫。

また、会える








飛騨零璽

次は、何時着てくれるんだろう。
聞いてみようか……

でも、教えてくれるだろうか……

 







怖い。



教えてもらえなかったら、どうしよう。







いや、もう来てくれないかもしれない……


































それも当然か。



死んでしまうような
事件に巻き込まれた場所に



また着たいなんて
思ってくれるわけない









飛騨零璽

……












































飛騨零璽

来てしまった……







 零璽はポツリと呟く。


 目の前にある、超巨大な空挺。

 ドラゴンと呼ばれる、爬虫類のようなうろこを持った大型生物が輸送する空挺だ。





……

飛騨零璽

どうしよう。目が合った

グルルルル。
(この地の聖人か……)

飛騨零璽

あ、えっと……
入って、良いですか?

ガウゥ。
(そうか。『スピーカー』なのか)

飛騨零璽

す、すぴぃかぁ?



 すると、ドラゴンは降ろそうとしていた首を零璽の前まで持ってくる。

ガウ、ガウガウウ。

(『話せる人』のことだ。

異国語だけでなく、動植物の話している言葉が『何となく』分かる。

そして、また相手側も言葉を理解することが出来る)







 確かに、そうだ。


 零璽は、何となく彼らの言っていることが分かるのだ。


 ハッキリ言って、このドラゴンはさっきから「ガウガウ」としか言っていない。


 レインフォード達の会話も、へんてこな言葉が連なっているだけに聞こえる。


 それにも関わらず、何となくそう言っているように聞こえるのだ。




 これが今回、零璽がテルファート語の翻訳者として抜擢された理由だ。




ガゥ、ガゥウ。
(入れば良い。だが、死の使いが来ている。気をつけろ)

飛騨零璽

!?






 零璽は、弾かれたように空挺の扉を開け放つ。


 

飛騨零璽

もしかして、またフィリアさんの魂を取りに着たんじゃ……!



















そんなことさせない








させてなるものか










無心で駆ける。

強い魔力が有る方へ。



その昔、
感じた覚えの有る魔力の元へ。





喉が潰れそうなほど苦しい。

それでも駆ける。




飛騨零璽

待って!
フィリアさんを連れて行かないでくれ!!

カロン・レンドモード

…………

赤石賢誠

うわぁああああん!

絶対、本に書くぅうう!









 サトミが泣き叫んでテーブルをだんだん叩く。



 くるりと振り返った先に居たのは、レインフォードをひたすら憎んで嫌っているあの死神。






飛騨零璽

フィリアさんを連れて行くなら、代わりに俺を連れて行ってくれ!

貴方、あの時、俺だけは連れて行かなかっただろ!?

それなら、今回は……――

回収予定外の魂を回収するのは冥府でもご法度。

あの時も今回も、貴様の魂に回収予定は無い、桜塚。

そこの死霊術師。

丁度良かった、このクソガキつれてこの島から出て行ってください

カロン・レンドモード

申し訳ない。
それを決めるのは私ではない。

彼です。
彼が我々と共について来るというのなら歓迎します

そうですか

それなら、そこで煩い小娘を持っていくことにしようか

赤石賢誠

天国に放り込んでくれるなら喜んで行きますぅうう!

口約束でも契約は契約。
ソレが消えれば開いた席にあれを埋めれば良い

飛騨零璽

ま、待ってくれ!?

何か話がとてつもなく変な方向に進んでないか!?

彼女じゃなくて俺の魂を……――

貴様の魂でなければあれの枷にならない。

せっかく会わせてやったのに、あの阿呆、気づいていないとは何事だ……



















ふざけるな!


私がどれだけ苦労したと
思ってる!




会いたがっていたから
会わせてやったら


気づかないだと!?

























あの男はどれだけ私を面倒事に巻き込めば気が済む……!

とっとと魂ごと消えろ!

私の見ていない知らないどこか遠い所で!!

赤石賢誠

うわぁああああん!
もうやだぁあああああ!

この仕事やだぁああああ!!

黙れ小娘!
嫌なのはこっちだ!!






 カロンに手招きで呼ばれ、零璽はよく分からない状況にただ言われるままに従うしかない。


 カロンは零璽を呼び寄せるなり、すみませんねぇ騒がしくって、とその幼い見た目に合わない大人びた口調……というか、腹に一物ありそうな喋り方をする商人のように話しかけてくる。



 ちょっと、この手の喋り方をする人は苦手だ。

 昔、人身売買に連れて行こうとした商人と全く同じ喋り方だったから。




カロン・レンドモード

実はですね。

最初はMr.フィリルを追い出すつもりだったらしいのですが、Mr.オガサワラの采配で、彼の前世の友人を会わせることにしたらしいのです。

それが、貴方というわけなのですが

カロン・レンドモード

それには、もう気づいてらっしゃるんですよね?

Mr.オガサワラが言うには、お面で憑依させることによって、Mr.フィリルの記憶をぶち込んで、前世の記憶と合致することで分かるようにしたらしいのです

 



ところが、どっこい。



カロン・レンドモード

Mr.フィリルの方は、会いたいと思っていた相手に会ったと言うのにまるで気づいていないようなのですよ

飛騨零璽

あ、あぁ……
近藤様が前世の友人だと勘違いしてらっしゃる……



















でも……






飛騨零璽

でも、そっちの方が良いのかもしれな……――

良いわけが無いだろう





 今まで黙って聞いていた、小笠原が目を爛々と光らせて零璽を睨みつけた。



これはあの男をこの島に二度と来させないための措置だ。

気づかなければ意味が無い

飛騨零璽

なっ……!






 レインフォードを二度と来れないようにするための措置。


 つまり、この国にレインフォードが入って来れないということにならないか。




飛騨零璽

待ってくれ!
それはいくらなんでも横暴……――

私達に、貴様ら人間の常識が通るとでも?






 息も詰まるような威圧に、血の気が引く。


 噴出してきた汗が、一瞬で全身の熱を奪い取った。




 本能が警鐘を鳴らしている。

 

 これ以上、この鬼に馬鹿なことは言うなと。

 はむかうのは、やめろと……――。




赤石賢誠

えー。
レインフォードさん、もうこの島来ちゃダメなの?

それやだなぁ。
ボク、桜見てもらいたいし、もっと日本の文化を知ってもらいたいです

お前の私情で我らの仕事を阻めるわけが無いだろう

カロン・レンドモード

サトミ。
貴方の私情で空気を読まないところ、大好きですが黙ってなさい。

今回は分が悪い……――

赤石賢誠

あっ! そぉーか!
分かった!

小笠原さん! ボクと賭けましょう!!

ボクが勝ったら、レインフォードさんの来訪を許可してください!

カロン・レンドモード

サトミ、私の話を聞きなさい

そんなものに誰が応じると……――

赤石賢誠

レインフォードさんの前世の苗字、当てます!








 はぁ、とカロンが呆れたように頭を抱える。

 



カロン・レンドモード

サトミ。だから、止めなさいと言ってるでしょう

貴方の仲間から聞いているでしょう。
賭けとして使えません

赤石賢誠

え。知ってるんですか?

ていうか、どういう状況で小笠原さんがメンバーのみんなにレインフォードさんの前世の名前を教えるんです?

……嘘は、吐いていないようですね

赤石賢誠

知っててやるなら、それは賭けじゃなくて詐欺です。

別名、イカサマです。

でも、そんなことしなくても分かっちゃいました!

当てる自信、あります!






 テルファートが誇る、天真爛漫な爆裂娘はそう宣言する。



ならば、当ててごらんなさい。

だが、この島に五百を越える苗字がある。

その中から、私から与える機は一度だけだ

赤石賢誠

一発勝負で十分!





 サトミは、ふふん、と得意げに腕を組み。

 鼻を膨らませて、紡ぐ。



赤石賢誠

答えは『渡辺』です!

……

飛騨零璽

驚いてる……
じゃあ、もしかして、本当に言い当てた……?

赤石賢誠

鬼は『渡辺』と言う苗字のお家が苦手なのです。

その昔、悪さを働いた鬼の腕をズバッとやったのが何を隠そう、『渡辺』という苗字の武士でした。


それ以降、この国の二月初旬にある厄払いの行事である『豆まき』は『渡辺』さんのお家では豆まきをしなくてもいいと言うお話があるのですよ!

あるいは、渡辺さんのおうちだけは、鬼も福も内に来いと豆まきをするんです! 


理由も完璧で……――

理由は完璧に違います

赤石賢誠

え……




 小笠原は小さく溜息をこぼす。


ですが、『渡辺』で間違いはありません。

お見事です、異国の魔術師

赤石賢誠

えー……
理由の方が自信あったのに……

じゃあやっぱり、この賭けボクの負けで良いです

飛騨零璽

いや!
勝ちで良いだろ!

 




 零璽はくるりと小笠原と向き合う。



飛騨零璽

これでフィリアさんの入国に関して口を出すことはしないでくれますね。

口約束でも成立するんだろう

何を必死になっているかと思えば。

一緒に居たいのだからついていけば良いだろう。

私がここに居る理由は、お前も一緒に異国へ連れて行けというものだ

飛騨零璽

そ、それは……






 途端に、足元がぐらつくような感覚。


 自分なんかが、一緒に行って良いのか。




 良いとは、思えない。





 絶対に、迷惑になる。





 今回、吸血鬼が意図して狙ってこなかったとはいえ、きっとこれからも狙われるのは間違いない。




 この体質は、何があっても切り離せないだろう。
 自分の人具を扱うには、この体質は必須なのだ。


 でも、それはあんまりにも彼に与える害悪が大きすぎる……――。




 自分の魂は、周囲を巻き込む。




 それは、もう分かっていることだ。

飛騨零璽

俺が行っても、迷惑になるだけだ
一緒には行けない……――








本当なら

自分は一人でいるべきなのだ






独りでいなくては

誰かに迷惑をかける







それでも今まで
一人で居なかったのは







近藤や、汐乃の人達の
優しさや暖かさに
まどろんで甘えてたせい














もう、本当なら







 














汐乃にも

いるべきではない











 







えぇい、面倒臭い!!

何が不満だ!?

前世から想った友に会えたことは分かっただろう!?

何故そこで拒む?!
意味が分からん!!

お前なぞ何度転生してもあの男の後を追いかけるように桜の下で死んできただろうに!!

赤石賢誠

何か、スゴくロマンチックな話っぽいですけど、大事な人に迷惑かけたくないだけなんですよ

カロン・レンドモード

Mr.オガサワラ。
どうしてもこの少年を異国へ放り出したいと言うのでしたら。

その依頼、お受けしましょう

依頼ではない。
これは冥界の王より、貴様への命令だ

カロン・レンドモード

まさか、地獄の住人が魂の想いに心打たれて『自分はこんなに想われたことがあっただろうか』なんて、人間だった頃の青臭い記憶に……――





 小笠原からなぎ払うように放たれた魔力が、カロンへ打ち出された。

 その一瞬、眩い光が視界を埋め尽くす。



 
 
 
 
 

・・・・・!

カロン・レンドモード

そうですねぇ。
ちょっと、お話しませんか?

えぇ、彼らには内密で

良いだろう。
だが、貴様が死した時、覚悟しろ

カロン・レンドモード

えぇ、もちろん。
それまでは好きなように生きさせてもらいますよ

カロン・レンドモード

では、サトミ。
申し訳ありませんが、Mr.レイジを連れて部屋を出ていただけますか。

彼と商談がありますので

赤石賢誠

・・・分かりました。
飛騨さん、別室へ行きましょう。

ボクもお話したいことが出来ました

飛騨零璽

は、はい……

 




 サトミの後を追いかけて、零璽はついていく。

 先に出るよう促され、一足先に部屋を出る。



 そのあとを出たサトミに、カロンは彼女を呼び止めた。




カロン・レンドモード

ちゃんと、口が堅いか確認してから話してくださいね

赤石賢誠

確認しなくても大丈夫です。
強くて優しい人ですから







 そんなやり取りをして、サトミは一礼すると部屋の戸を閉めた。


 スタスタと、彼女は先を行く。




飛騨零璽

あの……話って、何ですか?

赤石賢誠

どうして小笠原さんがレインフォードさんをとっても嫌ってるか、というお話です

飛騨零璽

理由、知ってるんですか?

赤石賢誠

表面は、ついさっき聞きました。
話を聞いて、仕事が嫌になっちゃうぐらい泣きました。

でも、裏側はきっと違います

飛騨零璽

・・・裏側?

 









えぇ、と彼女は頷いて。







赤石賢誠

ボクも、レインフォードさんみたいな男になれたら良いなぁ

 


 彼女は、そう笑った。



エピローグ 生まれ変わっても

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