昔々、この地にある男が居ました。
彼は死の間際、親友である男と約束したのです。
必ず、お前の元へ行く。
そう約束して、死にました。
彼はとても善良で勇敢な男性でした。
なので天国の門を潜りました。
ですが、彼はすぐに転生したいと申し出た。
記憶を残したまま、親友の側に行きたいと願ったのです。
だけれど、天国の神々はそれを許すわけにはいきませんでした。
それは、その男にだけ平等ではない扱いをすることになる。
つまり、特別扱いをすることになる。
困り果てた神々は、どうにか百年、彼の記憶を消そうと彼を天国に住ませました。
しかし、彼は友人の所に今すぐいかなくてはいけないのだと、聞いてくれません。
なので、神々は泣く泣く、勇敢で心優しいその男を、地獄へ突き落としました。
記憶をなくさなければ、辛いのはその男だからと知っているからです。
そこで男は拷問にかけられました。
地獄の拷問は凄惨を極める。
何より、ずっと与えられる苦痛で全身が引きちぎれても、その傷はたちまち治っていく。
大概の魂は、絶望して感情を手放します。
そうやって自我と記憶を、地獄の住人達は消し潰すのです。
繰り返される苦痛により思考を、思想を放棄する。
そうすることで魂達は精神の崩壊を免れようと、その苦痛が自分に与えられるのは当然だと思を受け入れさせる。