勇者とオータの果し合いがあってから数日後

あ、これ。チーズケーキに
よく合うクリームチーズです

あらあら、いつもすみません

こっちは、栗カボチャだろ
そのまま食べても美味いけど

牛乳と砂糖を混ぜて
ジュースにしても美味いだろ

ありがとうごさいます
鈴音もですけど、私も
このカボチャ好きで――

た~まちゃん♪

きゃうう~ん♪

なんでお前らこの上もなく
馴染んでおるんじゃ

   何故か今日も今日とて居るオータ達

確かに勇者めのヤツめは
いつ来ても良いとは言ったが
毎日のように来るでないわ

      そしてそんな状況にも

   即座に我が母は慣れてしまっている

チーズケーキと
カボチャプリンでも
作りましょう

きゃう、きゃうきゃう

はいはい、大丈夫ですよ
たまの分もありますからね

きゃうう~ん

玉藻のヤツめ
すっかり母に
なつきおって

     勇者とオータの果し合いの後

    我と一緒に家についてきた玉藻は

      我が家の一員となっていた

我のおやつを削らなくても
良くなったのは好かったが

完全にペット扱いなんじゃが
魔獣としてそれで良いのか、お前は

きゅきゅ、きゅうう~ん

撫でて欲しいの?

これで、どうかな?

きゃうきゃう♪

       野生の欠片も無く

   お腹を見せて撫でられまくる玉藻

ダメじゃこやつ
早くどうにかしないと

       などと思っていると

      オータのヤツが口を開く

そういえば勇者の旦那は
今日は居ないんですかい?

ええ。今日も仕事――

どうかしましたか?

  にゅっと、どこからともなく湧いて出る勇者

なんで居るの?

待て、淑音!
これには深い訳が!

具体的には?

鈴音の誕生日まで
あと196日しか
ないと思ったら

たまらず帰って来た
自主早退で

そんな理由でいちいち
帰ってこないで下さい!

何故だ! 我が子の
健やかな成長を見逃せ
とでも言うのか!!

見守れていない時に
何かあったらと思うと
心配で心配で

そういうのを
無用の心配って
言うんです

相変わらずっすね

      呆れたように言うオータ

我も呆れるわ

     そんな勇者にオータは言う

実は、勇者の旦那に
相談したい事がありまして

最近、くっ殺姫騎士に
住家を襲撃されまして

お前は真顔で何を言っとるのか

それは災難でしたね

お前も何を言っとるのか

それはひょっとして
ロイエ国の方では?

そういや、そんなこと
言ってましたな

本当におるのか!?

なんじゃ、その国は

       などと思っていると

はっ! 鈴音!
これは大人の話だから
あっちに行ってなさい!

でもお父さんの見える範囲でね
でないと寂しいから

裏の林まで遊びに行ってくるね!

そんな! 鈴音!

行ってらっしゃい、鈴音
でも絶対、危ない所に
行っちゃダメよ

は~い♪

玉藻、一緒に行くよ

きゃう♪

鈴音ーっ!!

今生の別れみたいな
声を出してないで
オータさんの相談に
乗ってあげなさい

貴方の仕事でしょ
この国に訪れた
魔族の人達の相談に乗るのは

鈴音に、ちゃんとお仕事
してる所を見せてあげて

鈴音も、お父さんが頑張ってる所
見たいわよね

うん! 頑張って、お父さん!

うん! 頑張る!

ちょろいヤツじゃ

        などと思いながら

      我は林に遊びに行く前に

      もう一度勇者のヤツを見る

     その表情には、暗い物は無く

   家族のために働く父親の顔をしていた

そういう顔の方がお似合いじゃ

我を殺した後悔の顔より
よっぽど良いわ

それでも、今でも忘れられずに
おるのであろう。じゃから――

いずれ我が魔王の力を取り戻し
教えてやるのじゃ

お前が後悔する必要なんぞないと

       勇者と共に暮らす内に

        芽生えた目標を胸に

         我は林に向かう

行くぞ、玉藻

きゃう

さて、頑張らねばな

なにせ我は魔王にして

勇者の娘なのじゃからな

      こうして我は走り出す

      目指す目標は遠くても

       絶対に辿り着くと

        心に秘めて

それからそれから

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