大丈夫、心配しないで

経次郎

ごめんね、
普通の家族じゃなくて……。

静香

え?

経次郎

パパさんに嫌われちゃったのに、ウチの家族がこれだと、静香も嫌だよね。

普通じゃない家族って、認めた……。

静香

別に、いいわよ……。

静香

パパなら、ママがなんとかしてくれると思うし……。

経次郎

ママさん、なんだかんだで頼りになるからね。

静香

うん……。

37歳であの格好してるって、それだけアレだよね……。
見かけ通りじゃぜんぜんない。

静香

ママが経次郎のこと、気に入ってるんだから、大丈夫よ。

静香

ママの人を見る目、確かだから。

ああ見えて……。

経次郎

さすがママさんだね。

経次郎

ウチにはいないからな……。
そういう人……。

静香

弁慶と海尊じゃ、
アテになんないわよ。

経次郎

合戦なら頼りになるんだけどね……。

あの二人が恋愛で役立つなんて、考えられない……。

静香

「邪魔する」なら
簡単に想像つくけど……。

弁慶

殿!
このおなごはおなごらしくありません!
とっととヒマを出してください。

海尊

珍しくワシも同意見じゃ。
ものっすごく不愉快ではあるがな。

って言われてたの、忘れてないから……。

弁慶

真似をするな!
俺がはじめに反対していたのだぞ。

海尊

反対にはじめも後もあるか。
まっことお前は意味がわからん。

弁慶

このおなごの前に、
お前が出ていけ!

海尊

童(わっぱ)のくせに、
ワシにそんなことを言うのか?

海尊

このおなごを追い出す前に
お前を追い出してやろうかの。

義経

みんなに出ていかれたら
ボクが困るし……。

ヤツがそう言うと、二人がかしこまる。

弁慶

殿をお困りさせるなど、
めっそうもございません!

海尊

お前が余計なことを言うのがいかんのだろうが。

海尊

このおなごを追い出せば
全てが丸く収まります。

義経

おさまんないから。
怒るから。

義経

静はボクが選んだ
側室だぞ。

義経

モンクは受け付けないからな。

海尊

古今東西、
おなごで失敗する偉人は多数おられます。

海尊

このおなごは、
女狐に相違ありません。

弁慶

お側に置けば
よからぬことがあるやもしれません。

普段、仲が良かったわけでもないのに、静を追い出そうって時だけ意見が合ってた。

義経

ボクは偉人じゃないから
失敗する心配はないよ。

あんた、
バカじゃないの?

海尊

むぅ

弁慶

殿になんてことを……。

それ、もっと
ダメでしょ?

義経

え?

偉人でもない凡人なら、
もっと女で失敗するわよ。

義経

そうだね。
やっぱり静は賢いね。

私にそう言い、ヤツは海尊たちの方を向く。

義経

だから、
大丈夫だよ。

海尊

殿……、それ、
ますますダメです……。

弁慶

やはり、
追い出しましょう!

義経

え?

そういう漫才を、よくしていた……。

静香

無理ね。
力になんてなりそうにないわ。

経次郎

そこまではっきり言わなくても……。

静香

あんたのお母さんは?

経次郎

母さんは、仕事人間だし、
恋愛は放任って感じかな?

経次郎

恋愛の相談しても
まともな答えは返ってこないと思う。

静香

お兄さんは?

経次郎

兄ちゃんも二人と同じタイプ。
一緒に反対しそう。

静香

……。

経次郎

あ、でも兄ちゃんは

弁慶

殿!

経次郎

とかって言わないから、

佐助

へ~

経次郎

くらいで終わるかも。

静香

……。

経次郎

でも、「慶子」でけしかけられたら
反対派に回るかも……。

慶子

佐助お兄ちゃん、あの女
悪い奴よ。

佐助

慶子が言うんなら
きっと悪いんだな!

経次郎

なりそう……。

慶子

ふっ

慶子

私にかかればこんなもの
朝飯前にございます。

静香

……。

前途多難?

経次郎

静香……。

静香

何よ……。

経次郎

ゴメンね。

静香

何が?

経次郎

ウチの家族、
変で……。

静香

別にいいわよ。

静香

それで、経次郎の気持ちが、
変わるわけじゃないでしょ?

経次郎

うん。

静香

あんたが私のこと
好きでいてくれるなら……。

経次郎は、私を抱き寄せた。

静香

え?
ちょっと……。

さすがにそれはって思って、離れようとした。

経次郎

ボクは、キミを解放してあげようって、思ってたんだ……。

静香

はい?

もがくのを止めた。

経次郎

義経は「また会える」
って、言っちゃったから。

静香

あ……。

経次郎

義経は、別れようとしてたんだ。
一緒にいると、危険だったから。

経次郎

キミに何かあったら、
ボクは耐えられなかった。

経次郎

だから、ボクの知らないところで、
幸せになってほしかったんだ。

はぁあああ?

静香

殴っていい?

静香

そんなこと言われても、
嬉しくないわよ……。

経次郎

ゴメン。

経次郎

だから、別れを先延ばしにしたんだ。

経次郎

時間が
解決してくれるんじゃないかって……。

静香

解決……できたの?

経次郎

好きって気持ちは
なくならなかった。

静香

……。

経次郎

会えないことが、
淋しくて、辛くて……

静香

うん……。

静香

私も……、だよ……。

経次郎

ホント?

静香

うん。

経次郎

静香、
大好きだよ。

静香

わ、私は……、
別に、大好きって、
わけじゃないけど……

経次郎

そう?

静香

あんた以外のヤツと付き合うと、
あんたが淋しいって言うから、
しかたがなくだから……。

経次郎

くすっ

静香

な、何よ!

経次郎

やっぱりつんデレだなって思っただけ。

静香

はぁ?!

ののしろうとしたけど、経次郎は私をぎゅっと抱きしめた。

静香

……。

経次郎

キミが覚えているなら、
ボクはキミを好きでいるよ。

経次郎

大好き。
静香……。

静香

う……

静香

嬉しくなんて、
ないんだからね!

経次郎

うん。

経次郎は、そのまま顔を近づけてきて……。

静香

え?

と、思っていると……。

ママ

パパ、出ちゃダメ!

という声が聞こえた。

という音がして。

パパ

赦さん!貴様、絶対に赦さんからな!!

パパが怒鳴りこんできた。

経次郎

あ、パパさん。
こんばんはです~w

パパ

トレジャーハンターってことは、アイツの息子か!!

経次郎

ん?

素早く動いていたヤツの動作が一瞬、止まった。

パパ

出て行け~!!!

経次郎

は~い、
そうします~。

と言って、窓から出て行った。

静香

信じらんないくらい速い……。

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