オリハルコンを探しに行きます

ヤツは、あっという間に、下の道路にいた。
2階なんて、ホントに屁でもなさそうだ。

経次郎

……。

そして、私に向かって手を振って、ヤツの家の方に走って行ってしまった。

静香

すばしっこさで勝ったのか?
源平合戦……。

パパ

ダメだダメだ!ヤツとの結婚なんて、絶対に赦さないからな!!!

部屋にいた父が怒鳴っていた。
うるさい……。

パパ

あいつと親戚になるなんて、絶対に嫌だ!!!

父は経次郎のお父さんのことを、知っているみたいだった。

静香

ご近所さんみたいだし……。

どこから聞いてたんだよ!

ママ

はいはい。わかったから、もう寝ようね。明日も早いでしょ。

パパ

あ~、うん。

母になだめられて、父は出て行った。

ママ

明日はお赤飯だよ。

母はこっそりとそう言って、父の背中を押しながら出て行った。

静香

ご近所に配るのだけはやめてほしい……。

静香

それに別に、
何もされてないし……。

静香

はぁ……。

静香

疲れたかも……。

ベッドに入って、横になった。

静香

このまま寝ちゃお……。
お風呂は明日入る……。

今日一日、いろんなことが、ありすぎた……。

静香

また、連絡先、
教えてもらえなかった……。

静香

でも、家族構成とか聞けたし、いっか……。

進歩、できたのかな……。
先に、進めたのかな?

静香

なんかよく
わかんない……。

とにかく、疲れた……。

スマホが鳴った。

静香

こんな時間に、誰だよ。

ディスプレイには、番号だけが出ていた。

静香

こっちは登録してないけど、
向こうは私の番号、知ってるってこと?

嫌な予感はした……。

切れる様子もなかったから、出る。

静香

もしもし

経次郎

あ、静香?

ヤツだった。

静香

何よ……。

突然で、思っていたよりもびっくりした。

静香

予想はしてたけど、心の準備、
心の準備ができてない……。

経次郎

さっき
ゴメンね。

静香

別に……
あんたは悪くないでしょ?

心臓がバクバクしてた。

静香

どうか、バレませんように……。

経次郎の電話に、こんなにドキドキしてるなんて……。

静香

どうして……、
この番号、知ってるの?

経次郎

ママさんから聞いてた。

静香

ママ……。

※個人情報は、本人の許可なく、他人に教えてはいけません。

経次郎

メアドも聞いてるから
あとで送っておくね。

今日、聞いたのか?
イヤ、違うよね。

もっと前から教えてたはずだよね?
そんな暇、なかったもの。

静香

ママ、ああみえて、
計算高いし……。

でも、今回は感謝かな?

静香

今回だけ!

経次郎

明日、迎えに行くから、
一緒に学校に行こうね。

静香

え……?

経次郎

さっき、言えなかったから、
言っとこうと思って。

静香

わ……わかったわよ。
わざわざ言わなくても、

静香

待ってる……、
し……。

経次郎

よかった。

静香

……。

経次郎

大好きだよ。
おやすみ。

静香

おや……すみ……。

経次郎

……。

なんなんだよ!
ほんとにもう!!

通話が終わっても、ずっとスマホを握ってた。

静香

ほんっと、
ばっかじゃない?!

でも、スマホを握っていた。

静香

いいのかな?
こんなに幸せで……。

なんかヤツにはもっと何かありそうな気がしないでもない……。

静香

っていうか、絶対に何か不幸なことがありそうで怖い……。

静香

その時はその時。

静香

……。

経次郎の連絡先を登録した。

静香

うん。
これでよし。

明日が待ち遠しかった。

そのままスマホを握り、目を閉じた。

静香

え?何?

着メロに驚いて、握っていたスマホの画面を見た。
さっき、ヤツの電話を登録したときの曲だった。

静香

スマホの誤作動?

まずそう思ったんだけど、落ち着いてみたら、ヤツから着信があった。

静香

なんだ?

そう思いながらも、出た。

経次郎

ごめん、静香。
寝てた?

静香

ううん……。

寝てたような起きていたような、うつらうつらしている状態だった。

けど、時計を見ると、思っていたよりも時間が経っている。

経次郎

時間がないから
要点だけ言うよ。

静香

え?

経次郎

父さんと、オリハルコンを探しに行くから、明日、一緒に学校に行けなくなった。

静香

はぁ?!

オリハルコン?
なんだそれは?!

経次郎

迎えに行くって言ったのに、
ごめんね。

経次郎

明日は無理だけど、
絶対に行くから。

静香

え?
ちょっと……。

静香

何の音?

経次郎

ヘリ来たから、
切るね。

静香

ヘリ?

経次郎

愛してるよ。

プチっ

電話が切れた……。

プー、プー

どこに行くんだ?
それに、

静香

どさくさにまぎれて、何言っちゃってるのよ!

その後、気が気じゃなくて眠れなくなってしまった……。

次の日、学校に行こうと門の前で、少しだけ待っていた。
すると、ママが出てきた。

ママ

あらら?
経次郎くんは?

静香

オリハルコン、
探しに行くんだって。

ママ

え~、せっかく静香ちゃんがこんなに早く待ってるっていうのにぃ~。

静香

あいつを待ってる
わけじゃないわよ。

ママ

素直じゃないんだから。
そういうところ、パパそっくり。

静香

嬉しくない……。

ママ

か~わい~w

静香

待ってても来ないから
行ってくる。

ママ

そぉ?
気を付けて行ってらっしゃい。

静香

行ってきます。

門を開けて、道路に出た。

ママ

ねえ、
オリハルコンって、何?

静香

知らない。

静香

ホントになんなのよ!
オリハルコンって!!

ヤツは来なかった……。

静香

とっとと別れようかな……。

静香

いや、待て、早まるんじゃない。
何年待ったと思っているの?

静香

800年よ、800年。
ふざけんじゃないわよ。

戻ってくるまで、とりあえず保留にしておこう……。

静香

落とし前、つけさせてやる……。

オリハルコンを探しに行く経次郎の話
「八百年前の忘れ物」はこちら↓です。

※静香の話はこのまま続きます。

オリハルコンを探しに行きます

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