凜音(りいん)

 ♪~

 聞き慣れないメロディ。

周音(あまね)

 あれ……?

 そのはずなのに。

周音(あまね)

 涙……? 私……泣いてる?

 どうして懐かしいのだろう。

凜音(りいん)

 だって、あたしが作った歌だから。
 あなたの生まれる、ちょっと前にね。

 いつの間にか、私は抱きしめられていた。小学生のものであるはずのその腕は、とても大きく、暖かかった。

凜音(りいん)

 正直、細かいことはあたしにもわかんないんだ。一生懸命だったから。気がついたらあたしは凜音だった。

周音(あまね)

 ……。

凜音(りいん)

 信じてくれる?

周音(あまね)

 ……でも……。

 ふと彼女の右手が目に映った。みずみずしい手の甲には、微かではあるけれど、大きな傷痕が残っている。これだけの傷を負いながら、幼いはずの彼女は涙一つ見せなかった。

周音(あまね)

 ……その傷……。

凜音(りいん)

 ああ、これ?

 言いながら、彼女は左手で傷を撫でる。

凜音(りいん)

 守りたかったの。そういうこと。

周音(あまね)

……あ……。

 バランスを崩してよろめいたところに、ちょうど凜音ちゃんがいて、覆いかかるように倒れてしまった。

 バランスを崩してよろめいた■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。

 バランスを崩してよろめいた私のことを、お母さんは、自分が傷を負うのも構わず、守ってくれていた。

周音(あまね)

 ……あ……うあ……。

周音(あまね)

 ぅああああぁぁああぁあああぁ

凜音(りいん)

 ……。

 泣きじゃくる私を、お母さんは、ずっと抱きしめていた。

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