周音(あまね)

 で、何をしてたのかな?

凜音(りいん)

 あー……。

 床に広がっているのは、家族のアルバム。テレビ台の扉も開いている。でも、他に何かが開けられた様子はない。

周音(あまね)

 人の家の戸棚とか勝手に開けちゃダメって教わったでしょ? まず断ってよ。

凜音(りいん)

 ……。

周音(あまね)

 でも……なんでアルバム?

 うちのアルバムには、凜音ちゃんや之愛さんの写真はほとんどない。あったとしても、ただのアルバムは小学生にとって退屈だろう。それでも、部屋の他のものが漁られた形跡は見当たらなかった。まるで、最初からアルバムそのものが目的だったような。

周音(あまね)

 アルバムを漁る理由……。

 もしかして。

周音(あまね)

 エクストリーム・へそくり探し!?

凜音(りいん)

 違う! へそくりは額縁の裏!

周音(あまね)

 えっ。

 お茶のトレイを下ろし、言われるままに壁の額縁をめくる。果たしてそこには、いかにもお札の入っていそうな封筒が貼り付いていた。

周音(あまね)

 わーすごい! 本当にあった――

周音(あまね)

 じゃーなーくーてー! なんでアルバム見てたの!? なんでへそくり場所知ってるの!?

凜音(りいん)

 あたしが隠したから。

周音(あまね)

はぁ?

 どこの小学生が隣家にへそくりを隠すのだろう。

凜音(りいん)

 周音、全部話すから。落ち着いて聞いて。

周音(あまね)

 いやもう何がなんだか……。

凜音(りいん)

 あたしは、凜音であると同時に、あなたの母親の巡海でもあるってこと。

 えっと、それは。

周音(あまね)

「アイムユアファーザー」
「ノオオオオ!」
ってやつ?

凜音(りいん)

 落ち着いて聞け!

周音(あまね)

 それ小学校で流行ってるの?
 前前前世ごっこ?

凜音(りいん)

 落ち着けってば!

周音(あまね)

 ごめんねーあまねーちゃん流行に疎くてノリきれなかったよー。

凜音(りいん)

 ……いたしかたない。

 わずかな時間の後、凜音ちゃんの唇が開いた。

凜音(りいん)

 ♪~

周音(あまね)

 え……!?

 

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