林を抜けた先にある人気のない草原
オータに連れられた我は
今そこに居た
林を抜けた先にある人気のない草原
オータに連れられた我は
今そこに居た
悪かったな、嬢ちゃん
いま降ろしてやるからな
……ふぅ。やはり自分の足が
地についている方が落ち着くの
きゅきゅ♪
同じようにリザに降ろされた玉藻が
機嫌好さ気に我に擦り寄って来た
調子の良いヤツじゃ、こやつめ
きゃう~
呆れるような気持ちで
玉藻に憤慨していると
露骨に媚びてくる
こやつ、喋れんだけで
もう知恵を付けて
おるのではないじゃろうな
きゃうん~
我がいぶかしんでおると
すっとぼけるように腹を見せて寝転がり
害のない小動物アピールをしてくる
あまりあざといと
可愛さが半減するぞ
きゅ!?
ぼそりと呟いた我の言葉に反応し
固まる玉藻
お主あとで「お話」があるからの
きゃう~
尻尾を丸める玉藻
それはそれとして
今はそれよりも気にしなければならない事が
勇者には、もう手紙が
届いてる頃だな
うん。少し前には届くように
調整して手配したから
この子を探すのに手間取ったから
少し遅くなっちまったな
勇者相手に我の弔い合戦を
しようとしているこの三人を
どうすれば良いのか思い悩む
とにかく止めねば
あの親バカな勇者が
娘である我がさらわれた
などと知れば――
殺す
などという事にもなりかねん
どうにかせねば~
などと戦々恐々していたが
既に時は遅かった――
…………
リザ。勇者に手紙が届くのは
予定だと今からどれぐらい前だ?
え? 十分ぐらい前じゃないかな?
勇者の勤め先からは
相当距離が離れてるし
まだまだ来ないよ
それに、ここに来る前から
探査系魔法起動してるけど
別に何もな――
リザが言い終るよりも早く――
ゴンザ!!
分かっただろ
悪友同士の阿吽の呼吸でオータとゴンザが動く
アーエリス(大気よ)
ウーティネクスプ(難攻不落の)
ナビリィス(如くあれ)
簡易詠唱により強化した防御結界を
ゴンザは自分達と我の周囲に張り
プニュス(我が拳は)
デトナート(爆破する)
ゴンザの張った防御結界から
跳び出したオータが
一足飛びに十数メートル先の
何も無い筈の場所に拳を叩き付ける
簡易詠唱により強化した爆裂魔法が炸裂
爆圧と爆炎を
見えない壁に目掛け叩き付けた
ちっ!!
爆拳を放つと同時に
オータはその場を跳び退く
それとほぼ同時に
未だ残っていた爆炎は――
突如現れた不可視の斬撃に切り裂かれ
跡形もなく消え失せた
代わりに現れたのは――
やりますね……
今生の我が父である勇者であった