公園に二人の男子の姿があった。その一人、藤松紅はブランコで目を閉じて黙っていた。彼は今、考え事をしている。
公園に二人の男子の姿があった。その一人、藤松紅はブランコで目を閉じて黙っていた。彼は今、考え事をしている。
今はこう亀裂が入ってるけど、元に戻るよね。僕と鮫野木くん、藤松くんに小斗ちゃんと一緒に居る時みたいに
……
凪佐は藤松に話しかけようとしたが、空気を読んで声をかけなかった。
今は集中してるな
こんな事、今までなかったのに……
その様子を見ている、凪佐新吾はあることを思い出していた。
そういえば、もう一年経つのか
僕が、この学校に転校したのは去年の五月ぐらいになる。あれからもう一年が経った。本当、最初の頃は緊張した、不安もあったな――
おーい、聞け。今日はうちのクラスに転校生が来たので紹介するぞ
さて、入ってこい
鬼灯先生に呼ばれて、僕は騒がしい教室に入る。
視線が凪佐に集中する。流石に緊張する。
は、初めまして、凪佐新吾です
カワイイ
女の子みたい
……
友達できるかな、みんなは優しそうだけど
お前らの気持ちは十分わかったから、黙れ
自己紹介が終わると、僕は用意された席に座った。
その後は授業の終わるたびに質問攻めだった。みんなフレンドリーに接してきてくれる。けど、このクラスには僕と同じ趣味を持つ人はいないそうだ。
何度か目の昼休みに質問されていたとき、遠くから声が聞こえた。
それでさ、マジ神アニメなんだぜ
はいはい、神ですね
……!?
僕は慌てて、聞き耳をたてた。
今期のアニメのダークホース、無双ガールズはな……
あのアニメか、確か監督が……
僕も知っているアニメの話をしている。けれど、ここからじゃ、良く聞こえない。僕はどうしてもアニメについて話したかった。
だから勇気を出してアニメの話をしている。三人に話しかけた。
僕も、無双ガールズ好きだよ……
おお、転校生。わかるか! それで、転校生無双ガールズの何処が好き?
……えっ、えーと。レッカの変身後の衣装が好きだよ
そうか! 良いよなレッカたんのゴスロリ。後、ツンデレがたまらんよな転校生
う、うん
鮫野木の勢いに流石に少し引きそうだった。
もう、転校生じゃなくて凪佐新吾くんでしょ。ごめんね
私は小斗雪音、こっちの失礼なのは鮫野木淳くん
失礼とは何だ。まぁよろしく
鮫野木はこんな奴だが、よろしくな。俺は藤松紅
お前ら酷くない
あっ、この感じ好きだ。前の学校の友達と雰囲気が似ている。あの時もこんな感じに集まって喋っていたな。
ふふっ、よろしく
おう! よろしくな
この日を境にみんなと仲良くなった。コスプレの事も三人にしか話していない。
……おーい、凪佐。聞こえているか?
あっ、ごめん。何?
ああ、立ってないで座ったらどうだ? 疲れてないか?
うん、そうする
凪佐は近くのベンチに座った。
なぁ。凪佐、あの時、止めてくれてありがとな
…………
お前が途中で止めなかったら、俺、鮫野木の事、殴ってたかもしれない……
それで、お願いなんだが、アイツが帰ってきたとき……その、一緒に謝ってくれないか?
藤松は恥ずかしそうに頼んだ。
うん、一緒に謝ろう
僕は嬉しかった。また、みんなと仲良く普段通り学校に通いたいたいな。そして、みんなとコスプレしたいな。
凪佐は公園を眺める。