目の前に建っているのは、廃墟ではない。俺が入ったのは廃墟だった。そのはずだった。

鮫野木淳

……家だ

野沢心

何いってるんですか? バカなんですか?

鮫野木淳

バ、バカちゃうわい

野沢心

あっ、そうですか


 態度が悪い。女の子は鮫野木を通り向け、廃墟だった建物に入ろうとした。

鮫野木淳

ちょと待て、ボクっ娘。その家は、お前の家なのか?

野沢心

そうですけど、何ですか? 余りしつこいなら警察呼びますよ

鮫野木淳

……警察

野沢心

それと、僕のこと、ボクっ娘って呼ばないで下さい。野沢心(ノザワココロ)と言う名前があるんです

鮫野木淳

……野沢心

野沢心

用がないなら、帰って下さい

 そう言い残すと、野沢は扉を開けて家に入った。

鮫野木淳

ちょと

鮫野木淳

あー訳わかんね

 鮫野木は頭をかきながら、丘を下り始めた。鮫野木の後を追って、 丘を下りる。

 鮫野木達は近くにあった公園に集まっていた。全員で今起こっている事を整理し始めた。

小斗雪音

みんな落ち着いてる?

藤松紅

俺は少しは落ち着いたさ、しかし、俺達が廃墟に入って十分も経っていないはずだ。だがこれはどういう事だ?

凪佐新吾

もしかして……タイムスリップ? したとか?

小斗雪音

そんな、そんな事あり得るんてすか?

凪佐新吾

僕も考えたく無かったよ。でも、それぐらいしか……思い浮かばなくて

 凪佐は自信なさげに話した。

藤松紅

もしかしたら、あり得るかもな

鮫野木淳

フフっ、ハハッ


 鮫野木は気味悪く笑った。

藤松紅

おい、笑ってる場合じゃないぜ

鮫野木淳

……良く、お前ら冷静でいられるよな

藤松紅

おい! 何だその言い方は

鮫野木淳

うるさいな……


 鮫野木は覇気がなかった。それに苛立ち、藤松は鮫野木に近づいた。

鮫野木淳

何だよ。そもそも、お前が廃墟に行くなんて言わなきゃ、こんな事にならなかったのにな、ハハッ

藤松紅

てめぇ、それを今言うか?

鮫野木淳

……悪いかよ

凪佐新吾

止めてよ。今は喧嘩は良くないよ

鮫野木淳

……そんだな


 鮫野木は歩き出した。

鮫野木淳

帰る……

藤松紅

おい、鮫野木!

鮫野木淳

……

 鮫野木を追いかけようとした藤松を小斗が呼び止める。

小斗雪音

藤松君、淳君は私がどうにかします。だから……

藤松紅

……わかった。それと時間をくれ、一時間ぐらい、ゆっくり考えたい

小斗雪音

わかった

凪佐新吾

僕もここに居るから、行ってやって

小斗雪音

うん、止めてくれてありがとう


 小斗は鮫野木を追いかけていった。公園には藤松と凪佐が残っている。
 藤松は公園のブランコに座り考え込んだ。

鮫野木淳

……

 たく何なんだよ。どうしてみんな冷静でいられるんだよ。何で廃墟が家になってるんだ? 廃墟には十分ぐらいしか入っていないのに日が昇っているんだ?
タイムスリップ? アニメじゃないぜ。

六十部紗良

あなた、ちょと良い?

 考え事をしながら歩いていたら。長い黒髪をキレイに整えた。同い年ぐらいの美少女が話しかけてきた。

鮫野木淳

あっはい

 突然、話しかけられた事と彼女があまりにも美しさに声が裏返った。

鮫野木淳

この俺が三次元の女にときめきそうだと!

六十部紗良

あなたは、この世界の住人?

鮫野木淳

!? この世界の住民?

鮫野木淳

それはどういう意味ですかな? アハハ

六十部紗良

違うのらな良いの、あなたもこの世界に来てしまったのね

鮫野木淳

美人かと思えば電波でしたか

 彼女は悲しそうにしているが、俺はどうして良いのか、わからないでいた。

 俺はどうしたら良い?

エピソード5 裏の世界(1)

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