うぅ、これがあの勇者とは
情けない……

はっはっは、どうした鈴音
お父さんと会えて嬉しいか

お父さんはお前に会えなくて
寂しくて寂しくて寂しくて
泣いちゃいそうだったぞ

朝仕事に出かけてから
5時間も経っておらんわ

  父親以前に勤め人としてどうなんだお前は

お父さん、お仕事は?

      元宿敵以前に現娘として

   突っ込まざるを得んので突っ込んでみれば

そんなの決まってるじゃないか鈴音
追い縋る部下をちぎっては投げ
ちぎっては投げあと序でにぶっとばして

お家に帰って来てるんだぞ
お父さん

イイ笑顔で言う事じゃないわ~

    呆れて物も言えんとはこの事か

   気のせいか頭が痛くなってきたので

       うなだれていると

どうした鈴音
そんな浮かない顔をして

よし! 元気が出るように
お父さんが遊んでやろう!

えっ、ちょ、お父さん待っ――

        止める暇さえなく

そーら、高い高ーい!

ひいぃぃぃっ!

        気が付けば

     周囲は全て空の青だった

高すぎるわ馬鹿者ー!

        勇者のヤツめ

    自分の力の大きさを考えないで

       幼女でしかない我を

    思いっきり空に向け投げ上げよった

ふっ。まるで人が
ゴミのようではないか

などとのんきなことを
言っとる場合ではないわー!

        混乱のあまり

     思わず一人ノリツッコミが

いかん。このままでは

なことになってしまう
ではないかー!

   などとジタバタ空で足掻いてみたものの

    幼女な我に出来る事などありはしない

こんな事で2度目の生が
終るのかーっ!

何かいま嫌なものが
脳裏に浮かんだー!

こんな走馬燈は嫌すぎるわーっ!

   などと、バタバタしている内に

     ふわりと我は受け止められた

どーだい、鈴音
楽しかったかい?

危うく高い他界に
なる所であったわ
馬鹿者ー!!

     一先ず無事に戻れた安堵に

  声には出せずに心の中で罵倒していると

そーかそーか
言葉にならないほど
楽しかったか

うんうん。何も言わなくても
鈴音の事はお父さん
なんでも分かるぞ~

根拠のない自信を
持つのは止めろーっ!

   我の心の叫びなんぞ分かる訳もなく

よしっ。また高い高いしてやろうな

   勇者のヤツめは全く懲りなかった

た~す~け~てーっ!

   プライドが邪魔して心の中でしか

     助けを求められないでいると

       救いの主はやって来た

なにやってんですかアナタ!

お~か~あ~さ~ん

    勢い良くやって来た勇者の妻

   つまりは今生の我が母がやって来る

まったく。鈴音が
嫌がってるじゃないですか

   ひょいっと勇者から我を抱き寄せる

淑音《しとね》。なにをするんだい
折角、鈴音と遊んでいたのに

アナタのそれは
鈴音と遊ぶじゃなくて
鈴音で遊ぶでしょ

まったくもぅ。鈴音が
怯えちゃってるじゃないですか

分かっておるではないか

     思わず満面の笑顔になる我

我が魔王としての力を
取り戻した暁には
名誉幹部として扱ってやろう

あらあら。機嫌は治ったの?

      にこやかに微笑みながら

     ちょんと額を当てる我が母に

へへ~。うん♪

     親愛を込めて我は頬を寄せる

  これぐらいの褒美はくれてやっても良かろう

ああっ、淑音ずるいぞ!
俺にも鈴音とのスキンシップを!

しなくて良いです

それよりもお仕事はどうしたんです
まだ帰って来るには早いでしょ

俺の内なる鈴音パワーが
欠乏したのでぶっちしてきた

そんな事でいちいち
帰ってこないで下さい!

そんなことってなんだ
俺には死活問題だぞ

お仕事サボって
生活費が入らない方が
死活問題です

とっとと戻って仕事に励んで下さい

そんなっ! 慈悲を!
せめて、せめてあと
10時間の猶予を!

日が暮れてます

さ、鈴音。お母さんと一緒に
お昼ごはん後のデザートを
食べましょうね

あ、黒ゴマ餡蜜黄粉団子が良いな

アナタの分なんてありません!
さっさと仕事に行ってきなさい!

  妻にたしなめられる勇者を見ながら我は

ふぅ……なんでこうなった

  色々と、この世の不条理に気がめいる

いや……理由など分かっておる

全てはあの邪神めが
クサレ邪神のヤツが
悪いのじゃー!

      そもそもの元凶たる

   邪神の事を思い出し憤慨していた

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