レインフォード・フィリアは無粋にもノックなしで扉を開けてき女性に笑いかけた。
齢十七であれば一端のレディーとして扱うべきだが、彼女はいかんせん、女性というよりサバサバした男子のようなのだ。
服装は使用人のバトラーと同じ格好。
これが彼女が一番気に入っている服らしい。
細い体躯に絶壁の胸が幸いし、男ものでも胸元は窮屈ではなさそうだ。長い黒髪を後ろで束ねているが到底、女には見えづらかった。
だがしかし、この身形でありながらレインフォードの護衛なのだ。
しかも、今回は護衛の中でもリーダーとして任務についている。
彼女はその年齢にみあわず博識で天才児と謳われる『赤石の悪魔(メデゥーサ)』と言われている巷では超がつくほどの有名人だ。
恐らく国王の子息達よりもずっと有名である。
彼女はその天才を買われ、テルファートでは『ギルド』という依頼請負所に属している。
ギルドは化け物退治から護衛引き受けまで何でも色々やっている、いわゆる何でも屋的な人材派遣業者だ。
彼女はギルドマスターの補佐も勤め、異国の神が守護神をしているという飛んでもない話まであるほどだ。
だが、そうでなければ彼女の行使する魔法には納得いかない者が多いのもまた事実だった。
中でも彼女が得意とする魔法は大量の魔力を消費すると言われている上位火炎魔法の『爆発魔法』だ。
しかし、彼女は爆発を引き起こすのに魔力をほとんど使用せずに敵を爆発に巻き込み、倒している爆裂娘。もしくは爆発娘なのである。
危険人物で間違いないが、善人な人柄がギルドでは聖女と見なし、国王も一目置く少女。
レインフォードも予々噂は聞いていたが、今まで警護を依頼していたギルドから彼女が派遣されたのは初めてのことだった。