リムさんの話だと、
ニーレさんの病気を治す薬を作るには
シロタイヨウゴケというキノコが必要らしい。

そしてそれがあるのは、
町の先にある遺跡だとのこと。

でもエルムくんは遺跡と聞いて狼狽えている。
なぜなんだろう? 
 
 

トーヤ

エルムくん、
遺跡には何か問題でもあるの?

エルム

その遺跡は別名『帰らずの遺跡』
と呼ばれています。

トーヤ

帰らずの遺跡っ!?

リム

そうだ、一度入ったら
二度と戻れないと言われている。
特異な能力を持たない平民以下は
代々そう教えられる。

クロード

つまり今の話し方ですと、
そこには虚と実が
混じっているということですね?

リム

お前、賢いな。その通りだ。

クロード

いえいえ♪

 
 
クロードは得意気な顔をしていて嬉しそう。

でもみんなが思っている以上に
クロードって頼りになるし、
知識も行動力もあるんだよね。


――いつも助けてくれてありがとう。
 
 

リム

あの遺跡は超古代魔法文明が
作り出した遺跡だ。
ミスリルの発掘を進めていくうち
偶然に発見された。

サララ

二度と戻れないというのは
中が迷路にでも
なっているのでしょうか?

ライカ

凶悪なモンスターが
守護している可能性もありますね。

リム

どちらも正解だが、
迷路という点に関しては
イメージ以上に酷いかもな。

カレン

どういうことです?

リム

遺跡の中は異空間と言っていい。
空間の歪みを利用して構築された
無限の迷宮なんだよ。

トーヤ

無限の迷宮っ!?

 
 
それを聞いただけで嫌な予感しかしない。


限りない迷いの宮――。

きっとそのままの意味だよね?
表からの見た目以上に
内部は広大だってことなんだよね?
 
 

クロード

待ってください。
例え無限に広い迷宮だとしても
帰れないのはなぜですか?

クロード

だってある程度の範囲なら
マッピングなどで把握できます。
それを見ながら引き返すことは
可能なんじゃないですか?

リム

ほぉ、やっぱお前、賢いよ。
助手にならないか?

クロード

ありがたいお申し出ですが、
お断りします。
私にはすでに仕えている主人が
おりますので。

リム

こいつらか?

クロード

いえ、トーヤたちは仲間です。
それとは別の絆で
結ばれているのですよ。

トーヤ

クロード……。
僕もクロードのこと、
大切な仲間だって思ってるよ!

クロード

トーヤっ!

 
 
 

 
 
僕とクロードは思わずハグをした。

でもすぐにオーガみたいな強大な力で
カレンに引き離されてしまう。


しかも涙目で僕の方を睨んでいるし……。
 
 

カレン

トーヤ、
そんなことしちゃダメ……。

トーヤ

あ……うん……。
なんかゴメン……。

サララ

で、リムさんの話から推測すると
何か引き返せない理由が
あるってことなんですよね?

ライカ

一方通行のトラップでも
仕掛けられているのでしょうか?

リム

遺跡に入るたびに構造が変わる。
だから無限の迷宮と
呼ばれているんだ。
脱出の術を持たない者が入れば
餓死するかモンスターの餌食さ。

リム

だから平民以下には
近付かないように教えられている。
ま、中民以上でも
死ぬヤツは死ぬが……。

トーヤ

そんな危険な場所なんですか……。

クロード

でも脱出する術はあるんですよね?

リム

まぁな。
つまり二度と戻れないというのが
虚だというわけだ。

カレン

リムさんは脱出する方法を
ご存じなのですね?

 
 
カレンの問いかけに、リムさんは大きく頷いた。


そして本棚の中から一冊の古い本を取り出し、
それをパラパラとめくって
特定のページを開く。

そこには古代文字らしきものと
何かの羽のようなもののイラストが
描かれていた。
 
 

 
 
 

 
 
 

 
 

リム

この『狭間の羽』という
アイテムを使えば
入口に戻ることが出来る。
古代魔法を研究していた学者が
製法を確立したらしい。

トーヤ

それって僕たちでも
手に入れられるんですか?

リム

あぁ、もちろんだ。
なぜなら私が作れるからな。

トーヤ

えぇっ!?

リム

ただ、魔法力を大きく消費するから
一度に作れる量には限りがある。
6つが限界だろうな。

 
 
6つか……。

僕とカレン、クロード、ライカさん、サララ。
うん、人数分は用意してもらえる。
予備の1個は誰が持った方がいいんだろう?


その時、エルムくんが一歩前へ歩み出る。
 
 
 
 
 

エルム

僕も連れていってください!
お願いしますっ!
姉を……姉ちゃんを助けたいっ!

 
 
 
 
 

リム

やめておけ!
エルムは何の力も持たない下民だ。
足手まといにしかならん。
大人しく家で待っていろ。

トーヤ

えっ?

エルム

…………。

 
 
エルムくんは唇を噛み、俯いて黙ってしまった。
瞳には大粒の涙を溜めている。

まさか彼が僕と同じ下民だったなんて……。
 
 

リム

どうやらトーヤたちは
ニーレとエルムが下民であることを
知らなかったようだな。

リム

ま、隠していて当然か。
身分制度がなくなったとはいえ
ここは王都から遠く離れている。
差別も多く残っているからな。

リム

そのことを言わなかった2人を
許してやってほしい。

トーヤ

あ……えぇ……。

リム

それにニーレの病気は、
身分による差別が
原因の一端でもあるのだ。

トーヤ

えっ?

 
 
下民であることと病気に関連があるの?
もしかして下民だけが感染する病気なのかな?

もしそうなら、僕にとっても他人事じゃない。


でもリムさんの言い方だと、
下民そのものというよりも
差別という行為に問題があるような感じだ。


これはどういうことなんだろう?
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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