果てしなく広い教会に待機させられてしまった。
狭い店に居すぎたせいか、こういった広い場所というものはなんだか落ち着かない。
新しい猊下。
新しい教皇。
新しい「アヴァター・キリアサンタ」
まず第一に、アヴァター・キリアサンタとは一体何ものなのか、というところから説明しなければならない。
彼は、ん百年前にこの地に降り立った「人間」だ。
人間というものは、幻獣を除いて一番地位の高い存在だ。それは「平和」を謳ったアヴァター・キリアサンタが、幻獣を除いて未だ頂点に立っているということで明らかだろう。
人間が謳う「平和」なんていうものは「人間が頂点に居たいがための戯言」にしか過ぎない。
人間なのにどうしてこんなにも長生きなのかというところもまず疑問だろう。
いや、こちらは単純な話だ。
アヴァター・キリアサンタは魂だけの存在だからだ。
体は老いる。それはどの生物でも同じだ。永遠なんていうのは絶対に有り得ない。だからこそ俺の存在は「可笑しい」とこの世界で認識されてしまうのだ。
おかしいといえども、俺には寿命というものが存在するが。
そして有り得ない事象には「奇跡」であると持ち上げられる。持ち上げられた結果があの「アヴァター・キリアサンタ」なのだ。
彼は肉体が死ぬたびに新しい寄り代を経て復活する。
人間は「アンノウン」と呼ばれる能力を持たないものが多いはずなのに。
いや、これは「先代の書庫」が更新されていないだけであって、「アンノウンという能力も存在する」というのが正しい。
魂だけを生きながらえさせる能力、それがアンノウンという解明されない能力を持つアヴァター・キリアサンタの絶対的権力だ。
……というのが現在この国においての認識になっている。
有り得ない能力であるというのは百も承知、なのだが現実本当にアヴァター・キリアサンタの魂は「在る」。そうやってこの国は何百年もの間、平和で有り続けたのだから。
と、アヴァター・キリアサンタについて思い耽っていると、コンコンとノックをする音、そしてギイ、と重ための扉が開く音がした。