僕たちはエルムくんと協力して
部屋の片付けをした。
そしてそれが終わった直後にニーレさんが
買い物を終えて戻ってくる。
みんなで一緒に片付けをやっていたから
ニーレさんは僕たちを見て
目を白黒させていたけどね。
その後、経緯を話して
ようやく事態を把握してくれたみたいだった。
ひたすら平謝りされたけど、
僕たちは手伝いたくて手伝ったんだもん。
むしろ気を遣わせちゃって悪かったなぁ……。
僕たちはエルムくんと協力して
部屋の片付けをした。
そしてそれが終わった直後にニーレさんが
買い物を終えて戻ってくる。
みんなで一緒に片付けをやっていたから
ニーレさんは僕たちを見て
目を白黒させていたけどね。
その後、経緯を話して
ようやく事態を把握してくれたみたいだった。
ひたすら平謝りされたけど、
僕たちは手伝いたくて手伝ったんだもん。
むしろ気を遣わせちゃって悪かったなぁ……。
――それでみんなで
今夜のことを相談したんですけど、
エルムくんは僕とクロードの部屋で
過ごしてもらうことにしました。
ニーレさんは私たちの部屋ね。
えっ?
部屋の広さに余裕がありますし、
そうしましょうよ。
で、でも……。
廊下やキッチンじゃ
ゆっくり休めませんよ。
事情を知らずに二部屋お願いした
僕にも責任がありますし。
なんならチップを差し上げますので
そうしていただけませんか?
チップだなんてそんなっ!
とんでもないですっ!
もしかしてお節介すぎましたか?
どうしても嫌なら
これ以上の無理強いはしませんが。
嫌ではないんです。
すごくありがたい申し出です。
ただ、お客様に甘えてしまうことが
申し訳なくて……。
袖すり合うも多生の縁って
言うじゃないですか。
気にしないでください。
姉ちゃん、
みんないい人たちだよ。
お言葉に甘えようよ。
エルム……。
ニーレさんは難しい顔をしながら考え込んだ。
それから少しの間が空いて、
満面に笑みを浮かべて僕たちの方を見やる。
ではっ、お世話になりますっ!
その返事を聞いて、
僕たち全員も途端に笑みがこぼれたのだった。
それから数時間が経過し、夕食の時間になった。
僕たちはダイニングに移動して席に着く。
テーブルの上にはたくさんの
美味しそうな料理が並べられていて
辺りにいい匂いが漂っている。
見ているだけでヨダレが湧き出してきたっ♪
豪華な食事ですねっ!
いえ、大したものは出せなくて
むしろ申し訳ないです。
でも最大限に腕を振るいました。
ご満足いただけると良いのですが。
ニーレさんとエルムの席は?
あ……っ!?
確かにカレンの指摘した通り、
ニーレさんは食卓には着かず
横に立っているだけ。
エルムくんはダイニングに来ていないし、
どうしたんだろう?
私たちはのちほどいただきます。
お客様と一緒というわけには
いきませんので……。
一緒に食べましょうよ。
その方が食器の片付けだって
楽ですし。
そうですよ、遠慮なさらずに。
ルームメイトなんですから。
でも……。
みんなで食べた方が
絶対に美味しいですよ~♪
では、お言葉に甘えさせて
いただきます。
ニーレさんは頬を緩めて同意してくれた。
今回は同じ部屋で過ごそうって誘った時より
返事が早くなった気がする。
少しは距離が縮まったのかな?
もしそうだったら嬉しいな。
エルム、
廊下で聞いていたんでしょっ?
早くこっちに来なさいっ!
はいぃ……。
カレンの大声にビクつきながら、
エルムくんがひょっこりと顔を出した。
抵抗することなく素直に言うことを聞いている。
――ふたりって本当の姉弟に見えるなぁ。
ニーレさんとは違うタイプのお姉さんだから
エルムくんには戸惑いもあるかも。
でもカレンの優しさを分かっているみたい。
ニーレさんとあんたの分の
椅子を持ってきなさい。
言うことを聞かないとゲンコツよ!
すぐに用意しますっ!
エルムくんは慌てて椅子を取りに行った。
その姿を見て、
この場にいた全員が思わず声を上げて
大笑いしてしまったのだった。
その後、ニーレさんとエルムくんが
席に着いてから食事が始まった。
うん、おいしいや。
ニーレさんは料理が上手ですね。
いえ、そんな……。
でもお褒めいただいて嬉しいです。
ホント、すごくおいしい。
このスープは
独特の香りと味付けですね。
うま味があるし、温まります。
このスープの味付けには
豆と塩で作った発酵調味料を
使っているんです。
体にもいいんですよ。
香りが苦手だという方も
いらっしゃいますけどね。
私は好きな味ですよぉ。
はい、私も。
ただ、塩分には気をつけた方が
いいかもしれません。
ですね。私もそう思います。
さすがライカさんとカレンは
こんな時にも冷静に分析するなぁ。
職業病みたいなものなのかも。
僕も他人のことは言えないんだけどね。
だってこのスープに入っている緑色の具が、
気になって仕方ないんだもん。
あの、ニーレさん。
このスープの具って何ですか?
コケっぽいですけど。
それは『タイヨウゴケ』です。
名前にコケと付いていますが
キノコの一種です。
アンカー地方の特産なんです。
へぇ、そうなんですかっ!
タイヨウゴケについて
もう少し詳しく聞かせてください!
あはは、トーヤのスイッチが
入っちゃったみたいですね。
みたいねっ♪
昔は貴重な食材だったようですが
今では栽培技術が確立されて
比較的安く手に入るように
なったんですよ。
っ……。
使わなくなった坑道を利用して
栽培しています。
へぇ~っ!
確かに坑道はキノコ栽培に適しているかも。
一種の密閉空間だから、
温度や湿度の管理が容易だもんね。
ただ、光や養分はどうしているんだろ?
そのための魔法道具でもあるのかなぁ。
機会があったら栽培現場を見てみたいっ!
アンカーの住民は定期的に
これを摂取するよう
昔から言われてきています。
なぜです?
そうしないと
病気になりやすいらしいです。
だからエルムも
残さずしっかり食べなさい。
……姉ちゃんこそ食べてよ。
あ……うん……食べてるよ。
っ?
タイヨウゴケかぁ。
興味深いキノコだなぁ。
僕も買ってきて調べてみよう。
調べる……とは?
あ、トーヤは薬草師で、
薬の材料になりそうなものを
調べるのが趣味なんです。
そうでしたか。
それなら知り合いのお医者様を
ご紹介しましょうか?
その方もずっと植物の研究を
なさっていますので。
僕たちもすごく
お世話になっている方なんです。
リム先生というお医者さんです。
リム先生ってもしかして……。
きっと私たちが探している方と
同一人物ですよ。
実は僕たち、その人を訪ねて
アンカーまでやってきたんです。
そうでしたか!
リム先生は素晴らしい方です。
誰にでも分け隔てなく
接してくださいますし。
ガイネさんとは
タイプが違うかもですねぇ。
あの人は
好き嫌いが激しくて偏屈ですし。
…………。
サララ、意外にひどいなぁ。
素直と言ったらそうなんだけど。
今ごろガイネさんはクシャミをしてるかな?
そうだ、植物に興味をお持ちなら
アンカーのお茶をお出しします。
ほかの地域で飲まれているお茶と
違うんです。
製法も品種も独特なんですよ。
わぁ~っ!
それはぜひ、いただきたいです!
では、少しお待ちください。
そう言ってニーレさんが立ち上がった直後、
彼女は不意に床へ倒れ込んでしまった。
そしてそのまま動かなくなってしまう。
転んだにしては様子がおかしい!
ニーレさん!
姉さんっ!
…………。
呼びかけても返事はなかった。
意識を失っているみたいで、呼吸も弱い。
ニーレさんの体に何が起きたのだろう?
次回へ続く!