高校2年の新島 椿(にいじまつばき)と1年生カルテット<矢津・射和・睦月・海月>のリベンジマッチが失敗し、しばらく経った頃・・・・・・。
椿の教室に思わぬ人物が訪ねて来た。
高校2年の新島 椿(にいじまつばき)と1年生カルテット<矢津・射和・睦月・海月>のリベンジマッチが失敗し、しばらく経った頃・・・・・・。
椿の教室に思わぬ人物が訪ねて来た。
やあ! 君が新島だな!
俺は3年の八坂東吾だ!
よろしく。
クラスメイトに呼ばれ、廊下まで出てきた椿の目の前に現れたのはやたらとキラキラした先輩だった。
彼は親しげに話しかけて来たが、椿の知り合いではない。
よろしくお願いします・・・・・・?
アレ?
もしかしてちょっと引いちゃったか?
すまんすまん、ようやく見つけたから嬉しくてつい。
いや、いきなりだったのでびっくりしただけですから!
ははは!
それなら良かった。
新島が話しやすそうな奴で安心したよ!
どうも。
それで、俺に何か用ですか先輩?
ああ、実は・・・・・・。
その頃、教室の中では相原 千秋(あいはらちあき)と高梨 紅(たかなしこう)が呼びだされたままなかなか戻らない椿について話していた。
戻りが遅すぎる・・・・・・。
まさか・・・・・・漆黒の断罪者<ブラック・カメリア>の身に何かあったのでは!
・・・・・・まだ5分ぐらいしか経ってないけど。
5分もあれば強力な魔法陣が描ける!
これは、もしかしたら魔術の生贄にされているのかもしれん!
温厚そうな男だったが実は裏の顔は・・・・・・!
そんなにおかしな人には見えなかったけど(少なくとも高梨よりは)
多分、部活関係での知り合いとかじゃないの。
甘いぞ、終焉を導く者<エンド・オブ・ワールド>!
戦友(とも)の窮地はこの俺が救う!
いざ!!!!!!
あっ・・・・・・!
ちょっと高梨・・・・・・!
止める間もなく紅は椿たちのいる廊下へと飛び出して行ってしまった。
スルーしたい気持ちはあるがこのまま放っておくわけにもいかず、千秋も渋々その後に続く。
無事か!
ブラック・カメリア!
ん、どうしたんだふたりとも。
教室で何かあったのか?
何でもないよ、いつものやつ。
お前がなかなか戻らないからって様子を見に来ただけ。
紅と千秋が廊下へ出ると、ちょうど東吾が椿のペットであるにぼしくん(ヘラクレスオオカブト)について話を聞いている所だった。
俺は少し先輩と話をしていただけだ。
ま、そんな事だろうと思った。
皆にもにぼしくんのかっこよさが伝わると良いんだが・・・・・・。
とりあえずは大丈夫そうだな。
安心した。
君たちは新島の友人か?
うちのクラスの相原と高梨です。
騒いですいません。
元気だなあ!
俺は3年の八坂だ、よろしく。
あ、そう言えば高梨は確か転校してきた生徒だったよな!
俺を知っているのか!
まあな、校内の情報は大体知っているつもりだ。
でもカブトムシにも驚いたがまさか蝙蝠を連れ歩いてる奴がいるなんて!
ぜひ後で取材させてほしい。
しゅ・・・・・・取材だと?
八坂先輩は新聞部の副部長だ。
俺も取材を受けていた所だ。
しゅ、取材とかそういったアレはその・・・・・・。
とても困る。
俺は闇に生きる存在でごにょごにょごにょ・・・・・・。
あっはっは!
そんなに緊張しなくても、普段通りで問題ないから!
普段通り・・・・・・。
良いだろう!
そこまで言うならばこの俺<虚ろなる煉獄の使者>の生き様を特別に教えてやる。
まず朝は悪魔を呼び出す魔法陣の練習を・・・・・・。
虚ろなる煉獄の使者!?
その虚ろなる煉獄ってどこの事だ?
詳しく聞かせてくれないか!
え・・・・・・!
あーあ調子に乗るから。
そこ突かれるとは思ってなかったんだな・・・・・・。
う・・・・・・虚ろなる煉獄とはその・・・・・・。
つまりアレだ、生きとし生けるものの心の中に潜むアレで・・・・・・。
うんうん、それで?
先ほどと比べ、明らかに歯切れの悪くなった高梨。そんな彼に東吾は無邪気な質問を重ねてゆく。
今度こそスルーしようと思った千秋だが、今にも泣き出しそうになっているクラスメイトを放ってはおけずつい口を開いてしまった。
・・・・・・その辺の設定がまだ定まってないなら取材は今度にしてもらったら?
こ、これは設定などではない・・・・・・。
しかし虚ろなる煉獄は複雑なものだから1日で語りつくせんのだ。
ここは終焉を導く者<エンド・オブ・ワールド>の意見を尊重し・・・・・・。
エンド・オブ・ワールド!?
何でもありませんので、気にせず新島の取材を続けて下さい先輩。
ああ、そうだった。
カブトムシと蝙蝠が気になってつい脱線してしまったが、今日はこれについて話を聞こうと思っていたんだ。
これは・・・・・・なぜ先輩がこの手紙を?
昨日の帰り裏門前に落ちていたのを拾ったんだ。 中身は俺の方で確認させてもらった、すまん。
良かったらどうしてこの手紙を書いたのか教えてくれないか?
ええ、構いませんよ。
東吾は椿からことの経緯を説明されるとそれらをすべてメモ帳に記していった。
ありがとう。
リベンジマッチなんて面白そうなものを取材できて良かった。
これを出したのは新島で間違いなかったんだな。
はい、あいつらが読むと思って裏門にはさんでおいたものです。
あそこにあったという事はまだ読んでなかったのか・・・・・・。
そういう事になるな。
それでこの手紙、どうするつもりなんだ?
もうあいつらも忘れているでしょうから捨てようかと思います。
そうか、せっかく良い文面だったのにもったいないな。
見どころがあるぞこれ。
文面は俺の妹が代筆したものです!
あいつ文才あったのか~!
ブラック・カメリアの血縁者が記した文、興味があるな。
あれはなかなか凄まじい内容の手紙だった・・・・・・。
新島!
ぜひその妹さんにも話を聞いてみたいんだが構わないか?
わかりました。
妹はA組の蓮華ってやつです。
後で俺が案内しましょうか?
いや、空いてる時間に探してみるから大丈夫だ。
悪いがこの手紙は少し借りるぞ。
また君たちのペットについても聞かせてくれ。
椿たちに感謝の言葉を述べ、取材料だと言って3人にそれぞれ小さなチョコレートを手渡すと東吾は自分の教室へと戻って行った。
面白い先輩だったな!
そうだね。
少し賑やか過ぎたけど。
思いのほか良い奴だった。
それにしても・・・・・・ブラック・カメリアには妹が居たのか。
孤独な俺には想像がつかんが華やかな家庭環境のようだな。
華やかかどうかはわからんが、ユニークな妹だ。
今度高梨にも紹介する!
・・・・・・女に興味はないが、ブラック・カメリアが血縁者の紹介をしたいと言うならばそれに応えよう。
おお!
妹もきっと喜ぶと思う!
よろしくな。
なぜだろう、今から面倒な事になりそうな気がしてならない・・・・・・。
珍しいものや面白いものが大好きな蓮華の事だ、おそらく紅にはとても興味を示すだろう。
騒ぎに巻き込まれませんようにと願いながら、千秋は教室へ戻る椿たちの後に続いた。