高校2年の新島 椿(にいじまつばき)と1年生カルテット<矢津・射和・睦月・海月>のリベンジマッチが失敗し、しばらく経った頃・・・・・・。


 椿の教室に思わぬ人物が訪ねて来た。

八坂 東吾(やさか とうご)

やあ! 君が新島だな!
俺は3年の八坂東吾だ!
よろしく。

 クラスメイトに呼ばれ、廊下まで出てきた椿の目の前に現れたのはやたらとキラキラした先輩だった。

 彼は親しげに話しかけて来たが、椿の知り合いではない。

新島 椿(にいじま つばき)

よろしくお願いします・・・・・・?

八坂 東吾(やさか とうご)

アレ?
もしかしてちょっと引いちゃったか?
すまんすまん、ようやく見つけたから嬉しくてつい。

新島 椿(にいじま つばき)

いや、いきなりだったのでびっくりしただけですから!

八坂 東吾(やさか とうご)

ははは!
それなら良かった。
新島が話しやすそうな奴で安心したよ!

新島 椿(にいじま つばき)

どうも。
それで、俺に何か用ですか先輩?

八坂 東吾(やさか とうご)

ああ、実は・・・・・・。

 その頃、教室の中では相原 千秋(あいはらちあき)と高梨 紅(たかなしこう)が呼びだされたままなかなか戻らない椿について話していた。

高梨 紅(たかなし こう)

戻りが遅すぎる・・・・・・。

まさか・・・・・・漆黒の断罪者<ブラック・カメリア>の身に何かあったのでは!

相原 千秋(あいはら ちあき)

・・・・・・まだ5分ぐらいしか経ってないけど。

高梨 紅(たかなし こう)

5分もあれば強力な魔法陣が描ける!
これは、もしかしたら魔術の生贄にされているのかもしれん!

温厚そうな男だったが実は裏の顔は・・・・・・!

相原 千秋(あいはら ちあき)

そんなにおかしな人には見えなかったけど(少なくとも高梨よりは)

多分、部活関係での知り合いとかじゃないの。

高梨 紅(たかなし こう)

甘いぞ、終焉を導く者<エンド・オブ・ワールド>!
戦友(とも)の窮地はこの俺が救う!
いざ!!!!!!

相原 千秋(あいはら ちあき)

あっ・・・・・・!
ちょっと高梨・・・・・・!

 止める間もなく紅は椿たちのいる廊下へと飛び出して行ってしまった。

 スルーしたい気持ちはあるがこのまま放っておくわけにもいかず、千秋も渋々その後に続く。

高梨 紅(たかなし こう)

無事か!
ブラック・カメリア!

新島 椿(にいじま つばき)

ん、どうしたんだふたりとも。
教室で何かあったのか?

相原 千秋(あいはら ちあき)

何でもないよ、いつものやつ。
お前がなかなか戻らないからって様子を見に来ただけ。

 紅と千秋が廊下へ出ると、ちょうど東吾が椿のペットであるにぼしくん(ヘラクレスオオカブト)について話を聞いている所だった。

新島 椿(にいじま つばき)

俺は少し先輩と話をしていただけだ。

相原 千秋(あいはら ちあき)

ま、そんな事だろうと思った。

新島 椿(にいじま つばき)

皆にもにぼしくんのかっこよさが伝わると良いんだが・・・・・・。

高梨 紅(たかなし こう)

とりあえずは大丈夫そうだな。
安心した。

八坂 東吾(やさか とうご)

君たちは新島の友人か?

新島 椿(にいじま つばき)

うちのクラスの相原と高梨です。

相原 千秋(あいはら ちあき)

騒いですいません。

八坂 東吾(やさか とうご)

元気だなあ!
俺は3年の八坂だ、よろしく。

あ、そう言えば高梨は確か転校してきた生徒だったよな!

高梨 紅(たかなし こう)

俺を知っているのか!

八坂 東吾(やさか とうご)

まあな、校内の情報は大体知っているつもりだ。
でもカブトムシにも驚いたがまさか蝙蝠を連れ歩いてる奴がいるなんて!

ぜひ後で取材させてほしい。

高梨 紅(たかなし こう)

しゅ・・・・・・取材だと?

新島 椿(にいじま つばき)

八坂先輩は新聞部の副部長だ。
俺も取材を受けていた所だ。

高梨 紅(たかなし こう)

しゅ、取材とかそういったアレはその・・・・・・。

とても困る。

俺は闇に生きる存在でごにょごにょごにょ・・・・・・。

八坂 東吾(やさか とうご)

あっはっは!
そんなに緊張しなくても、普段通りで問題ないから!

高梨 紅(たかなし こう)

普段通り・・・・・・。

良いだろう!
そこまで言うならばこの俺<虚ろなる煉獄の使者>の生き様を特別に教えてやる。

まず朝は悪魔を呼び出す魔法陣の練習を・・・・・・。

八坂 東吾(やさか とうご)

虚ろなる煉獄の使者!?
その虚ろなる煉獄ってどこの事だ?
詳しく聞かせてくれないか!

高梨 紅(たかなし こう)

え・・・・・・!

相原 千秋(あいはら ちあき)

あーあ調子に乗るから。
そこ突かれるとは思ってなかったんだな・・・・・・。

高梨 紅(たかなし こう)

う・・・・・・虚ろなる煉獄とはその・・・・・・。
つまりアレだ、生きとし生けるものの心の中に潜むアレで・・・・・・。

八坂 東吾(やさか とうご)

うんうん、それで?

 先ほどと比べ、明らかに歯切れの悪くなった高梨。そんな彼に東吾は無邪気な質問を重ねてゆく。

 今度こそスルーしようと思った千秋だが、今にも泣き出しそうになっているクラスメイトを放ってはおけずつい口を開いてしまった。

相原 千秋(あいはら ちあき)

・・・・・・その辺の設定がまだ定まってないなら取材は今度にしてもらったら?

高梨 紅(たかなし こう)

こ、これは設定などではない・・・・・・。
しかし虚ろなる煉獄は複雑なものだから1日で語りつくせんのだ。

ここは終焉を導く者<エンド・オブ・ワールド>の意見を尊重し・・・・・・。

八坂 東吾(やさか とうご)

エンド・オブ・ワールド!?

相原 千秋(あいはら ちあき)

何でもありませんので、気にせず新島の取材を続けて下さい先輩。

八坂 東吾(やさか とうご)

ああ、そうだった。
カブトムシと蝙蝠が気になってつい脱線してしまったが、今日はこれについて話を聞こうと思っていたんだ。

詳細は第4~7話 椿先輩とカルテット再び参照

 そう言いながら東吾がポケットから取り出したのは以前、椿が1年生カルテットに送った手紙であった。

新島 椿(にいじま つばき)

これは・・・・・・なぜ先輩がこの手紙を?

八坂 東吾(やさか とうご)

昨日の帰り裏門前に落ちていたのを拾ったんだ。 中身は俺の方で確認させてもらった、すまん。

良かったらどうしてこの手紙を書いたのか教えてくれないか?

新島 椿(にいじま つばき)

ええ、構いませんよ。

 東吾は椿からことの経緯を説明されるとそれらをすべてメモ帳に記していった。

八坂 東吾(やさか とうご)

ありがとう。
リベンジマッチなんて面白そうなものを取材できて良かった。
これを出したのは新島で間違いなかったんだな。

新島 椿(にいじま つばき)

はい、あいつらが読むと思って裏門にはさんでおいたものです。
あそこにあったという事はまだ読んでなかったのか・・・・・・。

八坂 東吾(やさか とうご)

そういう事になるな。
それでこの手紙、どうするつもりなんだ?

新島 椿(にいじま つばき)

もうあいつらも忘れているでしょうから捨てようかと思います。

八坂 東吾(やさか とうご)

そうか、せっかく良い文面だったのにもったいないな。
見どころがあるぞこれ。

新島 椿(にいじま つばき)

文面は俺の妹が代筆したものです!
あいつ文才あったのか~!

高梨 紅(たかなし こう)

ブラック・カメリアの血縁者が記した文、興味があるな。

相原 千秋(あいはら ちあき)

あれはなかなか凄まじい内容の手紙だった・・・・・・。

八坂 東吾(やさか とうご)

新島!
ぜひその妹さんにも話を聞いてみたいんだが構わないか?

新島 椿(にいじま つばき)

わかりました。
妹はA組の蓮華ってやつです。
後で俺が案内しましょうか?

八坂 東吾(やさか とうご)

いや、空いてる時間に探してみるから大丈夫だ。
悪いがこの手紙は少し借りるぞ。

また君たちのペットについても聞かせてくれ。

 椿たちに感謝の言葉を述べ、取材料だと言って3人にそれぞれ小さなチョコレートを手渡すと東吾は自分の教室へと戻って行った。

新島 椿(にいじま つばき)

面白い先輩だったな!

相原 千秋(あいはら ちあき)

そうだね。
少し賑やか過ぎたけど。

高梨 紅(たかなし こう)

思いのほか良い奴だった。

それにしても・・・・・・ブラック・カメリアには妹が居たのか。
孤独な俺には想像がつかんが華やかな家庭環境のようだな。

新島 椿(にいじま つばき)

華やかかどうかはわからんが、ユニークな妹だ。

今度高梨にも紹介する!

高梨 紅(たかなし こう)

・・・・・・女に興味はないが、ブラック・カメリアが血縁者の紹介をしたいと言うならばそれに応えよう。

新島 椿(にいじま つばき)

おお!
妹もきっと喜ぶと思う!
よろしくな。

相原 千秋(あいはら ちあき)

なぜだろう、今から面倒な事になりそうな気がしてならない・・・・・・。

 珍しいものや面白いものが大好きな蓮華の事だ、おそらく紅にはとても興味を示すだろう。

 騒ぎに巻き込まれませんようにと願いながら、千秋は教室へ戻る椿たちの後に続いた。

第12話 椿先輩と突撃取材①

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