放課後、

久々に前川とゲームセンターに遊びに行った敬介。

たまたま、

店内で男2人組に絡まれる。

しかし、

特に被害を受けることはなく帰宅することに。

そして、

夜の楽坂公園にて、

敬介は矢島から出された課題である、

光の一点集中の修行を行っていた。

うーん。
なかなか上手くいかないな……。

何かいい方法がないか考えるのだが思いつかず、

転がっていった空き缶を見つめている。

すると、

一緒に修行をすることにしていた美咲がやってきた。

おーい、形山くーん!!

手を振りながらかけて来る美咲の声に、

敬介はすぐさま反応した。

天野さん。

美咲は買ってきた飲み物を敬介に差し出した。

受け取った飲み物は缶のスポーツドリンクで、

蓋をあけて一気に飲み干した。

ふぅ。
生き返った気分だよ。
ごちそうさま。

いえいえ。
修行は上手くいってる?

光術士として少しだけ先輩にあたる美咲は、

敬介のことを気にかけているのだが、

なかなか良いアドバイスができない。

それもあるからなのか、

とりあえず、

修行くらいは手伝いたいと思っているのである。

思うようにいかないんだよね……。

ちょっとだけ残念そうに苦笑いする敬介を見て、

美咲も同じように苦笑いしてしまう。

そっか……。
そう簡単には、
上手くいかないよね。
そうだ!!
自分の光術の名前とか決めたりしたの?

名前?
矢島さんの光弓や、
天野さんの天乃翼とかのことね……。
でも、これといって形にモチーフはないからさ。
一応候補はあるんだけど……。

大きく伸びをしたりしてストレッチをしながら、

敬介は右足首をさすりだした。

痛いとかそういうわけではないのだが、

なんか変な感じがするのだ。

光で包むという感覚に体が慣れていないからなのだろう。

そうなの?
どんな名前なのか教えてよ。

え?
あの笑わないでね。
け、けん……げき。

ん?
ゴメンね。
よく聞こえなかった。
……けんげき?

美咲の方は見ないまま顔をそらして答えたのだが、

微妙な恥ずかしさから、

声が小さくぼそぼそとなってしまった。

そのため、

美咲に聞き返されることに。

うん。
アキレス腱の辺りに力を集中させてるのと、
その力の衝撃で、
敵を倒すって意味でつけたんだ。
それで"腱撃(けんげき)"。

ふふっ!
……ご、ごめんね。
つい。

恐ろしいほど美咲の笑いのツボに入ったのだろう。

たぶん、

アキレス腱という部分が。

アキレス腱には何の罪もないのだが……。

名前のセンス。

無いと一言で言ってしまったら、

失礼な気がするが、

たいていの人は美咲のように笑ってしまうか、

引いてしまうくらいのセンスのなさに、

苦笑いしてしまうのだろうか。

敬介はショックを受けるよりも、

美咲の普段見せない反応に少しばかり引いてしまった。

もう少し、

マシな名前にすればよかったような気がしたのだが、

最初にビビッときた名前がこの腱撃だったのだ。

今さら変えてしまうのも残念なので、

そのままでいくことにした。

色々と考えている内に、

美咲の笑いも落ち着いただろうか。

やっぱり変だったかな。

ごめんね、形山君。
なんかアキレス腱って聞いたら、
急に面白くなっちゃって。

やっぱりだ。

敬介は即座に思った。

美咲はアキレス腱の部分に反応していた。

まぁ、いいや。
そんなことより修行しないと。

そ、そうだね。
あはは。

今度は別の意味で笑ってごまかそうとする美咲。

敬介自身も、

別にそこまで気にしているわけではないので、

笑ってごまかした。

そのまま空き缶を並べて、

気持ちを集中した。

一点集中させなければ、

必要な一撃を与えることはできない。

それはわかっている。

しかし、

光を出すだけでもなかなか大変なので、

その包む形を安定させるのはさらに難しい。

そして、

気持ちは整い、

目の前の空き缶を勢い良く蹴り出した。

敬介の光を纏った右足が空き缶に触れる、


その瞬間だった。

学校での爆発事件の時のように、

辺りには衝撃と土煙があがり、

それらが敬介と美咲の二人を包み込んだ。

目の前がはっきりとしなくなり、

二人は不安と恐怖でパニックになる。

え?
なに?!
形山君、何したの?

いや、俺じゃないよ!
なんだこれは!?

目の前の景色が見えてこないのだが、

少しずつ、

近づいてくる足音のようなものが聞こえてくる。

敬介は、

てっきり美咲でも近づいてきているのだと思ったのだが、

どうやら違うようだ。

近づいてくる者が何者かも分からないまま、

辺りの土煙を手で振り払っていると、

黒いモヤが目の前に現れた。

そして、そのモヤは人の形に姿を変えた。

…………。

正確には、

人の形をしているのだが、

ローブのようなもので体を覆っている。

体格も良く大きいその人影は、

敬介を発見すると右拳で敬介を殴りつけた。

うぐぁぁぁぁっ!!!!!

突然の腹部への衝撃に叫び、

吹き飛ばされた。

形山君!!

あまりにも衝撃が強かったため、

土煙の向こうへと飛ばされてしまった。

腹を抱えうずくまる敬介。

しかし、

思っていたほどの深手を負ってはいない。

なぜなら、

修行の末、

自己防衛を無意識に、

瞬時に発動させれるようになっていたからだ。

その光のオーラが、

敬介の体を衝撃から守った。

ふと気づくと、

少し前から美咲の声が聞こえなくなっていた。

天野さん!?
天野さん!!!

返事がない。

まさか、

やられてしまったのではないかと立ち上がるのだが、

足元がふらつく。

間違いなく体にダメージはあった。

しかし、

美咲の安否を確認しなければという一心で、

歩みを進めた。

徐々に土煙が晴れ、

謎の人影に捕まる美咲が目に入った。

…………。

美咲は気絶しているのか、

謎の人影の左肩にうつぶせで抱えられていた。

そいつは、

体をかばいながら近づいてくる敬介の方を、

じっと見ているようであった。

なんだお前は!
天野さんを離せ!!

右手を大きく横に振り、

叫ぶのだが、

そいつはピクリとも反応しない。

その姿はもう不気味でしかなかった。

正体不明のものが襲い掛かってくる。

これは、

初めてシャドーに襲われた時の感覚と似ていた。

だが、今はあの時とは違う。

気づかぬうちに震えていた足を叩き、

せいいっぱいの力を右足にこめて走り出した。

だんだんと加速していく敬介。

その男は、

右手を構えて、

再び敬介めがけてその拳を繰り出した。

走る敬介は、

その拳を直接蹴り飛ばすことを決め、


地面を大きく蹴り空中へと飛んだ。

くらえぇぇぇぇぇぇ!!!!

そのまま右足を敵の拳に当てる。

大きな衝撃音が辺りに鳴り響く。

第2章---三幻僧編---(31話)-襲撃者①-

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