残っていた仕事もこれで終わり。
ふんふんふ~ん
残っていた仕事もこれで終わり。
私は気付かぬうちに、鼻歌としてその喜びを漏らしてしまっていたらしい。
どうしたの明美? 随分と機嫌が良いじゃない
そんな声をかけてきたのは、一緒に残業していた同期のよしこ。
まあね。私これから、貴也君とデートなんだ
いいなあ~。明美は仕事も恋も順調で、悩みもなさそうだし。もう家に呼んだこともあるの? ほら、明美のお父さんってそういうの厳しかったじゃない?
もう家に呼んだことはあるけれど、私の誕生日の一回だけ。お父さんには彼を一人きりで家にあげちゃだめって言われたから、合鍵も渡してないわ。それに、悩みだって…
何? どうしたの?
それがね。私、最近誰かにつけられてるみたいなの。気配というか視線というか…そんな気持ちの悪さを感じているのよ
え!? それってストーカー? ちょっと、大丈夫なの明美? 今日貴也君のところまで一緒について行ってあげようか?
いいって。よしこの家は反対方向だし。それに気配を感じるのはアパートの傍の公園。最近はそこも通らないようにしているから
そう? ならいいけど。よし! それじゃ仕事も終わったしもう帰ろっか? あ。明美はまだ帰れないんだっけ
もうよしこ! からかわないでよ
冗談冗談。ささ、最後の確認はやっておくから早く行きましょう
それから、机の上に散らかった書類などをまとめて引き出しに直し、私とよしこは仕事場をあとにする。
エレベーターで一階に降りると、もう真っ暗だった。時刻は22時30分だから、ここから10分くらいの場所にあるレストランには余裕で間に合いそうだ。
それじゃ明美。貴也君によろしくね
うん。お疲れ様!
戸締りの確認や退社処理の仕事が残っているよしこを残して、私は一人、入り口を出て待ち合わせのレストランに向かった。
◇ ◇ ◇
貴也君、お待たせ!
約束の5分前にレストランに着くと、彼はもう椅子に座って私を待っていた。
やあ明美。仕事お疲れ様
貴也君こそお疲れ様。今日も会議だったんでしょ?
もう慣れたさ。それより明美、疲れた顔をしているけど、本当に大丈夫かい?
うーん。最近左肩が重いせいかな。大丈夫よ、心配しないで
やっぱり貴也君は優しいな。そんな事を考えていた私の元に、店員さんがお水を二つ運んできた。
いらっしゃいませ。こちらお冷になります。ご注文がお決まりになりましたら、何なりとお申しつけ下さい
ちょっと君。僕はもうもらっているから、一つで十分だ
あ、申し訳ありません! 二名様ご来店と承ったので、てっきり新しく二名様がご来店されたのかと。失礼しました!
慌てて店員さんが水を持って奥に戻って行く。
それから私たちは、とっても美味しい料理に舌鼓を打ち、満足してそのレストランをあとにした。
◇ ◇ ◇
美味しかったね、あそこのレストラン
私のアパートまでの帰り道、貴也と二人でさっき食べた料理について感想を言い合っていた、
ああ。特にあの冷製パスタは感動を覚えたよ。なあ明美、そこの公園で少しゆっくりして行かないか?
向こうの角を曲がった先には、例の公園がある。何故この道を通っているのかというと、よしこに打ち明けた話をまだ貴也には話していないからだ。
それに、貴也が一緒に帰ってくれるのなら心配もないだろう。
そうだね。うん、いいよ
だから、私は躊躇なくそう答えた。
なのに。
おっと済まない。電話のようだ。少し話してくるよ
貴也の携帯が鳴った。おそらく貴也の様子から見ると、会社からの電話だろう。
邪魔をしてはいけないと思い、私は彼から少しだけ距離を取る。前方には私のクラスアパートが見えていた。
自分の部屋はどこだろうと、まずは一階から順に私の部屋がある七階まで数え始める。
そこに。
明美ちゃーーーーん!!
きゃっ!?
知らない男が横の茂みからいきなり飛び出し、いきなり押し倒してきたのだ。
一つ幸いなのは、そのことに気付いた貴也が、すぐにやってきて私を助けてくれたこと
おいお前、何してる!? 明美から離れろ!
その後は貴也が男を取り押さえて、私が呼んだ警察が来て、その男を連れて行った。
その時に頭を打っていたらしい貴也は病院へ、私は警察の方に言われ署に同行した。
◇ ◇ ◇
あの男は何だったんですか?
少しして、男から事情聴取を終えたという警察の方に聞いた。
以前から明美さんに付きまとっていたストーカーの様です。いつも隣にいる男に嫉妬したと証言していますね
す、ストーカーですか。ですが、何故今日襲ってきたんでしょう?
今日もですが、いつも会社で待ち伏せしているあなたの左側に男がいるから手が出せなかったようです。それで、以前あなたの家に侵入した際、そこにいた彼氏さんにひどい目に遭わされたようで。彼氏の目の前で、あなたに危害を加えたかったと言っていました。それと、貴也さんですが、今夜だけ検査のため入院されるようです
そうですか。ありがとうございます
その日は家に帰ることも出来ず、私は近くのビジネスホテルに向かった。
意味なんてなかったみたいだけど。
◇ ◇ ◇
いらっしゃいませ。夜も遅いので既に二人部屋が満室でして。ツインベッドのお部屋でよろしいですか?
* * * * *
こんにちは。
ご覧頂きありがとうございます。
長い間更新していないにも関わらず、少なからずお気に入りをしてくれている読者さんがいましたので、嬉しくなり久々に更新しました。
いつもただのホラーというのも気に掛かることがあるので、今回は明言しない読者さんに解釈を委ねる形のホラーにしてみました。
今後は第一夜のようなホラーと、今回の第二夜のホラーをランダムに織り交ぜて行こうと思ってます。ドキドキしながら待って頂けたらと思います。
今回のお話の深いところまで気付けましたでしょうか? そんな事を考えながら、今回はこの辺りで失礼します(*- -)(*_ _)ペコリ
八月末に拝見させてもらって
今回お気に入りにさせて頂きました。
いやー、カレシさんを家に呼んだこともないのに
いったい誰が居たんでしょうね。
レストランでは誰と入ったのでしょう。
こういう話は大好物です(*´ω`*)