あたしとチカは、双子の姉妹。身長も体重も。容姿からほとんどが瓜二つなの。そんなあたしたちを見分ける方法は、きっと服装だけね。

 あたしが好んで着るのはフリフリのスカートやピンクのカーディガンとか。ゆる可愛いThe女の子ファッション。着る服を取り換えた時は、一日両親でさえ騙されていたわ。

ねえ、チカ

 わたしとお姉ちゃんは、双子の姉妹。声も筆跡も。仕草から好物までほとんど一緒なの。そんなわたしたちを見分ける方法は、きっと服装だけね。

 わたしが好んで着るのは、ロングパンツや真っ黒なコート。どちらかと言えば落ち着いた大人スタイルが望ましい。制服を着る学校では、しょっちゅう先生やクラスメイトに間違われたわ。

そうだね、お姉ちゃん…でも

 たった一人だけ、私たちを見分けることのできる友達がいた。二人で同時に恋をした、幼馴染の勇太の、友達。

 彼だけは、制服を着ていてもどちらがチカでどちらがチヨか確実に当てることが出来た。彼はあの日、こう言っていた。

お前たち二人の会話を聞いていれば、目を瞑っていても分かるさ。ああそれと、勇太は妹のチカの方が好きだって言ってたぞ

 そんな男の子が、
死んだ。

 そのニュースを聞いた時、ベッドで二人密かに喜びを共にした。

これでもうあたしたちを見分けられる人はいなくなったね

うん。これで安心だね。わたしたちはいつでも成り代わることが出来るよ

だけど。












一つだけ秘密にしていることがあるの。

あたしはね、チカ

わたしはね、お姉ちゃん

何でもあたしの真似をするあなたが――

わたしの未来を決めてしまうお姉ちゃんが――

本当は邪魔だったの

そんな事、口に出しては
言えなかったけど。

だからさ…

許してくれるわよね、チカ

許してくれるよね、お姉ちゃん












































どうしてこんなことに・・・

俺たちがもっと娘のことに気を配っていれば

 母と父が、それぞれ向かい合ってリビングでうなだれていた。

皆さんに、報告しなくちゃ

 そう言って電話を取った母。対称に父は手紙を持ったままうなだれている。

 父の握る手紙。それを、もう一度横から覗き込む。

遺書

 ごめんね、みんな。実はあたし、この顔が嫌いだったの。チカと同じこの顔が。隣を見れば、いつもあたしと同じ顔。何でもあたしの真似をするあたしの分身。

 いつも思っていたわ。あたしの隣にはあたしがいる。もう一生逃げられないって。なのに、唯一の心の支えの勇太さえ、あなたを選んだ。だから、その一生を終わらせることにしました。

 さようなら

チヨ

 だから、瞳に涙を浮かべたままかすれそうな声を上げた。

お姉ちゃん…どうして、あたしを置いて行っちゃったの?

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