光術士になるために修行をこなしてきた形山敬介。

そうして、

カラウから正式に光術士として認められたのだ。

さらに、

カラウの口から、

光術士の真の目的も語られようとしている。

真の……目的?
えっと、
それってシャドーが人間を襲ったりするのを、
救うことなんじゃないのか?

敬介は、

誰かを守るために、

力を手に入れる必要があった。

その目的とは違う何かがあるのだろうか。

それに、

誰かを守りたいと思って光術士を目指したのは、

美咲も同じなのである。

カラウ先生、
目的っていったい?

敬介と美咲に関してはまだ事実を知らないため、

こうなってしまっても仕方ない。

しかし、

その二人を矢島が制止する。

頷く矢島に答えるように頷き、

カラウは続きを話し始めた。

光術士の真の目的。
それはな、
この世界ともう一つの世界を繋ぐ
『次元の門を閉じること』。
要は、
シャドー達が住んでいる世界とこの世界が、
次元の門が開いていることで繋がっていて、
その門を閉じることにより、
お互いの行き来を、
完全にできないようにしなきゃならん。
そういうことだ。

カラウ自身、

ようやくこの話をすることになったのもあり、

ふざけている様子は一切ない。

冗談ではなく、

真実なのだろう。

さらに、

カラウは続けた。

しかし、
門を閉じるといってもそう簡単ではない。
簡単だったらお前らより先に、
別の光術士達が閉じているだろうからな。
なぜ、できないか。
答えは簡単だ。
門の奥には強大な敵がいる。
60年位前に、
光術士達は門の奥の住人と戦ったのだが、
あと一歩のところで敗れてしまった。

…………。

だが、
光術士達は残り少ない力で、
その門に結界を張った。
そういうこともあり、
最近まで平和だったんだが……。
だんだんとその結果も弱まってきてしまい、
再びその門の奥から敵が現れ始めたのだ。
この先、
さらに強いやつらが攻めてくるはずだ。
お前達には、
そいつらと戦い、倒し、次元の門を閉じる。
そういう使命があるわけだ……。

…………。

どうだ?
ビビッたか?

真剣な眼差しでカラウは語っていたのだが、

最後に普段どおりのおふざけを入れてきた。

しかし、

内容が思っていた以上に重たくなっているため、

敬介と美咲の顔にいつもの明るさはなく青ざめていた。

カラウも拍子抜けしたかのように、

溜息をつく。

矢島もなんといっていいか分からないのだが、

言葉をかけずにはいられなかった。

美咲ちゃんも敬介君も、
そんなしんみりしないで。
別に君達だけにって話じゃないから。
ちゃんと、
各地にいる光術士達と力を合わせて頑張ればなんとかなるから。

いつもの笑顔とは違い、

かなり作ったような笑顔でフォローを入れている。

他にも……、
俺達以外にも光術士っているんだ。

もちろん。
僕よりベテランの光術士から、
二人みたいな駆け出しの光術士までね。

他にも仲間がいると聞いて負担が減ったのか、

少し表情が軽くなる敬介。

そりゃあ、
お前達ひよっこだけに任せるわけにはいかねぇからな。

バカにしてるわけではなく、

普段通りにすることで気持ちを紛れさせてやろう

というカラウの優しさなのだろうか。

じゃあ、そういうわけだから。
お前たち、頼んだぞ。
けっこう期待してるからな。

またも、

勝手に区切りをつけて唐突にいなくなったカラウ。

その自由奔放さに、

いつも振り回されているような気がするが、

矢島は光術士として敬介と美咲を気にかける。

よし。
これで君たちの目標とする、
誰かを守ることっていうのにだいぶ近づくね。
なんたって、
影の住人達が通ってくる門を閉じるんだから、
もう誰も悲しい思いをしないよね。

矢島らしい言い方に変わったおかげで、

敬介以上に暗かった美咲の顔も、

明るさを取り戻しつつあった。

そう……だよね。
私達が次元の門を閉じれば、
それで終わりなんだもん。
その先にどんなに強い敵がいようが、
形山君や光一さん、
カラウ先生がいれば怖いことなんてないよね。
私達がやらなきゃ。

そうだよ、天野さん!!
俺達がやらなきゃ……。
そのために光術士になったんだ。
目の前の誰かだけじゃなく、
目に見えない所にいる誰かも俺は守りたい。
そのためにも、
次元の門は絶対に閉じてみせる!!

己の目的を達成するには、

その元凶を断たねばならない。

まさか、

光術士になるという選択が、

これ程大きな意味を持つことになってくるとは、

本人達も最初はまったく考えていなかった。

しかし、

知ってしまったからには見てみぬふりなどできない。

敬介の心には、

正義などの大それた気持ちではなく、

ただ誰かを守りたいと思う気持ちが、

さらに大きく膨らんでいた。

同じく決意を固めた美咲は突然。

敬介の手を引き。

ちょ、天野さんどうしたの?

さらに矢島の手を引っぱる。

おっと、美咲ちゃん?

両手で二人の手を掴んだ美咲は、

二人を引き連れて、

境内の中央に立った。

ふふ。
私達は一緒だから。
これからも頑張れるよ。
二人とも、よろしくね。

"一緒"

ということを形にしたかったのだろう。

そうだね。

うん。

二人は自然と頷いた。

敬介、美咲、矢島。

赤く光る月を見上げながら、


3人の気持ちは一つになった。

そして、


次元の門を閉じる為の


3人の光術士達の真の戦いはこれより始まる。

        第1章-力の目覚め編- END

第1章-力の目覚め編-(27話)-赤月の日⑥-

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