放課後に美咲と修行をするために、

学校の中庭で待ち合わせをしていた敬介。

飲み物を買いに行こうと、

中庭から離れようとしていたら、

背後から突然の爆音が。

それを聞きつけ集まった生徒や教師達。

危険なため下校するように言われ、

去り際に校舎の壁に大きな穴を見た。

敬介は爆発のことが気になり、

校門の辺りにいたのだが、

爆発から10分程して警察と消防がやってきた。

そのすぐ後に地元の刑事も到着し、


現場検証が始まった。

穴があったのは中庭に面した家庭科室。

教室内は酷く荒れ、

コンクリートの瓦礫がそこら中に散らばっていた。

警察が現場内を調べている間、

30代くらいの一人の男性刑事が大穴を見ていた。

それを見つけた、

20代前半くらいの新米刑事が近づいてくる。

先輩、俺こんなでかい事件初めてっす!!

バカヤロー!!
現場ではしゃぐなっていつも言ってんだろ!

興奮気味の新米刑事を、先輩刑事が一喝。

すいません……。

おそらく、
最近多発している謎の爆発事故と関連が
あるとみて間違いない。

刑事の勘というやつなのだろうか。

この街では、

あまり不可解な事件が起こったことはなかったので、

大変大きなニュースとなった。

ただいま~。

とりあえず、

ひとまず家に帰ってから夜修行しようと、

美咲からメールがあったので、

敬介は帰宅した。

玄関で靴を脱いでると、

廊下の先から誰かが走ってくる足音が聞こえた。

敬介!!
あんた大丈夫なの?
どこも怪我してない?!

慌てて駆け寄ってきたのは、

敬介の母、みどり。

敬介が家に帰る頃には、

もうニュースを聞きつけていたようだ。

大丈夫だって。
そんなに心配すんなよ。
それより、今日も夜出かけるから。

母親の心配をさらっと受け流し、

2Fにある自室に向かおうとする敬介。

ダメよ!!
今日くらい家でおとなしくしてなさい!!

急に怒鳴った母に驚いた敬介は、

上りかけていた階段を踏み外した。

……。

振り返ると、

仁王立ちしている母の姿が。

そ、そんな怒鳴んなくても。

事件のあった場所や近くをウロウロしたら、
とっても危ないのよ。

ちょっとばかし怯えたのか、

母の話を少しだけ聞き、

階段を駆け上がり自室の部屋に入った。

部屋の鍵を閉め一息つくと。

ドアにもたれかかった。

母さんが、
あんなに言うなんて久々だな……。
それにして厄介な事になった。

そう、

敬介の母は滅多に怒らない。

敬介の記憶の中で、

最後にあんなに怒鳴られたのは、

小学生の時に興味本位で飼うことにした

ザリガニの世話をちゃんとせずに

死なせてしまった時だ。

あの時は、
自分の命もザリガニの命も
大切な命だから大事にしなさい
とか言ってたな。
でも、
今回の爆発事件はそんなに心配することじゃないんだけどな。

命を粗末にするのは、

絶対によくないことだと分かっているつもり。

そして、

度を越しているような気がするが、

母親が自分のことを本気で心配してくれているのも

分かっているつもり。

ただ、

自分自身が光術士に向けて、

命がけで修行をしようとしていることは、

口が滑っても、

家族や友人には言ってはいけない、

ということは確信していた。

机の前にあるイスに座り、

まだ片付けていない、

粉々になった影石の破片を見つめる。

一つだけ溜息をはき、

机に腕ごと顔を伏せた。

どうすっかなぁ。
あの感じだと、
今日は家から出してくれなさそうだ。

あれ。
そういえば敬介はどうしたんだ?

敬介の父、

誠司(せいじ)は、

仕事から帰宅しリビングのソファで、

夕飯ができるのを待っていた。

さっきニュースで観たと思うけど、
敬介の学校で爆発事故があったじゃない。
それなのに、
学校が終わって帰ってきてから、
夜出かけるなんていうからダメって言ったの。
そしたら、
おとなしく部屋から出てこなくって……。
でも安心よ。

キャベツを切っていた手を止めて、

包丁を握ったまま振り返るみどり。

それを見た父は咳払いをして、

そうかと一言だけいいテレビを付けた。

あいつも災難だな。
久々に母さんの心配病が出るとは。
近所の奥様方に、
また何か吹き込まれたかな?

父が独り言を言うが、

鼻歌で料理をする母には聞こえていなかった。

何時間くらいが経っただろうか。

敬介はイスに座ったまま机で寝ていた。

目を開けるともう部屋の中は真っ暗。

やべっ!
寝過ごした!!
まだなんにも練習してないし、
天野さんとの約束が!!

そういって、

立ち上がり着替え始める。

ふと、

窓の外を見ると、

赤い満月が町全体を照らしていた。

そういえば、
今日は赤い月が出るって、
前川が言ってたっけな……。

その赤い月に思わず見とれてしまうのだが、

もう一つの問題を思い出す。

母さんをどう突破すっかな。

着替えを終え、

顔を右手で覆い溜息をつく。

こんな日に"アレ"だなんて、
ついてないな。

そういって、カーテンを閉め、

部屋を出て行った。

第1章-力の目覚め編-(23話)-赤月の日②-

facebook twitter
pagetop