最初に習ったときには使えた自己防衛の力を、

突如訪れた実践で使えなかった敬介。

これが使えないと、

光術士としてやっていくことができないということで、

美咲と自己防衛をとっさに使える修行をすることになる。

とりあえずは、

今夜、

矢島と会った時にある程度の成果を見せれれば

という感じなのだが。

あいにく今日は学校。

修行時間はほとんどない。

そんななか、

敬介は授業を受けていた。

はぁ~。
早く授業終わんないかな。

大きなあくびをしながら目を瞑った。

ここか……。

生徒達が授業を受けているお昼頃。

ある一人の男が、

敬介たちの通う茜桜高校の中庭をうろついていた。

なにやら、探し物をしているようにも見える。

壁を触ったり、

中庭にあるこの学園の創設者の銅像を触ったり……。

行動がよく分からない。

そして、

中庭を通りかかった用務員のおじさんが気になり、

声をかけた。

あのー。
関係者以外立ち入り禁止なんですが、
どちらさんですか?

よくある言葉で男にそう伺うと、

何も言わずに去っていった。

用務員のおじさんは、

特に何もなく男が立ち去ったため、

それ以上は言わずに仕事に戻った。

放課後。

形山、帰ろうぜ。

悪い。
今日は先に帰っててくれ。

机の中の教科書などをかばんに入れてると、

敬介の元に前川がやってきた。

しかし、

敬介はこの後に美咲との修行があるため、

一緒に帰ることはできないのだ。

はぁ~。
またか……。
なんか最近付き合い悪いよな……。

たしかに、

ちょうど一週間前に、

"見ない何か"にぶつかってから平凡な日常が、

どんどん非日常的なものに変化してきている。

光術士への修行も始めたのもあり、

どうしても今までのような付き合いが難しかったのだ。

まさか!!
お前、本当に8組の天野さんと付き合ってるなんてことないだろうな!?

そんなわけないだろ!!
天野さんはたまたま最近話してるだけだよ。

本当のことを前川にはいえないので、

さらっと流すことにした。

そうなのか?
一人だけ彼女作って抜け駆けすんなよ!
……あ、今夜は赤い月が出るらしいぜ。
天野さんとロマンチックな夜になるといいな。
じゃあな。

そういって、前川は茶化す様に先に教室を出て行った。

何がロマンチックな夜だよ。
そんなじゃねぇのに。

敬介はため息をつくのだが、

どこか嬉しそうにも見える。

敬介は美咲とこの後修行するために、

待ち合わせ場所の中庭に来ていた。

そろそろ、天野さん来るかな。

美咲が来るまでの間に少しでも修行しておこうと、

自己防衛のオンとオフを切り替えながら立っていた。

なぜ、

この自己防衛の力を常に発動しないかというと、

単純に疲れるからだ。

昨夜も自宅に帰ってから練習していたのだが、

常に光を纏おうとすると精神力というか、

色々なエネルギーが消費されているのか、

疲労がかなり溜まっていた。

そのため、

必要な時だけ使えるようにならないといけないと思い、

この練習をしている。

まだ、

光術についての全てを知っているわけではないので、

効率のよいやり方かどうかは定かではない。

そして……。

待っているのだが、

約束から30分程経っても、

美咲はやってこない。

おかしいな。
約束忘れたとは思えないんだけど……。
ちょっと自販機で飲み物でも買ってくるかな。

軽い練習の休憩と、

美咲がこない暇つぶしも兼ねて、

購買部前の自販機に向かうことにした。

中庭から校舎へ入るための廊下に足を踏み入れた瞬間。

ものすごい爆音と共に、

土煙が敬介の真横を通り過ぎた。

慌てて振り返るのだが、

先程まで立っていた辺りは土煙が舞っていて、

よく見えない。

何が起きたんだ!
爆弾か?

こんな学校に爆弾が仕掛けられるとは考えにくいが、

学校を狙った無差別テロと考えられなくもない。

その場の光景に唖然と立ち尽くしていると、

爆音を聞きつけた教師や、

まだ下校していなかった生徒達が中庭に集まってきた。

敬介もその人ごみに紛れ始め、

同じ野次馬のように見える。

その人だかりは、

携帯で写真を撮ったりする者が多数いたのだが、

教師達は状況を危険なものと判断し、

生徒達にただちに下校するようにうながした。

敬介もその流れで押し出されそうになるのだが、

中庭がみえなくなる瞬間、

土煙の向こうにあった光景が一瞬見えた。

大きな、穴……。

中庭に面した校舎の壁には、

半径1m程の大きな穴が空いていた。

第1章-力の目覚め編-(22話)-赤月の日①-

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