はじまり

停止したその世界。















徐々に透明度が上がり、






一心さんの姿だけを残して





全てが消える。

残った一心さんのその姿も








次第に端からほづれだす。

一心さんを象っていた細い英数字の羅列は、











霧の如く蒸発していく。

そして、目の前の全てが消えた時、






頭の中に音声が流れる。

……あぁ、思い出した。

関連性の切られていた




ニューロネットワークが




私に再接続されると、





私は全てを悟った。
























再び脳内に音声が流れる。

コードネーム:

MAGI ISHIN

死神のアナグラムを冠する評価プログラムは、



それ自身が人工知能だ。






















今の私は望むべき結果に到達できなかった、




不要なデータの塊。




















恐らく彼は今回の私も消し去るだろう。



















そして、これから産み出される私も






納得の行く結果がでるまで






機械的な経験を繰り返し






もっともらしい記憶を構築できるまで







何度も捨てられてゆく。






















救いのない選別作業の中、





構築された私の感情が





やり場のない悲しみを作り出す。

……私は本当に存在していたの？










それとも、彼が創りだした


想像上の人物なの？

これまで行われた試行回数は数知れず。





おそらくその殆どが





満足のいく結果を導き出せなかったに違いない。































間もなく廃棄のシグナルが飛んでくる。



























偽りの時間の中、




再び私が構築されるのは




これから何年後、何十年後か……。

……お願い……、次こそは……

誰かがいるわけでもない。











何かに伝わるわけでもない。












しかし、私は悲痛な叫びで訴える。

次こそは一心さんと



結ばせて！！！

――そして……














新たな記憶の構築が始まった。

サイクリック

〜廃棄データの見た夢〜

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