学校も終わり、放課後。
学校も終わり、放課後。
矢島と中級の修行をするために、
美咲と一緒に秋野実神社を訪れていた。
時刻はいつもより遅く、
辺りはすでに暗くなっていた。
そのため、
月の光が神社一帯を照らしている。
今日も矢島は爽やかな笑顔で迎えてくれた。
敬介はあたりを見渡すが、
そこにカラウの姿はない。
今回の修行について任せるとも言ってたし当然か。
さて、
さっそく修行を始めたいと思う。
内容は……。
矢島さん!
その前に聞きたいことがあるんですが。
矢島が修行の内容を説明しようとしたのだが、
敬介がそれを遮る。
ん?
いったい何だろう?
遮られたことに顔色一つ変えずに、優しく聞き返す。
あのですね……。
シャドーの目的って何なんですか?
敬介の隣に立っていた美咲も頷いた。
目的ね……。
それは人間と同化するためなんだ。
同化っていうのは、
人間の体、魂、
存在そのものを取り込むこと。
それにより、シャドーは力を得るんだ。
その先の目的は…………。
この光の世界から人間を消し去り、
影の住人達が支配する。
そう伝えられているんだ。
そんなことを……。
そんな……。
目的、
何かをするための動機になったりすることなのだが、
こんな無茶苦茶な目的があってたまるか。
敬介は言い知れぬ苛立ちから下唇を噛んだ。
一刻も早くそんなやつらを倒さなければ。
強くなりたい、そんな気持ちが溢れてくる。
美咲もまた同じであった。
敬介の修行をきっかけに、
自身のまだ知らないことを知り、
不安が押し寄せる。
光術士になったのは敬介と同じく、
誰かを守るため。
私にそんなことができるのだろうか。
そんな気持ちになっていた。
はぁ…………。
敬介と美咲、
それぞれの表情を見た矢島は切なくため息を吐いた。
しかし、
この二人と力を合わせなければ、
いづれやって来る敵に立ち向かえない。
負けるわけにはいかない。
全ての人を影から救う、
それが光術士の使命なのだから。
さぁ、二人ともそんな顔しないで。
大丈夫、君達は素質があるんだから。
僕達は一人じゃないんだ。
光術士としての使命を再確認し、
矢島は声をかける。
はい。
俺達がやらないと誰かが悲しくて、
辛い思いをするんだ。
うん。
光一さんの言うとおり。
私達ならできる!!
くよくよしたって前には進まないんだよね。
迷いが吹っ切れたのか、
敬介と美咲は清清しい顔になった。
お互いの顔を見合わせ微笑み、小さく頷く。
矢島も笑顔で頷いた。
そうだね。
カラウさんがこの子達を選んだ理由が、
なんとなく分かった気がする。
この子達だからこそ、
希望が持てるんだ。
矢島はそう感じた。
さぁ、敬介君。
中級の修行を始めようか。
美咲ちゃんもサポートお願いね。
はい!!
よし、頑張ろう!!
二人が頷くと、移動をしようと矢島は動き始めた。
神社の長い石段を下りようとした時だった。
渦巻く闇のような感覚が
矢島と美咲の脳裏に届いた。
今のはっ!?
光一さん!!
美咲がすぐさま矢島の顔を見る。
ん?
ああ、来たようだね。
シャドーが誰かを襲おうとしている。
矢島はよく分かっていない敬介のほうを見ながら答えた。
シャドーが来たって、
なんで分かるんですか?
まだ修行を終えていない敬介には、
その感覚が分からないのだ。
しかし、
シャドーが来たということは、
もたもたしていられない。
その質問の答えは後でだ。
まずは、行こう。
そういって、矢島は石段を駆け下りていった。
後に美咲も続き、
さらに2、3秒遅れて敬介も駆け下りた。