さて、そろそろ学校に行くかな

玄関で靴を履き、

そのまま家を出た。

昨日、

矢島光一と出会い、

中級の修行を始めることになった敬介。

しかし、

まずはお互いのことを知ってからということで、

いくらか話をしただけでその日は解散した。

パンクしていた自転車は直り、

いつもの通学路を走っている。

今日は時間ギリギリではないため、

慌てる必要はない。



でも、

修行が順調にいっているおかげなのか、

どこか気分がいい。

しばらくして、

学校に着くと、


校門前にはすでに生徒達がいた。

その様子を見て、

いつも通り変ることのない平凡な日常を歩んでいる。

敬介はそう思った。

さらに、

なぜ、シャドーは人間を襲うのか。

自分の場合は、

影石というシャドーにとって、

大切な物を拾ってしまったからだというのは分かるけど、

他の人間を襲うのに、

何の目的があるのかは分からない。

矢島さんに会った時にでも聞いてみるか。

そういって、自転車を降り、駐輪所に停めた。

玄関に着き、下駄箱に向かう。

自分の靴箱に手をかけ、開こうとすると。

形山。
おはよう。

おはよう。

前川だ。

たまたまこいつとの会話がきっかけで、

超初級の修行を成功させることができた。

いくらか感謝はしているのだが、

話すわけにはいかない。



光術士を目指して修行してる

なんて言ったらどうなることやら。

靴を履き替えていると、

前川が少しだけ心配そうに聞いてきた。

今日は普通だな。
なんか昨日は変だったからさ。
大丈夫か?

前川のやつ、よく見てるな。

こいつは昔から人の雰囲気を察するの上手いんだった。

まぁ、大丈夫だって。

それから、一緒に教室へと向かった。

その頃。

カラウと矢島はとある路地裏にいた。

散らかっているわけではないのだが、

近くにあるゴミ箱や換気扇からの色々な臭いで

空気はあまりよろしくない。

そんなことは気にも留めず、

二人は話していた。

ねぇ、カラウさん。
なぜ敬介君に光術士の修行をさせることにしたんですか?

運が悪かったんだよ。
もし、
修行をする気にならなかったとしても、
教えることになっていたはずだ。

美咲や敬介と一緒にいる時には

ふざけてばかりいるのだが、

真面目に話している。

それはいったい?

矢島も、

急遽修行に付き合わされる、

その理由が気になっていた。

そろそろ……、
"あいつら"が動き出す。
そのために、
こっちも戦力が必要だったってわけさ。

あいつら?
……まさか!!

矢島の驚き後に、

カラウは腕を組み壁にもたれかかった。

俺の予想より早い開戦ってわけさ。
だからこそ鍛える必要があるのさ。
素質のあるやつを、な。

それは美咲ちゃんも知らないのでは?

矢島の表情が少しずつけわしくなっていく。

まだ、


光術士としての経験の浅い美咲と、


ついこないだ修行を始めた敬介。

この二人を戦力として考えるには、

かなり無理があった。

ああ。
だがお前らに任せるしかない。
お前は知っているが俺は……。

カラウは、

建物と建物の隙間から見える青空を見上げた。



その青空とは違い、

矢島から微かに見えたカラウの表情は曇っていた。

分かってますよ。
僕らで何とかします。

頼んだ。

この先動き出そうとしている何かに向け、


カラウと矢島も動き始めた。

カラウと矢島が話を終えて数時間が経った頃、

昼休みに入り昼食を食べ終えた敬介は、

美咲のいる2年8組の教室前に来ていた。

他のクラスになど滅多に行かないので、

かなり緊張している。

あのー、天野さんっていますか?

そう言いながらドアを開けた。

いるよー!

わっ!?

すぐに返答があったためびっくりしたのだが、

美咲は廊下側の一番前の席に座っていたのだ。

そんなに驚かなくても。
何かあった?

いや、その……。

ただ、

話しているだけなのだが、

周囲からの視線が熱い。

全員ではないが、

このクラスのほとんどが、

自分に注目している気がしていた。

ちょっと、こっち来て!

え?!

少し強引ではあるが、

美咲の腕を引っ張り教室から出た。

二人の去った教室では、

今の光景を見た生徒達が盛り上がり始めていた。

最近、あの二人怪しいよね。
付き合ってるのかしら?

えー。
なんか男の方はパッとしない感じじゃない?

でもでも。
開校記念日の時に楽坂公園で、
デートしてるの見たって人いるよ!

高校生ともなればこの手の話は大好きだ。

直接話は聞かぬとも、

敬介は今一押しの話題の中心にいた。

美咲を連れ出した敬介は、

球を浮かせることに成功した中庭に来ていた。

もぉー!!
いきなり私の腕を引っ張っていくから、
びっくりしたよー!!

ちょっと怒り気味なのだが、

頬を軽く膨らませてる感じが可愛かったので、

笑ってごまかした。

ごめん。
なんか教室では話しづらかったからさ。

それならいいけど……。
話って?

首をかしげて聞き返す美咲。

うん。
シャドーの目的について、
前に楽坂で話した時に分からないって言ってたけど……。
やっぱり気になってさ。

矢島に聞くつもりだったのだが、

何か自分一人ではモヤモヤしてしまって、

気持ちが悪かった。


それで、

美咲の意見も聞いてみることにしたのだ。

うーん、そうだねぇ……。
あくまで私個人の意見だけど、
光が欲しいんじゃないかな。
影人間っていうくらいだし。
光に憧れてるとか。

なんとなくで言ってるのかもしれないが、

敬介には割りと納得のいきそうな答えだった。

光をねぇ……。
ってことはさ!!

昼休み終了のチャイムに遮られてしまい、


会話が途切れた。

チャイム鳴っちゃったね。
ごめん。
次体育だから先に戻るね。
また放課後にね!

そういって、走っていた。

まぁ、
放課後に矢島さんに聞くか……。

って俺も急いで教室に戻らないと!!

何を安心していたのか、

敬介も走って教室に向かった。

第1章-力の目覚め編-(18話)-矢島光一②-

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