光術士の修行を開始した敬介は、
超初級、初級と少しずつこなしていった。
そして、
次の修行のために、
矢島光一という男が現れた。
光術士の修行を開始した敬介は、
超初級、初級と少しずつこなしていった。
そして、
次の修行のために、
矢島光一という男が現れた。
よろしくね。
とても爽やかに握手を求められ、
敬介は思わずその手を握った。
よろしく、お願いします。
特に嫌な気持ちにはならない。
光一さん。
お久しぶりです。
美咲が矢島にお辞儀をした。
久しぶりだね、美咲ちゃん。
やはり二人は知り合いのようだ。
一体どういう関係なのだ。
カラウさん。
僕は何をすればいいですか?
カラウ?
おっ、バカ!
こいつらには名前教えてなかったのによ。
すいません。
いきなり慌てだしたその男に、
矢島は苦笑いで謝る。
しゃあないな。
俺の名前はカラウだ。
まぁ、覚えなくてもいい。
やっとこの男の名前が分かった。
いや、普通最初に名前ぐらい聞いとけばよかったんだ。
先生……
カラウ先生っていうのね!
やっと名前分かりました。
話の流れ的に、
美咲もこの男の名前を知らなかったようだ。
ちっ、矢島。
この小僧に中級の修行を仕込んでやれ。
俺はもう帰る。
名前を知られたことで機嫌を損ねたのか、
いきなり帰りだした。
あちゃー。
やっちゃったかな。
どこか抜けていそうな感じもするのだが、
言い知れぬ実力も感じていた。
どこか余裕があるのだ。
さて、だんだん暗くなってきたし、
今日は顔合わせがてら少し話でもして解散にしようか。
本格的に修行をするのは明日からということで。
カラウの時とは違い、
矢島の方が先生っぽさを感じる。
しかし、少しでも先に進みたい敬介は矢島に言ってみた。
矢島さん。
早く力を身に付けたいのですが……。
そう言うと思ったよ。
だけどね、
修行をするにもお互いの信頼関係が必要なんだ。
ここからの修行は下手をしたら死ぬからね。
君もまだ僕のこと知らないだろうから、
そんなやつに命を預けるなんて無理でしょ?
予想を超えた答えが返ってきた。
たしかに信頼関係は必要だ。
ただ、初級と中級の修行に差がありすぎる気がする。
命?
……そうですね。
敬介はそれしか言えなかった。
まず、
さっきから僕と美咲ちゃんとの関係を気にしているようだからそっからね。
あ!!
図星ではあるが、そんな心の内まで読んでくるなんて。
やっぱりこの人はすごいな。
特に理由はないのだが、そうとしか思えなかった。
美咲ちゃんが中級の修行をする時にも僕が教えたんだ。
だから、先輩後輩みたいな感じだよ。
美咲との関係は分かった。
この人のことなら疑わなくても大丈夫だろう。
真面目人間に見える。
それと、君がシャドーに襲われた時に助けたのは僕なんだ。
こそこそとつけるようなことをしちゃったけど、ごめんね。
そうだったんですか!!
ありがとうございました。
もうだめだと思ったんだけど、
なんとか助かったから……。
もし助けてくれた人がいたら、
ちゃんとお礼がしたかったんです。
本当にありがとうございました。
深々と頭を下げ、お礼をする敬介。
たった数分話しただけなのだが、
この時点で敬介の矢島に対する信頼度は、
かなり上がっていた。
光一さんが助けてくれてたんですね。
でも、なんで?
美咲も敬介が誰に救われたのかは知らなかったのだが、
どこか安心した様子で聞いた。
あー。
それはカラウさんに頼まれたからさ。
偶然、影石を拾った男の子がいるから守ってやれって。
まさかの、あの男からの指示だった。
あんなに雑な男が、
自分を助けるために手を回していたとは。
そうだったのか……。
意外すぎて、
感謝の気持ちがなかなか湧いてこない。
あの人はあんな感じだけど、
けっこういい人だからね。
爽やかな笑顔は美咲同様、
その場の雰囲気を和ませる。