突然と敬介の目の前に現れた"先生"と呼ばれる男。
突然と敬介の目の前に現れた"先生"と呼ばれる男。
驚き尻餅をつき男を見上げる敬介を、
逆に上から笑って見下ろしていた。
最悪な出会いとしか思えなかった。
ここから、
この男に対する信用度は
どんどん下がるだろうと敬介自身が確信した。
もぉー!!
先生こういう悪戯本当にやめてくださいよ。
悪かったな、小僧。
ついつい、からかいたくなるんだよな、俺。
美咲が先生と慕っている?のかは分からないが、
この男のいいかげんさは分かる。
ちょっと、なんですかさっきから?
それに俺は小僧じゃないです。
形山敬介って名前があります。
立ち上がり、
少し起こり気味の敬介に何かを察したのだろう。
そっかぁ名前くらいあるわな。
よし分かった!
で、俺になんのようだ小僧。
しかし、また笑い出し話が前に進まない。
…………。
先生、私が形山君を連れてきたのは……。
あー、分かってる。
どうせ光術士になりたいんだろ?
!!!!
それ!
と言わんばかりに美咲が指を縦に振る。
この小僧がねぇ……。
…………。
男は敬介の顔を見ながらそう言い、さらに一言。
ダメだな。
才能のかけらもないな。
こいつには光術は使いこなせないだろうな。
残念だ。
!!!!
なんだかんだ光術士になれると思っていたのだが、
そうでもなかったみたいだ。
ちょっと、先生?!
困った顔で美咲が言うが、
ダメダメというように男は首を左右に振った。
待ってくれよ!!
なんで才能がないなんて分かるんだよ。
ただ俺の顔をみただけだろ!!
なんとなく……だな。
さっきから訳の分からないことばかり。
もういい、俺は帰る。
天野さんごめん。
そういって、石段を降りていく敬介。
先生!!
なんで形山君に才能がないなんて?
私だって普通の女子高生だったんだよ。
それでも少しずつ光術を使えるようになったじゃない。
説得するかのように喋る美咲に男はため息を吐いた。
違うな。
あの小僧とお前には決定的な違いがある。
これに関しては本当にどうしようもないだろう。
そんな、どこに違いが?
先程までふざけていた男が真剣に語りだすのを見て、
美咲もまた真剣な表情になる。
それはな……。
謎の緊張感に駆られ始められた。
お前は女。
あの小僧は男。
ただそれだけだ……。
緊張は一瞬で解かれた。
何それ!?
たったそれだけで、
才能がないなんて言ったんですか?
ああ。
そういえば諦めるしかないだろ。
女ならともかく、
なんで俺が好き好んで男に修行を
つけてやらんといけないんだよ。
もうっ!!!!
言葉にならない怒りを抑え、
美咲は石段を降りていった敬介を追いかけた。
はぁ、優しいねぇ。
この世界に関わらせないほうが、
奴にとっての優しさだと思うんだがな。
男はそのまま姿を消した。