すみませーん。
このクラスに形山君っていますか?

4時間目の授業が終わり、
昼休みに入って2分経った頃、
敬介のクラスに美咲が訪ねて来た。

そして、
なぜかクラスの男子がざわつき始めた。

おいっ、あれって形山の彼女か?

いやいや、あの天野が誰かと付き合ってるなんて話聞いたことないぞ。

だよな、それに形山かよ。

教室のあちこちで勝手な推測がされている中、
教室の廊下側一番前の席に座る女子が答えた。

形山君なら前川君と購買部に行ったっぽいよ。

あっ、そうなんだ!
教えてくれてありがとう。
ではでは。

教室のドアを丁寧に閉めて美咲は去っていた。

しかし、教室内では更にざわつき始めていたのであった。

今日は焼きそばパンにしたけどさー。
形山のコロッケパンとバクってよ。

はぁ?何言ってんだよ。
俺がコロッケパンが好きなのは小学校の時から知ってるだろ!!

そう、敬介と前川は小学校からの付き合い。

小学校6年間、中学校3年間、そして高校に入学して1年、2年とずっと同じクラスなのだ。

ごめんごめん。
そんなの知ってるよ。
ちょっとからかっただけさ。

ならいいけど……。
コロッケパンだけは死んでも渡さねぇ。

この情熱。
ここまで食べ物に執着するのもすごいが、
人間誰しも好きなことにはコレくらい執着してしまうものだろう。

こんな二人のやり取りが終わった頃だった。

あー!
いたいた。
形山君!!

購買部の傍を歩いている敬介に美咲が声をかけた。

あれ、天野さん!
学校で会うのは初めてだね。

そうだね。
形山君ちょっといい?

え、あ、うん。

学校で女子と話すこともあまりない敬介。
こんなところで話すのにも少しばかり緊張していた。

形山、俺先に教室戻ってるわ。
じゃ、頑張れよwww


そういって、教室に戻っていく前川。

最後に、耳元で半笑いになりながら一言だけ言っていったのは内心ムカついている。

前川め……。

ごめんね。
友達とこれからご飯だったんでしょ?

いや、いいんだ。
それより何だっけ?

目の前で手を合わせ謝る美咲を見て、
またもや可愛いと思ってしまっていた。

ヤバイな、俺この娘のことが好きなのか?

と、思春期ならではの葛藤が心の中で少しあった。

こないだ形山君とぶつかった所で会ったでしょ。
あの時は言わなかったんだけど……。

美咲が話をためらった辺りで……。

一目見てからあなたのことが好きになりました。

付き合ってください!

なんて展開かとドキドキしたのだが……。

うん。
気にしないで言ってよ。
覚悟はできてる。

覚悟も一瞬ででき、
告白を今か今かと待っていると……。

じゃあ、言うね。
実はあなた……。

心臓のバクバクが速くなっていく。

悪い霊に取り憑かれてます。

真剣な表情でそう言われた敬介は、
苦笑いのまま固まった。

へ…………?
えっ、と…………。

えー!!
俺が取り憑かれてるーー?!

普段大きな声は出さないが、こればっかりは叫ばずにはいられなかった。

第1章-力の目覚め編-(5話)-昼休みの告白-

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