昨日、学校の帰りに天野美咲という少女に出会ったことで、本来の目的を忘れて帰宅してしまった敬介。
しかし、今日は土曜日。
普段であれば休みの日には家でだらだらして過ごすことが多いのだが、今日は昨日のやり残しを片付けに行くことにしていた。
あの交差点に何かあると確信しているが、それを自身の目で確かめなければ気がすまない。
昨日、学校の帰りに天野美咲という少女に出会ったことで、本来の目的を忘れて帰宅してしまった敬介。
しかし、今日は土曜日。
普段であれば休みの日には家でだらだらして過ごすことが多いのだが、今日は昨日のやり残しを片付けに行くことにしていた。
あの交差点に何かあると確信しているが、それを自身の目で確かめなければ気がすまない。
さて、そろそろ行くかな。
ふと、窓の外を見ると雲一つない青空が広がっていた。
この辺りはそんなに通ったことないからあんまり知らないんだよな。
どんだけ地元知らないんだよ、俺。
休日にはだらだら家で過ごすような生活をしてきたのだからしょうがない。
特に友達が多いわけでもないし、部活に入っていたようなこともない。
本当に平凡だな。
何か他人と違うようなところをあげるとすれば、それは……これといってない。
そう、敬介は平凡。
ごく普通の高校2年生なのだ。
とりあえず、
ぶつかった辺りを探してみるか。
そういって、歩道を四つん這いになって、見えない何かを探し始めた。
探し始めてから30分くらい経ったと思うが、まったくそれらしきものは見つからない。
なんせ、見えないのだから、どんな形かすらも知らない。
途中、通行人に一緒に探しましょうかと声をかけられたり、警官に警戒されたりと気まずかったが、それよりも知りたいという気持ちが勝った。
なんか、
このまま帰るのは消化不良だな。
一体俺は何にぶつかったんだよ。
諦めて帰ろうとした時だった。
快晴のなか照っている太陽の光が、敬介の足元に落ちている小さな何かを照らした。
たまたまそれに気づいた敬介は、拾い上げてみる。
なんだこれ、なんかのかけら……。
いや、ガラスの破片か何かか?
太陽の光に当てるように腕を上げて眺めていると、少し離れたところから声がした。
あれ、もしかして昨日の……。
君は……。
天野美咲さん!?
うん。
一応覚えてくれてたんだね。
何見てるの?
いや……特には。
かなり早い段階で美咲と再会したことに驚いた敬介は、慌てて持っていた破片をポケットに入れた。
そう?
もしかしてけっこう近くに住んでるの?
いや、近くはないけど学校が近いからさ。
幼少期からあまり女子とは話さなかったので、どこか会話がぎこちないような気がする。
もしかして、茜桜(あかねざくら)?
そうそう!もしかして天野さんも?
茜桜とは敬介が通っている高校のことである。
正式には、
『私立茜桜学園高等学校』といい、歴史はそこまで長くない。
うん、2年8組だよ。
2年って!!
え、同級生じゃん!!
俺3組だよ。
まさかの同じ学校、同じ2年生だった。
これは、敬介には意外ではあるが、かなり嬉しい展開であろう。
そうなんだ!!
すごい知らなかった。
まぁ、クラスも離れてるし接点もなかったからね。
だよね!
それにしても驚いた。
今日は何か用事でも?
う、うん。
そ、そうだった!!
じゃ、じゃあね!
急に挙動が変になり、美咲はかけていった。
敬介は、聞いちゃまずかったかと思ったが、
とりあえずもう少しだけ何かを探してみることにした。
美咲と別れてから30分。
だいたいトータルで1時間くらい探したのだが、納得のいくものは一つも見つからなかった。
やっぱり俺の気のせいだったのか。
あーあ、せっかくの休みだったのに無駄になっちゃったな。
帰ろう。
気になったことは気が済むまで調べたがるのだが、熱しやすく冷めやすいというのもあるのだ。
まぁ、これはこれでありかな。
何も解決しないまま、ただ美咲と同じ学校の同学年ということだけは分かったのが嬉しかった。
そして、敬介の笑みを浮かべながら帰宅しようとする様子を影から見ている者がいた。
あれも持って帰るとは……。
まさか見えているのか?
そういって、その場から消えた。