ざわつく購買部の前では、
購買部名物『おばちゃんの激ウマ弁当』
を手に入れた者が誇らしげに弁当を掲げていた。
勝者の3年生はそのまま笑いながら大事そうに弁当を抱え教室に戻った。
一応、その弁当を狙っていた敬介と前川もそこにいた。
ざわつく購買部の前では、
購買部名物『おばちゃんの激ウマ弁当』
を手に入れた者が誇らしげに弁当を掲げていた。
勝者の3年生はそのまま笑いながら大事そうに弁当を抱え教室に戻った。
一応、その弁当を狙っていた敬介と前川もそこにいた。
うわー!!
今日もあの弁当は食えないのかぁぁ!!
やっぱり早朝から学校に来てないと無理みたいだな。授業始まるからとっとと教室戻ろうぜ。
がっくりと肩を落とす前川はとぼとぼと教室へ向かう。
敬介はそれを苦笑いでなぐさめた。
さらに時は経ち、放課後に。
学校の外に出た敬介は自転車である場所に向かっていた。
そう、今日の事故?現場である。
普段は通らない場所なのだが、見えない何かにぶつかったことが気になり落ち着かなかったのだ。
気になったら、とことん調べたくなってしまう敬介は早朝と同じく猛スピードで自転車をこいでいた。
あそこにいけば、絶対に何か痕跡があるはずだ!!
そして、例の曲がり角に差し掛かった頃に……
きゃぁぁぁぁ!!
うわぁぁぁぁ!!
曲がり角から突然現れた人影に驚き、避けた勢いでそのまま自転車から落ちてしまった。
痛っ……くそっ、これで二度目だぞ……それより今の!!
一瞬は、また見えない何かにぶつかったと思ってしまった敬介だが、目の前には自分と同い年くらいの少女がうずくまっていて、こっちを見ていた。
もう、なにー!!
ちょっと危ないでしょ!!
猛スピードで曲がってくるなんて。
はいているスカートの土埃を払いながら少女は立ち上がった。
ごめん、その……、
怪我とかしてない?
とりあえず、怪我をさせていないか心配だった。
パンをくわえた少女と曲がり角でぶつかり、
それをきっかけにカップルに……なんて話もあるけど、
そんな状況ではないことは敬介も理解していた。
しかし、あれ、ちょっと可愛いかも。
そんな風にも思っているのだった。
とりあえず、私にぶつかる前にあなたが勝手によけていったから、はずみで転んだだけで済んだし大丈夫よ。
あなたは……
見たところそんなたいした怪我してないわね。
それなら良かった。
少し安心した。
そしたら、
今度自転車に乗るときは気をつけてね。
じゃあね。
少女はそういって去ろうとしたのだが、何を思ったのかとっさに声が出てしまっていた。
あの!!
君の名前は?
俺は形山敬介!!
え?名前って……。
まぁ、偶然とはいえお互い名前くらい知ってた方がよさそうね。
事故みたいなもんだし。
私は天野 美咲(あまの みさき)。
それじゃあね。
少女はニッコリと笑って、こんどこそその場から立ち去った。
少しの間、呆然と立ち尽くしていたのだが、我に返る。
あまのみさきか……。
かわいい……。
一目惚れというやつなのだろうか。
そのまま現場を調べることを忘れまっすぐ自宅に帰った。