ある満月の夜。
とある少年は自室の窓からその月を眺めていた。
赤く光る不気味な月を。
ある満月の夜。
とある少年は自室の窓からその月を眺めていた。
赤く光る不気味な月を。
こんな日に"アレ"だなんて、
ついてないな。
そういって、カーテンを閉め、
部屋を出て行った。
この少年のいう"アレ"とはいったい何のことなのだろうか。
1週間前
快晴といっていいほど気持ちよく晴れている。
午前8時25分。
やばい、遅刻だー!!
大きな声で叫びながら、自転車をこいでいる少年、
形山 敬介(かたやま けいすけ)。
額には汗をかき、肩からかけているバッグが背中で激しく揺れている。
いつもの通学路とは違う裏道を、猛スピードで進んでいく。
そして、大きな通りに出るちょうど曲がり角の所で……
大きな音と体にはしる衝撃で目を閉じてしまっていたが、痛みで目を開ける。
自転車から転げ落ちているが、たいした怪我はしていなさそう。
しかし、問題はそこじゃない。
敬介は目の前の光景に驚愕した。
別に、誰かとぶつかって体が入れ替わってしまったとか、誰かをひき殺してしまったというわけではない。
そこには何もないのだ。
そう、何にかにぶつかったはずなのだが、人も、物すらもない。
あれ、どういうこと?
頭を無造作にかいて、倒れた自転車を起こす。
ふと、スマホで時計を見ると"8:32"の文字が……
遅刻確定だぁぁっ!!
再び、大慌てで学校を目指す。
形山、明日は遅刻するなよ。
そういって、担任は朝のホームルームを終え、2年3組の教室を出て行った。
生徒達は1時間目の授業の準備をし始める者や教室を出てほかのクラスに行く者など様々である。
横に8列、縦に5列とよくある机の配置、敬介の席は窓側の前から3番目にあった。
そこに同じクラスの前川(マエカワ)がやってきた。
おい、今日も遅刻かよ。
しかたないだろ。
今日は絶対に間に合うはずだったのに、
透明な何かにぶつかったんだからよ。
前川は子供騙しに付き合うかのように、
少し笑いを堪えながら聞いた。
はぁ、透明なって何だよ?
俺だって知らねぇよ。
でも目に見えない何かにぶつかったんだ……。
間違いない。
真剣な表情で答える敬介に前川は突っ込むのを止めた。
そうだ、今日購買部でおばちゃん特製の激ウマ弁当が出るらしいぜ。
マジかよ前川!
それは行くしかねぇな!
二人は始業まであとわずかだが、教室を出て購買部へ向かった。