アレスくんたちと別れた僕たちは、
ガイネさんの言葉に従って
地底都市アンカーのリムさんを
訪ねることにした。


アンカーはデビルズキャニオンを
さらに北に進んだ場所にあるらしい。
僕たちはそこを目指して渓谷の道を進んでいる。


サララが新しく旅に加わったけど、
王都からずっと一緒だった
セーラさんがパーティを離れてしまって
すごく寂しいし不安もある。



狡猾なやつが敵として現れたら、
僕たちだけで対処できるんだろうか……。
 
 
 
 
 

カレン

わっ!

 
 
 
 
 

トーヤ

うわぁっ!?

 
 
背後から突然に声をかけられ、
僕は心臓が止まりそうになるくらい
ビックリしてしまった。

振り向くとそこには悪戯っぽい笑みを浮かべた
カレンの顔があった。
 
 

カレン

なぁ~に深刻そうな顔をしてるの?
あまりボケッと歩いてると
岩に足を引っかけて
転んじゃうわよ?

トーヤ

あ、そうだね。

ライカ

トーヤさんはセーラさんのことを
考えていたんですよね?

トーヤ

うん、こうして離れてみると
本当に彼女の存在って
大きかったんだなぁって
あらためて感じてます。

カレン

頼りになったもんね。

クロード

トーヤ、安心してください!
セーラ様の代わりは
私が立派に務めてみせますので。

カレン

クロードがぁ~?
私は不安しかないんだけど。

クロード

セーラ様から色々な道具を
預かっています。
私の道具もありますから
困った時にはお任せください。

トーヤ

うん、頼りにしてるよ。

クロード

はいっ!

サララ

…………。

 
 
ふと視線を後ろへ向けると、
サララはやや暗い顔をしてついてきていた。

ひとりだけ距離が離れている感じ。
空気も重いみたいな気がする。
 
 

トーヤ

どうしたの、サララ?

サララ

皆さん、
本当に仲がよろしいですね。
私みたいな新参者は
入りにくいというか……。

トーヤ

何を言ってるの?
サララも一緒に旅する仲間だよ。
遠慮せず話に入ってきて。

カレン

そうそう。
クロードなんかより
よっぽど親しみかあるわよ。

ライカ

何かがあれば
気軽に相談してくれていいですし。

サララ

ありがとうございますっ!

 
 
ようやくサララに穏やかな笑顔が戻った。

するとカレンはすかさずサララに歩み寄り、
背中から抱きつく。



実年齢はサララの方が圧倒的に上のはずなのに
こうして見てみると
カレンの方がお姉さんみたいだなぁ。
 
 

トーヤ

ところでクロード。
アンカーまでどれくらい
距離があるのかな?

クロード

まだまだ先でしょう。
この渓谷を抜けた先ですから。

 
 
ということは、
目視できる範囲から岩肌がなくなるまで
進まないといけないってことかぁ。

じゃ、少なくとも数日はかかるんだろうなぁ。
 
 

ライカ

アンカーといえば、
魔界の中でも北の端にある
町のひとつです。
どうしても時間はかかりますよ。

トーヤ

へぇ、そうなんですかぁ。

クロード

アンカーは魔界でも有数の
鉱工業が盛んな町。
そこではミスリルを
採掘しているのですよ。

カレン

ミスリルって稀少な魔法金属よね?

クロード

えぇ、魔力を持った剣や鎧を中心に
様々な魔法道具に加工されます。
ですから古の時代より
重宝されてきました。

トーヤ

セーラさんがいたら
跳び上がって喜びそうだよね。

カレン

かもねっ♪

サララ

あのあの、でも最近は
採掘量が減ってきていると
聞いたことがあるのですが?

ライカ

資源ですから採掘を続ければ
いつかは枯渇するでしょうね。

クロード

その話は聞いたことがあります。
ただ、私やマイルは
そこに疑問を持っていたのですよ。

 
 
クロードは真剣な表情になり、
腕組みをしている。

何か思うところがあるのかな?
 
 

トーヤ

どういうこと?

クロード

アンカーのミスリルの埋蔵量は
まだ余裕があるとされています。
それは公の地質調査で
判明している事実ですから。

クロード

なのに採掘量が減っているなんて
おかしい話です。
でも流通量は確かに減っています。
それはつまり――

カレン

採掘から出荷までの間に
問題が生じている可能性がある。
そういうこと?

クロード

さすがカレン様。
私やマイルも同じ考えです。
ですから機を見て調査人員を
派遣する予定だったのですよ。

クロード

図らずもその役割は
こうして私自身が
担うことになりましたけどね。

カレン

っ!?

 
 
突然、カレンは険しい表情になって
レイピアに手をかけた。
直後にライカさんやクロードも周囲を警戒する。

僕とサララはわけが分からず
キョトンとしている。
 
 

カレン

敵さんのお出ましのようね。

クロード

みたいですね。
しかもこれは厄介な相手です。
見た目もグロくて嫌いですし。

ライカ

トーヤさん、サララさん。
下がってください。

トーヤ

えっ?

 
 
レイピアを構えたカレンと
剣を構えたクロードが前に出た。
そしてライカさんは小声で魔法の詠唱を始める。

僕はとりあえずフォーチュンを握りしめ、
周囲を見回す。
 
 

サララ

っ!? トーヤくん、
もしかしたら相手はトロルかも。

トーヤ

トロル?

サララ

ガイネさんの小屋の近くにも
たまに現れていました。
体力自慢で脅威の回復力も
持っています。

クロード

――正解です。

ぐぁああああぁーっ!

 
 
 
正面の岩陰から僕たちの身長の
倍以上はある巨体が姿を現した。

――幸い、相手は単独みたい。
 
 

クロード

完全に絶命させない限り
立ち上がってくるでしょう。
タフで厄介なヤツですよ。

カレン

私とクロードが直接攻撃をするわ。
トーヤはフォーチュンで援護を。
ライカさんは光系魔法で
トドメの一撃をお願いします。

ライカ

はい、結界魔法が完成したら
すぐに攻撃魔法へ入ります。

クロード

そうか、ライカ様は光系魔法が
得意でしたね。
トロルの弱点は光ですから
かなりの効果が期待できますね。

サララ

あのあの、私は……。

トーヤ

サララは防御魔法って使える?

サララ

は、はい。

トーヤ

じゃ、クロードやカレンに
かけてあげて。

サララ

や、やってみます。
成功率は低いかもですが。

 
 
僕たちはそれぞれの役割を持って
トロルと対峙した。

僕は足下に落ちていた手頃な大きさの石を
フォーチュンにセットする。


回復力が優れているなら僕の攻撃は
あまり意味がないかもしれないけど、
うまく急所に当たれば倒せる可能性はある。
 
 

 
 
次回へ続く!
 

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