桐谷 シルク

忘れちゃだめだ。思い出せ、大切な、とっても大切なひとなんだから!

だけど、頭を使えば使うほどに、そこに靄がかかったように私の記憶は曖昧なものになっていく。

桐谷 シルク

忘れたくないよ。また会いたい。会って、今度こそあいつに私の気持ちを伝えるんだ! だから

三枝 美樹

シルクちゃんの気持ちって?

綾瀬 咲月

そんなに大切なことなのか?

青葉 桐斗

聞かせてもらってもいいか?

桐谷 シルク

私の気持ちは…気持ちは...

藤峰 明人

桐谷!? 大丈夫か!?

黒須 美幸

桐谷先輩!?

白石 未筝

どうしたの!?

涼紘 夏美

ちょっとシルク!?

羽鳥 宇美

ど、どうしよう…

私の意識は、暗闇に溶けていった。

都 大樹

皆は。僕のことはもう忘れてしまっているころだな。そして多分、シルクもそろそろ…

最後になるかもしれないこの場所で、一人呟く。あるいは、永遠に閉じ込められるかもしれない運命の分岐点。

そこは、奇しくも彼からヒントを得た彼女の家だった。

都 大樹

僕が戻れれば、全てが元通り、みんなが笑える幸せな世界。だから、何としてでも…!

部屋に入ってすぐに、それを見つけることが出来た。手を、伸ばす。

そして。

そして、、、

そして————

桐谷 シルク

ん・・・ここは

涼紘 夏美

し、シルク!? 目が覚めたのね!?

三枝 美樹

よ、良かった…目を覚まさないかと思って心配したよ

羽鳥 宇美

シルク…せ、先生呼ばなくちゃ

白石 未筝

ぶ、無事で。よがっだよ…

綾瀬 咲月

こらこらお姉さま。気品が全くなくなってるぞ。それとよく目覚めたなシルシル。私は信じていたよ

黒須 美幸

私も、安心したら気が抜けました

桐谷 シルク

みんな、どうしたのよこんなに集まって…ていうかここ病院? 何で?

三枝 美樹

覚えてないの? あの不思議な女性のいた場所でシルクちゃん突然倒れて、半日も眠ったままだったんだよ!

綾瀬 咲月

病院の先生は原因が全く分からずお手上げ状態だったからな

羽鳥 宇美

私たち、祈ることしかできなかった

黒須 美幸

でも、先輩だけが諦めなかった。きっと、そのおかげなんですよね

涼紘 夏美

まあ、今回くらいはあいつも役に立ったって事よね。流石、シルクが見込んだだけのことはあるわ

桐谷 シルク

そ、そうだ大樹、大樹は!!…ってあれ、そうだ大樹だ。名前、思い出せてる

白石 未筝

そのことなら全部聞いたよ

藤峰 明人

桐谷!? 良かった、目が覚めたんだな?

青葉 桐斗

そうか…あいつは、やったんだな

桐谷 シルク

ねえ、全部聞いたって何を? 大樹はどうなったの?

藤峰 明人

それは、本人に直接聞けよ

青葉 桐斗

あいつも、お前と話したがってたからな。行ってやれ

桐谷 シルク

うん! ありがと、行って来る!!

都 大樹

これで、全部終わった

桐谷 シルク

大樹!

都 大樹

きり…シルク! そうか。目が覚めたんだね

桐谷 シルク

何であんなことしたのよ!? 私、もう会えないと思って…それで、大樹のことはどんどん忘れちゃうし、もうどうしたらいいか分からなくなって…だから!!

都 大樹

ご、ごめん。だけど、どうしても助けたかったんだ。シルクのことが、大好きだから

桐谷 シルク

ば、馬鹿! 大樹だけずるい。私にも言わせなさい!!

都 大樹

はは。分かった。聞くよ

桐谷 シルク

私も…私も大樹のことが大好き! あんたよりも、ずっとずっと好きなんだから!

都 大樹

ありがとう、シルク

心地よい風が吹いた。澄み切った、一凪の風が、花畑を揺らし甘い匂いを運んでいく。

そんな、物語の様な美しい場所で、優しい風が重なる僕らを包み込んだ。

桐谷 シルク

それで、どうやって戻って来たの? もう花は残ってなかったでしょ?

都 大樹

ああ、それなら、思い出したんだよ。ミヤコワスレ手に入れて、それでもその花と一緒に消えることがなかった人物を、一人ね

桐谷 シルク

そんな人が本当にいたの?

都 大樹

ああ。シルクは知らないだろうけど、綾瀬が僕のカバンからミヤコワスレを一本盗んだんだ。僕はその時、綾瀬が本物で花の力でこっちの世界に戻ったと思っていた。だけど、違ったんだ

桐谷 シルク

違った?

都 大樹

うん。綾瀬は実は偽物だった。だから、花と一緒に消えることはなく、記憶を取り戻しただけ。だから、綾瀬の部屋に行けば花はあると思ったんだ

桐谷 シルク

でも咲月の家を知らないでしょ?

都 大樹

それは僕の偽物が、「大学近くの一番高いマンションの綾瀬の部屋から、僕の様子を見ていた」って言ったから。だからすぐに見つけられた。鍵も開いていたしね

桐谷 シルク

そっか。でも流石大樹ね。惚れ直しちゃう。ね、もう一回ちゅーしてよ

都 大樹

ば、ばか…何を言って

桐谷 シルク

いいじゃない。誰も見てないんだし

都 大樹

じゃ、じゃあ。失礼します!

桐谷 シルク

ははは、意識しすぎ。ん

そうしてまた、僕らは重なった。

木の陰から覗く彼らには気付かずに。

藤峰 明人

いやー、見せつけてくれるね

涼紘 夏美

シルクってあんなに大胆だったのね

白石 未筝

お、お姉さんにもちょっと刺激が強すぎるな

綾瀬 咲月

唇を重ねることに意味があるのか?

黒須 美幸

咲月はもうちょっと女心を身につけた方がいいと思います!

青葉 桐斗

流石都だ。俺も、見習わないとな

三枝 美樹

え!? 桐斗くんも好きな人が!? いやいやまさかそんな...

羽鳥 宇美

リア充のバカヤロー!

悪夢はもう終わった。
これからは、幸せな時間をみんなと過ごして行こう。

僕たちは、またいつもと変わらない日常に戻って行く。

少しだけ、新しい変化を経て。

都 大樹

シルク、大好きだ!

桐谷 シルク

私も

こんにちは。ご覧頂きありがとうございます。

ついに、無事完結することが出来ました!

ストリエのサービス期間内に完結できたのは、読みたいと言ってくれる皆様がいたおかげです。そして、素敵なイラストにもたくさん助けられました。

色んな人とつながって作品ができるこの素晴らしい場所できちんとした終わりを迎えられたことを嬉しく思います。

最後まで読んでくれた皆さん、背景、キャラ、挿絵でお世話になりましたイラストレーターの皆さん、本当にありがとうございました!!

それでは、機械がありましたらまたいつか、私の作品を読んで頂けることを願って、今回はこの辺りで失礼します(*- -)(*_ _)ペコリ

43.都忘れ【最終話】

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