大事な人なんだ

また、洞窟の中を歩いていた。
今度は5人(?)で。

経次郎

この中にちゃんとした人間、いるのかな?

天叢雲


天叢雲剣の御霊。
間違いなく人間ではない。


天狗。
人間ではないようだ。

海爾


父さん。
天狗と人間のハーフ

慶子


同い年の妹。
天狗の血が四分の一。

経次郎

あれ?
ボクもそうなのか?

人間がいない……?

経次郎

ボクが人間じゃないってわかったら、静香、それでもいいって、言ってくれるかな?

経次郎

まいっか。

来た道とは、たぶん違う道を、ボクらは歩いていた。

経次郎は、小5から、ずっと静香って子につきまとっていたと。

経次郎

つきまとってたっていうか……。
声をかけてたんだけど、気づいてもらえなかった?

経次郎

家には、毎週行ってたし……。

部屋に潜んで盗撮とか?

経次郎

違うよ。
お母さんと仲良くなって、おやついただいてたんだよ。

行動的なのかそうでないのか、よくわかんないな。

経次郎

行動は、してたけど、けっきょく、ボクは彼女のこと、何も知らないんだよね。

彼女だよね?

ボクはうなずいた。

経次郎

周りからの評価しか聞いてないんだ。

経次郎

もっとちゃんと本人と話して、彼女がボクをどう思っているか、聞きたいんだけど……。

静香

あんたなんか、好きなはずないでしょ!

経次郎

って、言われそうで怖いんだよね……。

言わないんじゃない?

経次郎

わかんないよ。彼女はいつも、ボクの予想と違うことを言ってたから。

経次郎

歴史では静御前は義経のお嫁さんってことになってるし、ボクも彼女のことが好きだけど

経次郎

それは歴史的にそうなだけであって、本当に彼女がボクのことを好きだったのかどうかはわからないんだ。

海爾

あの女は性悪でしたからな。殿が源氏の頭領の弟とわかると、手のひら返して嫁に来るような女です。

海爾

今度も伝説の英雄の生まれ変わりが目の前に現れて、有頂天になっているだけやもしれぬ。

経次郎

静香は今も昔もそんな女じゃないぞ。

慶子

殿は騙されておいでです。
我らがあの女の化けの皮を剥いでやります。
目を覚まされませ。

経次郎

二人とも、いい加減にしなさい。

経次郎

違うのに……。

経次郎

翔さん、どこに向かって歩いているんですか?

目が慣れてきたから懐中電灯なしでも見えるようにはなっていた。
それに、みんながいたから不安はなくなっていた。

海爾さん家に向かってるよ。
ちょっと離れた場所に出るけど、そんなに遠くないはずだよ

経次郎

どれくらいで着きますか?

もうすぐだよ。

経次郎

あれ?

一時間も歩いてない気がする……。

経次郎

オリハルコンが出た場所から、そんなに遠くないんですか?

地上を行けばかかるけど、ここは俺らのテリトリーだからな。

少しずつ、洞窟が明るくなってきた。

そろそろだな。

それから少し行くと、

工事中の看板と有刺鉄線……。

それをまたいで行くと、どんどん明るくなってくる。

そして、上から光が差し込んできた。

ここ登ったら、外ですよ。

天叢雲

おお、暖かい陽射しじゃ……。

久しぶりに見た、日光だった。

経次郎

でも、ここ、なんか見たことがあるような?

そう思いながら登って、上に出た。

経次郎

あれ?
ここって……。

近所の観光地……。

静香

お帰りなさい……。

あれ?
夢なのかな?

静香がいる……。

経次郎

ただいま……。

とりあえず、そう言うしかないよね。

静香

待ってたわよ……。

経次郎

ホントに?
嬉しいな……。

ボクは、彼女の怒りを、
鎮めることができるのだろうか?

信じてもらえない

かもしれないけど、

ボクは昔から、




キミのことが

大好きなんだ

続きは
千年に少し足りない恋へ

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