クロウくんは刃を振り上げたまま
なぜか動かなかった。
――いや、必死に振り下ろそうとしているけど
それができない感じ。
表情に焦りと困惑が見て取れる。
これはいったい……?
クロウくんは刃を振り上げたまま
なぜか動かなかった。
――いや、必死に振り下ろそうとしているけど
それができない感じ。
表情に焦りと困惑が見て取れる。
これはいったい……?
か……体が……動かない……。
なぜ……だ……?
当然だよ。
だって僕がキミの動きを
封じているからね。
なっ? 貴様はっ!
僕の大切な友達を
これ以上、傷付けさせるもんか!
貴様は……勇者っ!!!
あ……あぁ……っ!
そこにいたのはアレスくんだった。
横にはシーラさんの姿もある。
これは夢なんかじゃない!
だってこんなに体が痛いんだもん、
現実に決まってる!!
残念だったな、クロウ。
オイラたちはあくまでも囮だ~☆
トーヤを助けるためのなっ♪
本命はアレスとシーラだ。
俺たちは時間稼ぎをしていたに
過ぎなかったってわけさ。
さすがにこの展開は
予想もつかなかっただろう?
迫真の演技だったでしょう?
これでも私たち、
昔は詐欺師だったからっ♪
くっ!
シーラ、
トーヤくんに回復魔法を!
はいっ!
…………。
シーラさんは僕に駆け寄ってきて
回復魔法をかけてくれた。
光がすごく温かくて、気持ちいい。
僕は薬草師だけど、
回復魔法もたまにはいいかなぁって
思っちゃうな。
これで大丈夫です。
ありがとうございますっ!
シーラさん!
でも、どうしてアレスくんが
ここへ?
僕たちはサララを探すため、
魔界の旅をしてきたんだ。
その途中、
タックやアポロたちと出会ってね。
サララを?
サララは僕やシーラの恩人を
供養してくれたんだ。
そのお礼を言いたくて。
その話をしたら、
クリスくんには猛反対されたけど。
ふたりで押し切っちゃいましたっ!
アレスくんとシーラさんはクスクス笑っていた。
そうか、ここでもまた僕たちは
不思議な縁に導かれたんだね、きっと……。
くそぉっ!
こんなことがあってたまるかっ!
僕の計画が
ここまで狂わされるなんて!
改心する気はないの?
僕、キミの命までは奪いたくない。
僕は魔族だ!
勇者なんかに従うものかっ!
どうしても友達になれないの?
甘いぞ、勇者!
…………。
…………。
…………。
不意に周囲に無数の邪悪な気配が生まれ、
僕たちの方へ向かってきた。
殺意を放つ黒い影がどんどん迫ってくる。
シーラ、危ないっ!
アレスっ!
ぐはっ!
アレスくんはシーラさんを庇う形で
黒い影の攻撃を受けてしまった。
腕には刺し傷ができて、血が噴き出している。
するとクロウくんの体には自由が戻り、
すかさず僕たちから距離をとった。
アレスくんっ!
アレスっ!
アレス!!
う……く……。
今回は大人しく退いてやる。
だが、次は貴様ら全員、
確実に葬ってやる!
クロウくんは苦々しい表情を浮かべつつ、
その場から消えた。
きっと転移魔法でも使ったんだろう。
同時に黒い影もその場から消滅する。
ひとまずピンチは脱したみたい。
アレスくん、大丈夫?
うん、なんとか……。
トーヤくんこそよくがんばったね。
強くなったね。
うんっ!
その後、シーラさんがアレスくんに
回復魔法をかけた。
僕の回復薬を使っても良かったけど、
それは野暮だもんね?
そのあと、セーラさんやダンリさん、
眠らされていたほかのみんなの治療を
みんなで手分けしておこなった。
事情を知らされたカレンたちは
クロウくんが豹変したことに
すごく驚いていたみたい。
まぁ、当然だよね……。
次回へ続く!