部屋に入ってきたのはクロウくんだった。


すごく落ち着いていて静かな感じ。
いや、むしろ冷静すぎて嫌な予感がする……。
 
 

クロウ

実は僕の目的を
果たそうと思いまして、
ここへ来たんですよ。

トーヤ

目的?

クロウ

はい、ガイネさんを
ご主人様のところへ
連れていくのです。

トーヤ

えっ?

クロウ

幸い、トーヤくんの薬のおかげで
ガイネさんの病気は
だいぶ落ち着いたようですし。
これなら多少は無理をしても
大丈夫そうです。

 
 
クロウくんは満面の笑みを浮かべていた。

でもその中に不気味さというか、
なんだか仄暗い気配が漂っている。
 
 

トーヤ

クロウくん、言っている意味が
分からないんだけど?

クロウ

あ、失礼しました。
説明をしないと
チンプンカンプンですよね?

クロウ

僕はご主人様から
ガイネを連れてくるように
命令されていたんです。
手紙はただのブラフですよ。

トーヤ

っ!?

 
 
クロウくんは口元を緩め、
ニタリと不気味に微笑んでいた。

そこに魔族特有の邪悪さが満ちあふれている。
 
 

ガイネ

テメェっ!

クロウ

ふっ……。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

ガイネ

がはっ!

 
 
クロウくんは電光石火でガイネさんのお腹に
拳を食らわせた。



なんてことをするんだろうっ!



ガイネさんは病人だし、
長期間の闘病で体のあちこちが
弱っているというのにっ!
 
 

トーヤ

ガイネさんっ!

トーヤ

クロウくん、
ガイネさんは病人なんだよっ?
なんでこんな酷いこ――

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

トーヤ

あぐっ!

セーラ

ご……は……。

 
 
動きが……見えなかった……。



そしてお腹に感じる激しい鈍痛。
僕とセーラさんは
ほぼ同時にその場に膝をついてしまった。

きっと僕たちもガイネさんと同じように
攻撃を食らって……。
 
 

クロウ

2人とも、静かにしてください。
みんな起きちゃうじゃないですか。
――と言っても、僕の魔法で
深い眠りについていますけどね。

クロウ

なぜかトーヤくんだけは
眠りの魔法が
効かなかったみたいです。
ま、キミのようなザコなら
問題になりませんけど。

トーヤ

クロ……ウ……くん……。

 
 
僕には状態異常無効化の能力がある。
そのことをクロウくんは知らない。


だけど、今となっては
そんなことはどうでもいい。

ダメージを受けた今の僕には
抵抗する力なんてほとんどないんだから……。
 
 

クロウ

ガイネの技術を使えば、
女王やその一派に対抗できる。
今の魔界の現状に
不満を持っている魔族は
たくさんいるんですよ。

クロウ

ご主人様はその中心の1人として
活動なさっている。

ガイネ

…………。

クロウ

おっと、少し喋りすぎました。
でも別に構わないかもしれません。
だってガイネ以外は
全員死んでもらいますので。

セーラ

う……ぐ……。

クロウ

眠っている相手を葬るなど
容易いことです。
ま、起きていても全滅させることは
可能ですがね。

 
 
クロウくんは余裕の表情で
膝をついている僕たちを見下ろしている。
 
 

クロウ

僕、元・四天王の使い魔なんですよ。
今は別の御方にお仕えしてますけどね。

トーヤ

ぐ……。

クロウ

唯一の計算外はサララでした。
腐っても僕と同格の魔族。
厄介なことには
違いありませんからね。

トーヤ

サララはクロウくんのこと、
知ってたの?

クロウ

いえ、知らないでしょう。
魔王城で僕が見かけ、
城の者たちに
教えてもらっただけですから。

セーラ

私たちに……近付いたのはぁ……
最初からガイネさんにぃ……
近付く目的だったんですねぇ……?

クロウ

当然ですよ。
あなたたちと一緒にいれば
きっとガイネのところへ
辿り着けると思ってました。

クロウ

ついでに教えて差し上げましょう。
陸走船でモンスター化した少女、
あれは僕の仕業です。

トーヤ

なんだってっ?

 
 
クロウくんはサラッと衝撃の事実を告げた。


サンドパークから
ノースエンドへ向かう途中の陸走船で
女の子がモンスターになっちゃった事件。

あの黒幕がクロウくんだったなんて!
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第102幕 明らかになる真実

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