部屋に入ってきたのはクロウくんだった。
すごく落ち着いていて静かな感じ。
いや、むしろ冷静すぎて嫌な予感がする……。
部屋に入ってきたのはクロウくんだった。
すごく落ち着いていて静かな感じ。
いや、むしろ冷静すぎて嫌な予感がする……。
実は僕の目的を
果たそうと思いまして、
ここへ来たんですよ。
目的?
はい、ガイネさんを
ご主人様のところへ
連れていくのです。
えっ?
幸い、トーヤくんの薬のおかげで
ガイネさんの病気は
だいぶ落ち着いたようですし。
これなら多少は無理をしても
大丈夫そうです。
クロウくんは満面の笑みを浮かべていた。
でもその中に不気味さというか、
なんだか仄暗い気配が漂っている。
クロウくん、言っている意味が
分からないんだけど?
あ、失礼しました。
説明をしないと
チンプンカンプンですよね?
僕はご主人様から
ガイネを連れてくるように
命令されていたんです。
手紙はただのブラフですよ。
っ!?
クロウくんは口元を緩め、
ニタリと不気味に微笑んでいた。
そこに魔族特有の邪悪さが満ちあふれている。
テメェっ!
ふっ……。
がはっ!
クロウくんは電光石火でガイネさんのお腹に
拳を食らわせた。
なんてことをするんだろうっ!
ガイネさんは病人だし、
長期間の闘病で体のあちこちが
弱っているというのにっ!
ガイネさんっ!
クロウくん、
ガイネさんは病人なんだよっ?
なんでこんな酷いこ――
あぐっ!
ご……は……。
動きが……見えなかった……。
そしてお腹に感じる激しい鈍痛。
僕とセーラさんは
ほぼ同時にその場に膝をついてしまった。
きっと僕たちもガイネさんと同じように
攻撃を食らって……。
2人とも、静かにしてください。
みんな起きちゃうじゃないですか。
――と言っても、僕の魔法で
深い眠りについていますけどね。
なぜかトーヤくんだけは
眠りの魔法が
効かなかったみたいです。
ま、キミのようなザコなら
問題になりませんけど。
クロ……ウ……くん……。
僕には状態異常無効化の能力がある。
そのことをクロウくんは知らない。
だけど、今となっては
そんなことはどうでもいい。
ダメージを受けた今の僕には
抵抗する力なんてほとんどないんだから……。
ガイネの技術を使えば、
女王やその一派に対抗できる。
今の魔界の現状に
不満を持っている魔族は
たくさんいるんですよ。
ご主人様はその中心の1人として
活動なさっている。
…………。
おっと、少し喋りすぎました。
でも別に構わないかもしれません。
だってガイネ以外は
全員死んでもらいますので。
う……ぐ……。
眠っている相手を葬るなど
容易いことです。
ま、起きていても全滅させることは
可能ですがね。
クロウくんは余裕の表情で
膝をついている僕たちを見下ろしている。
僕、元・四天王の使い魔なんですよ。
今は別の御方にお仕えしてますけどね。
ぐ……。
唯一の計算外はサララでした。
腐っても僕と同格の魔族。
厄介なことには
違いありませんからね。
サララはクロウくんのこと、
知ってたの?
いえ、知らないでしょう。
魔王城で僕が見かけ、
城の者たちに
教えてもらっただけですから。
私たちに……近付いたのはぁ……
最初からガイネさんにぃ……
近付く目的だったんですねぇ……?
当然ですよ。
あなたたちと一緒にいれば
きっとガイネのところへ
辿り着けると思ってました。
ついでに教えて差し上げましょう。
陸走船でモンスター化した少女、
あれは僕の仕業です。
なんだってっ?
クロウくんはサラッと衝撃の事実を告げた。
サンドパークから
ノースエンドへ向かう途中の陸走船で
女の子がモンスターになっちゃった事件。
あの黒幕がクロウくんだったなんて!
次回へ続く!
ご覧いただきありがとうございますっ! クロウくんの今後について、詳細は書けません!! ただ、デリンくんみたいなパターンだってあるじゃないですかぁ♪ そういう位置付けのキャラになる予定だったんですよぉ。でも暫定完結までには書けないので、対立したままになっちゃいますね……。