―――この時代が動く決戦に、俺が所属するディガン傭兵団は【聖ファラール国】に加担する事にした。
俺がこの傭兵団に入団したのは三年前。目を覚ますと、むさっ苦しいほどに髭を生やしたオッサンが、笑顔で目の前にいたのが俺の始まりだった。
聞けば酒場の外で爆睡していた俺が身ぐるみ剥がされそうになっていた所を、助けてくれたそうだ。
そう。
俺にはそれ以前の記憶が無い。
文字が書けないとか、喋れないとかは無いのだが、過去の記憶だけが無い。自分の正しい年齢も分からないが、今日までで過去を知らない事で不便を感じた事はなかった。だって、どうせ戦争してたんだ。大して変わらないさ。
今はディガン傭兵団や他の傭兵団達が一挙に介し酒や食事を取っていた。俺は少し離れた高台で、その様子を黙って見ている。