僕たちは調薬室の掃除や道具の手入れなど、
それぞれ分担した仕事を始めた。

そしてそれが一段落したころには
すっかり日が落ちていた。
 
 

サララ

あのー、
お食事の支度ができましたー。

トーヤ

あ、はい。

ライカ

トーヤさん、
作業もキリがいいところですし
食事に行きましょう。

トーヤ

そうですね。

 
 
まだやらなければならないことが
少し残っているけど、今日はここまでかな。

明日は朝から始めて、決着を付けよう。



僕は道具をザッと片付け、
ライカさんと一緒にダイニングへ向かう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ダイニングへ向かう途中、
ドアが開けっ放しになっている部屋の中に
ガイネさんの姿を見かけた。

よく見てみると、そこにはセーラさんもいて
何かの機械をいじっているみたい。
 
 

セーラ

…………。

ガイネ

…………。

トーヤ

セーラさん、ガイネさん。
食事の準備ができたみたいですよ。

 
 
僕が廊下から部屋の中に向かって声をかけた。

でもふたりとも真剣な眼差しで
機械に意識を集中させていて、
返事をしてくる気配がない。
 
 

ライカ

トーヤさん、
今はそっとしておきましょう。
作業に集中しているようですし。

トーヤ

そうですね。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕たちがダイニングに着くと、
すでにカレンやクロード、クロウくんは
席に座っていた。

テーブルの上にはサラダや焼いた川魚、
山菜のおひたしなどが並べられている。

バスケットに入っているのは黒パンかな?
 
 

 
 

トーヤ

うわぁ、豪華だねっ!

サララ

お客さんがたくさんなので、
いつもより気合いを入れて
作っちゃいました。

トーヤ

これ、サララが全部作ったの?

サララ

はい、料理は得意なので。
魔法と違って
失敗は滅多にしません。

クロウ

“滅多に”というのが
気になりますね。
つまり失敗している可能性も
あるわけですよね?

クロード

もし失敗だとしても
男子なら無理してでも
完食するのが礼儀ですよ。

サララ

失敗なんてしてませんよぉ。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
僕たちは思わず大笑いしてしまった。

こんなに楽しくて落ち着いた食事は
すごく久しぶりな気がする。
 
 

カレン

トーヤ、スープをよそってあげる。

トーヤ

あ、うん。ありがと。

 
 

 
 

トーヤ

それにしても
ガイネさんとセーラさんは
まだ来ないのかな?

サララ

あ、ガイネさんなんですけど、
作業に集中している時は
何を言ってもダメなんです。

サララ

おふたりにはあとで
私が食事をお出しするので
皆さんはお気になさらず
食べ始めちゃってください。

トーヤ

何をしているんだろ?

サララ

私にもよく分かりません。
でも命をかけて取り組んでいる
重要な研究だとか。

ライカ

重要な研究ですか?

サララ

薬草師をやめたのも
その研究をするためっぽいかも。

クロード

ガイネ様は薬草師をやめて
技巧師になったんでしたよね?
つまり機械関係の何かを
研究していると想像できます。

カレン

セーラさんと一緒なら
研究が進むかもね。
独自の切り口と一流の技術の
持ち主だから。

ライカ

そう考えると、
ここへ来ることは
運命だったのかもしれませんね。

トーヤ

運命かぁ……。

 
 
確かにそうかもしれない。

僕たちの旅だって、
運命的な何かに導かれているような気がする。


不思議な偶然とか出会いとか、
本当に運命だとしか思えないようなことが
何回も起きているもんね。




例えそれが真実でなかったとしても、
僕はそう信じたいと思った。
 
 

 
 
 

次回へ続く!
 

第99幕 運命に導かれて……

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