有栖川

これで赤坂もきっとわかるかな
あの子猪だからなぁ
本当は頭いいのに

粟飯原

これなら西村君もきっと……

さて、先頭を突っ走る有栖川と粟飯原さん。
この二人、実は裏切っているわけじゃない。
後列に来るであろう相方にヒントを出すために敢えて先走ったのだ。
余りにも抽象的な問題。ヒントがあれば。
そう思うであろう彼らに見せるために。

赤坂

引導渡してやるクソ野郎ッ!

西村

おう、オウ、ぉう、おゥ、OH!?

両手で股間を押さえて青ざめオットセイよろしく鳴いているドマゾと今まさにトドメをさそうとしている。

先にいけば必然的に答えが明かされる。
それをヒントに、彼女や彼が答えに至ればいいと。
勝つことは優先だ。
だがかと言って、友や恋人を見捨てるほど薄情でもない。
それぐらい、ついてこれると信じている。

有栖川

よし、通過!

粟飯原

私もこれで!

二人は正解をたたき出す。
余裕綽々で、三階に向かった。

有栖川

赤坂ー!
頑張ってねー!
お先にー!

粟飯原

健闘を祈るよ西村君!

先駆者は駆けていった。
残されし愚か者共はその背を見て余計必死になる。
無論、死にかけのドマゾと加害者達もだ。

飯島

フッ……流石です、町田さん

町田

言うほどでもないさ
単語と数字を使ったという表現の仕方が引っ掛けなのだからな
それに気付きさえすれば誰でも解ける

閃いたダブル眼鏡もまた余裕がある。
問題さえ解けてしまえば持ってくるのは簡単だ。
最悪、身に付けているもので事足りる。

飯島

行きましょうか

町田

あぁ

先駆者に混じり、地味に優秀な三年コンビも通過。
混乱する彼らに、先駆者の持ってきた解答が出された。

横山

十円玉……?

小泉

腕時計?

赤坂

なんだこれ?

明かされたのは有り触れた物だった。
十円玉、腕時計、指輪などなど。
よく分からない。なんでこんなもので通れたのだ?

西村

俺の息子がぁぁ~!

赤坂

うーさい黙ってろっ!

西村

!!

股間を押さえて悶える変態が、思考の邪魔をする。
黙らせるため、もう一度踵で踏んでやる。
西村は喧しい雄叫びを上げて、絶命した。

赤坂

……

もう一度、物品を見る。
十円玉、腕時計、指輪……。
共通するものを探す。
が、想像力というものが乏しい赤坂にはよく分からない。

一方。

小泉

むむっ……
分かったかもしれないのです!

後輩の小泉は何か分かったらしい。
横山も、何となくその顔で察した。
彼女は自分の財布から、百円玉を取り出しているのだ。

横山

金属……か?

そう。共通点は金属。
だがそれだけだ。
だが、ここに数字と英単語という問題文を追加する。
すると……。

横山

そうかっ!!

横山にも漸く分かった。
彼女達はきっとこれにすぐ気がついたんだ。
これなら確かに「使って」はいる。
っていうか、何持っていってもこれなら通過できるだろう。
万物全てに共通するものだ。

赤坂

!!

赤坂も気が付いた。
そういえばさっき、有栖川の奴が理科室で何かしていた。
で、その連想でこっちの場合は科学というヒントを持っていた。
故に気がつく。

横山

元素記号かっ!

赤坂

元素記号ね!

そう。
答えは、『元素記号』。

英単語はその物質の文字。
数字は番号。

そして問題の使っているもの。
物質を構成するそれを使っているものを持ってこい。
つまりは、何でもいい。
その成分が含まれているのならば。
この問題は曖昧な出題文に惑わされないで答えにたどり着けるかが重要だったのだ。

それさえ分かれば、簡単だ。
後は身近にあるものを持っていって……。

って。

横山

嘘っしょ!?

赤坂

マジかッ!!

回答を持っていくと、そこには。
『重複した元素の答えはNG』と書かれていた。
つまり、今は簡単な部類が封じられている。
この場合は、29のCu、銅などがダメということに。
他にも47のAg、銀もだめ。

横山

こっちも重複できないの!?
小泉、探しに行くよ!!

小泉

はいなのですっ!!

元素記号はいくつもあるんだから、全部異なるものを探してこいってことらしい。
出そうと思っていたものが弾かれた。
ならば探しに行くしかない。
もう時間がないってのに!!

赤坂

クソッ、何探せってんだよ!!

赤坂も慌てて探しに行く。
重複していないものと言われても。
何が何で出来ているかなど、わかったもんじゃない。
バカだから。
そんなこんなで。
赤坂と横山ペアは慌ててモノを探しに行く。
残り時間はあと10分を切っていた……。

変態?
ああ、あいつは死にました。
合掌。

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